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    すずもち

    ディスガイア4、6の話を書いて置くところ

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    すずもち

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    リッヒが閣下に泳ぎを教える話
    2023のDRPGの夏イベの話が元ネタ

    #D4

    魔夏のスイミングレッスン夏と言えば海でしょ!という海のない世界で育った身としては理解に苦しむ言葉を言った小娘に引っ張られてフェンリッヒ達は今年も人間界の海に遊びに来る羽目になった。
    全く俺も閣下もそんな遊びにうつつを抜かす暇は無いと突っぱねようとしたが先に人間界に行けばイワシを大量に釣ることができるかもしれんなと目を輝かせた閣下の前では反論に意味は無い。
    そういうわけでフェンリッヒは閣下とその他のおまけ達とともに海に来ていた。早速水着に着替えた小娘やらデスコやらが水の中に入っていったのを横目にフェンリッヒは普段と変わらずはしゃがず閣下の執事として閣下に着いていくことにしていた。
    その閣下はと言うと波打ち際を歩いて熱心に海中を眺めている。恐らくあの偏愛して止まないイワシの姿を探しているのだろう。
    しばらくはああやって探しているだろうと思い、フェンリッヒは少し閣下から離れると近場にビーチパラソルとシートを敷いて簡易的な休憩所を作ることにした。閣下はお強い方だがそれでも日光という吸血鬼の弱点に長時間晒されるのは好ましくない。それに閣下は日焼けしやすそうだしとシートを敷いていると視界の端の閣下に誰かが近づいてきたのが見えた。
    不審に思ってそちらに目を向けると近寄ってきたのはあの憎き泥棒天使で閣下と何か話している。どうせろくでもない話に違いないと話をする二人の元に行こうとするがその前に天使はすぐに離れていってしまう。
    何を言っていたんだとその天使の後ろ姿を睨み付けつつ、閣下の元に戻る。
    「閣下、今し方あの天使と何を」
    「……フェンリッヒよ」
    「は、何でしょうか」
    今の会話を問いただそうとするがヴァルバトーゼの重々しい口調に遮られる。もしや緊急を要するような会話だったのかと緊張感が走る。主の次の言葉を待とうと黙っているとヴァルバトーゼは悩みながらもしかしそれでいて意を決したように口を開く。
    「お前は……泳ぎは出来る方か?」
    「はい?」

    どうしてこうなったのだと浅瀬で一生懸命に泳ぎのフォームを練習する主を見つめ、フェンリッヒは嘆息した。あの天使に泳ぎに誘われたから泳げるようになりたい、だと?あの天使め、こちらを振り回すのも大概にして欲しいと心中で悪態を吐くが、主のささやかな頼み事を断るのもそれはそれで執事としてどうなのかと結局二人で海に入り泳ぎを教える羽目になった。
    「ふむ、フェンリッヒよクロールとやらの動きは段々掴めてきたぞ」
    「流石閣下、物覚えが早くていらっしゃいますね。では次はよりスムーズに水をかいて泳ぐ練習です」
    「そうか。しかしお前は泳ぐのが上手いとはな、知らなかったぞ」
    「まぁ魔界には海がありませんし、それに魔界の水は大抵毒かマグマですからね。披露するような場がなかったのですよ」
    「それもそうだな。で、速く泳ぐにはどうすれば良いのだ?」
    「一連の泳ぎの動きがなめらかにできるようになる必要がありますね。こういうのは練習ですから何度か泳いで慣れてみましょう」
    ヴァルバトーゼは再び海の中に潜ると数メートルをゆっくりと泳いでいった。地獄に居たときでは見られなかった主の泳ぐ姿をフェンリッヒは不思議な心地で眺める。ああして全身ずぶ濡れになって、抵抗の激しい水の中をゆったり泳ぐ姿は魔界に居たときの軽やかさとは対照的だ。
    適当なところまで行って泳いで帰って来た閣下がざぶりと水の中から立ち上がる。
    「もう少し泳ぐ長さを増やしても良いかもしれんな」
    「練習熱心で素晴らしいことでございますが、一度上がりませんか?もう昼頃ですよ」
    「む、もうそんな時間が経っていたか」
    水をかき分けて砂浜に上がった主の後を追って、フェンリッヒも海から砂浜に向かう。主の髪は水を重く吸ってぽたぽたと砂に痕を残している。
    「もう少し練習して、泳ぎをマスターしたらイワシの魚群とともに泳げる日が来るかもしれんな」
    うきうきした調子で言う閣下に反射的に心の中でそれより先にあの天使と泳ぐのでしょうと悪態染みた言葉がこぼれる。別に泳ぎを教えるのは良い、数少ない弱点の克服にもなる。だがあの天使のためというのがやはり頂けない、大体閣下はどうもあの天使に甘いところが……。
    「お前が泳ぐことができて助かったぞ。午後も頼む」
    こちらを振り返ってそう屈託無く言う主に今の考えていたことが吹き飛んでしまった。考えるより早くお任せ下さいと言ってしまう。
    すたすたと先に行く閣下の後ろ姿を眺めながら自分も大概だなとフェンリッヒは苦笑した。
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    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
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