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    kisaragi_hotaru

    ガンマトとポプ受けの文章があります。

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    POIPOI 24

    kisaragi_hotaru

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    ガンマトとハドポプが混在している世界線のお話です。マトポプは師弟愛です。
    ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際には十分にご注意くださいませ。
    捏造と妄想がかなり激しいです。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。更新は少しずつになってしまいます。あしからず。

    #ガンマト
    cyprinid
    #ハドポプ
    #腐向け
    Rot

    大魔道士のカミングアウト 3 元魔王軍。そう聞いた場合に多くの者が真っ先に思い浮かぶのは大魔王バーンを頂点とした10年前に勇者ダイが討滅した魔王軍だろう。しかし、マトリフが先程言った“元魔王軍”はそうではないことをポップは理解していた。

     「元魔王軍……それって……つまり……」

     その先に続く言葉を、その名を、声に出して発するには、この時のポップには些か勇気が必要だった。
     ポップの意を汲んだわけではないがマトリフがひとつ頷き、

     「ああ。ハドラーが魔王として君臨していた時の魔王軍のことだ」

     そう続けた。
     息を呑むポップ。緊張で震えそうになった手を思い切り握り締めた。ちゃぶ台の下で行われているそのような葛藤の様相など知る由もないマトリフとガンガディアは懐かしむように互いに顔を見合わせる。

     「敵対してたあの頃はそりゃあ何度も殺し合ったもんだ。ハドラーもコイツもしぶといったらねえよ」
     「当然だ。私はハドラー様の側近だったのだ。ハドラー様が諦めない限り、私もそれに従うのみ」
     「……うそつきめ」
     「……少なくとも、最初の頃はそうだった」
     「いい機会だ、言ってみろ。いつからオレのこと殺す気が無くなった?まさか本当に初対面でベタン食らわせた時からじゃねえよな」
     「……」

     黙秘権を貫くつもりか、ガンガディアは僅かに顔を顰めただけで答えようとはしない。マトリフはさらに問い質そうと口を開きかけるが、おもむろに立ち上がったガンガディアに詰め寄られ思わず口を閉ざす。マトリフの手から空になった器を取り上げたガンガディアはもう片方の手で薄い肩を鷲掴み押し倒した。

     「ベッドの上で可愛らしく強請ってくれたなら答えてやってもいいのだがね」
     「寝言は寝てから言いやがれ」
     「君は相変わらず口が悪い」
     「お前は気取りすぎなんだよ」

     しばらく二人の言葉の応酬が続いたが、不意にマトリフが呼吸を乱したことでガンガディアはそれまでの雰囲気を一変させた。ベッドに片膝を乗り上げさせたガンガディアの重みでベッドがギシリと軋んだ音を立てる。マトリフに覆い被さるようにして顔を近づけ、互いの吐息がかかるほどの至近距離で見つめ合い、コツリと額が触れ合う。

     「……熱が上がってきている。薬を飲んで休んだほうがいい」
     「これくらいどうってことねぇよ」
     「こんな時くらい素直になりたまえ。私が持ってきた薬草だけでは心許なかっただろうが君の自慢の弟子が調合したものだ、効果は期待できるだろう」
     「……おいポップ!苦味は抑えてあるんだろうな?」

     心配であるという思いを色濃くするガンガディアの眼差しから逃れるようにマトリフは顔ごと視線を逸らして弟子へと言葉と共に向けた。

     「……」
     「おい、ポップ、聞いてんのか!?」

     返事のないポップに焦れてマトリフは声を上げる。
     ハッ、と漸く我に返った様子でポップは顔を上げて反射的に声の主へと視線を向けた。思考の海に沈んでいたポップは目に飛び込んできたその光景を見遣り、瞬間、固まる。
     直後、ガシャンッ!!とちゃぶ台の上に置かれていた食器が激しく揺れて幾つか倒れる音が響き渡った。勢いよく立ち上がったポップの足がちゃぶ台にぶつかったのだ。大きく目を見開いて声も出ないほどに驚いているポップ。
     ベッドの上でガンガディアに押し倒されているマトリフ。そんな光景を目にして驚くなというほうが無理な話である。

     「〜〜っ、な、な、なにして…!?」

     いったいなにがどうなってそんなことになっているのか、考え事に没頭していたポップには経緯がさっぱり分からない。が、本能が告げている。これは深くツッコんではいけないやつだ。
     なんとか場の空気を変えようとポップは頭の中をフル回転させる。大魔王バーンと冥竜王ヴェルザーを戦慄させたその世界最高峰の頭脳をこれでもかと働かせる。そうして、

     「あっ!そういえば!実はずっと気になってたんだけどガンガディアってあんまデカくないんだな!デストロールって書物でしか見たことなくて魔界に行った時にも遭遇しなかったから実際にこの目で見るの初めてなんだけどもっとこうすっげえデカブツなんだと思ってたわ!!」

     盛大に地雷を踏み抜いた。

     「いやまあデカいのはデカいんだけど想像してたよりはそんなにって感じで初見じゃデストロールって分かんなかったしそもそも書物通りのとんでもねえデカブツだったら今頃そのベッドぶっ壊れてるもんなアッハッハッ……ハ……ハハッ……」

     さらにいえば全く話は逸れていなかった。ポップの笑い声が徐々に小さくなり、ついには途切れた。

     「……えっと……その……なんか……すんません……」
     「――“デカブツ”……と言ったかね?」
     「はいっすんませんでしたあっ!!!」

     ゴゴゴ、と地鳴りのような効果音が聞こえた気がしてポップは光の速さで謝罪した。もうベッドの方は見れない。こわい。いろんな意味で。帰りたい。でも帰るのも躊躇う。ポップは泣きたくなった。

     「アホか」

     マトリフの心底呆れ返った声が聞こえた。

     「顔を上げたまえ、大魔道士の弟子よ。私は別に怒ってはいないからね」
     「ほお〜~、随分と丸くなったもんだな。以前のお前なら“デカブツ”呼ばわりされたら即ブチギレたくせによ」

     いらない情報をマトリフが教えてくれてポップは短い悲鳴を上げた。
     ガンガディアは溜息をひとつ吐き出すと至って冷静に話し出した。

     「確かに、君の言う通りだ。以前の私は“デカブツ”と称されるに相違ない容貌をしていた。そんな自分自身が嫌で嫌で仕方がなかった。必死になって身体を絞ったものだ。それでもなお私は巨体だった。これ以上はもはや無駄な足掻きでしかないのかと思い始めていた。ひたすらに魔導を極めることに没頭していった。しかし、私は出会ったのだ。私がまだ魔王ハドラー様の側近として勇者一行と敵対していた頃、この大魔道士の男に」

     淡々と語るガンガディアは昔を思い出すように、そうしてなお目の前にいる大魔道士の男その人へと真っ直ぐに目を向けて、続けた。

     「憧れたよ。強烈に、鮮烈に、殺すべき敵だと分かっていながら、どうしようもなかった……憧れたんだ」

     切なさすらも感じさせるような声色に、ポップは瞬き、そっと顔を上げた。

     「ガンガ……」
     「そして、彼との最後の決戦の時、極大消滅呪文を食らった私の半身は消し飛んだ」
     「………………は?」

     ポップは間の抜けた声を出した。

     「よほど私の下半身に恨みでもあったのか。なあ、大魔道士よ」
     「ケッ、てめえの胸に聞いてみやがれってんだ」
     「ちょっ、ちょっ、ま、待って!待って!!はあっ!?!?」

     ぎょっ、と目を剥いて仰天しているポップをふたりは無視した。

     「あの時、上半身を消し飛ばしていれば確実に私を殺せていたものを」
     「実戦で使うのは初めてだったから手元が狂ったんだよ。何度も言わせんな」
     「何度でも聞きたくもなるさ。君からの質問、私からそのまま返そう。いつから私のことを殺す気が無くなった?」
     「……」

     口を閉ざすマトリフ。逃さないとばかりに全身で囲うようにガンガディアはベッドに完全に乗り上げた。カラン、と床に粥の器が落ちて転がった。割れてはいない。そんなことに気を取られる者は今この場にひとりもいなかった。

     曰く、大魔道士マトリフのメドローアで下半身を失ったガンガディアだったが一命を取り留め魔界で長い時間をかけて回復していたのだという。身体は完全に元通りというわけにはいかず、サイズは元の半分にまで縮んでしまった。しかし元々が異常なまでに巨大であったが故に半分になったからといっても人間からすれば十分に巨体の類である。小柄なマトリフと比べたならばそれは殊更に顕著であった。

     「過剰反応することはなくなったが、それでもやはり気にはするのでね。できれば私の前で“デカブツ”と言うのは控えてもらえるとありがたい」
     「あ、はい。すんませんっした」
     「君もだよマトリフ。わざと言って私を煽ることがあるだろう。悪癖だぞ」
     「へーへー」

     弟子とは打って変わって気のない返事をするだけの大魔道士に溜息の溢れるガンガディア。ひっくり返ったちゃぶ台を元に戻して静かに座り込んだ。
     何かに耐えきれなかったポップが雄叫びを上げながらひっくり返したちゃぶ台は少し傷んでしまっていた。上に乗っていた食器類は幸い中身はすでに空になっていたので床が汚れることはなかったが全て盆に乗せて横に寄せて置いてある。後で洗ってくると言って、ポップは説明を求めた。
     そしてガンガディアからの少しばかり長い説明を終えて、今に至る。

     「ったく、元はと言えばお前が変なこと言い出すからだろうが、バカ弟子。オレの話聞いてなかっただろ」
     「……聞いてませんでした」
     「お前が調合したこの薬、苦えのか?」
     「……ちょっと……苦い……かな」
     「口直しの水持ってこい」
     「はい……」

     ポップはとにかく疲れていた。言われるままにゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと部屋から出ていく。その時に盆に乗った食器も持っていくことは忘れない。

     「……」

     流し台に置いて水に浸らせる。無意識にポップの口から深く長い溜息が吐き出された。
     なんでこんなことに。なんでここに来たんだっけ。
     ああ、そっか、おれ、逃げてきたんだった。

     『――ポップ……好きだ』

     唐突に、思い出す。
     この洞窟へはルーラで来た。無意識だった。前にもこんなことがあった。バーンパレスへ乗り込む決戦の前日、アバンのしるしを光らせることができない絶望感と焦燥に打ちひしがれて、気付いたら師匠であるマトリフのいるこの場所へ来ていたのだ。
     あれから10年も経ったというのに、同じことをしてしまっている。ポップは嘲笑う。自己嫌悪だ。

     「……水……」

     あまり遅いとまた変に思われる。ポップは緩慢な動きでコップに水を汲むとそのまま手に持ってマトリフの寝室へと戻っていった。
     部屋の近くまで来た時、ふと声が聞こえた。今度は何を話しているのか、気にはなったが気にしたらまためちゃくちゃなことに巻き込まれそうでポップは辟易した。それでも戻らないわけにもいかず。

     「…………」

     戻らないわけにもいかず、戻ってきたわけだが、即座に後悔した。
     ガンガディアが、マトリフに、キスをしていた。

     「……ふぅっ、んん……っ」

     鼻から抜けるような甘ったるい声。それが自分の師が出している声だと、すぐには理解できずに呆然と立ち尽くしていたポップだが、その目にはしっかりと光景が映し出されている。
     ぴちゃり、と濡れた水音がした。

     「ぷはっ……はぁ……苦え……」
     「良薬は口に苦しと言うだろう」

     マトリフの口端から頬を伝って零れ落ちかけた唾液を舌で舐め取ったガンガディアは再び口付けた。唾液に混じり、うっすらと緑色に見えたのは薬草を調合したものだろう。薬を口移しで飲ませていたようだ。すぐに離れたガンガディアは自らの唇を舌舐めずりしてコクリと喉を鳴らす。
     次いでマトリフ。さらにもうひとつ、息を呑む音がした。
     刹那、バッと勢いよく顔を上げたマトリフ。ガンガディアが瞬間的に顔を引いて頭突きの危機は回避したが、マトリフとポップの視線はがっちりとかち合ってしまった。

     「……」
     「……」

     長い沈黙が続く。ガンガディアは僅かにズレた眼鏡を指先で押し上げて整えた。
     そんなガンガディアを見てポップはひくりと顔を引き攣らせた。

     (コイツ……わざとだ……っ)

     殊勝に謝ってきたかと思えば嫉妬心は相当強いらしい。やはりかわいくはない。デストロールのガンガディア。恋人の弟子とはいえ、牽制はしっかりするタイプであるようだ。

     「……」

     目を閉じるポップ。本日何度目かも知れない溜息を吐く。
    こんな場面を見せつけられてしまえば、否応なしに脳内でフラッシュバックを引き起こす。

     『――ポップ……好きだ』

     耳元で囁かれた言葉が、消えない。
     大きな身体に正面から覆われるように抱きしめられた。さらりと顔の横に流れた、長い銀色の髪。唇に触れた冷たいそれは、意外にも柔らかくて、優しいものだった。
     ――パリン。
     ガラスの割れる音がした。
     ポップの手から滑り落ちたグラスだ。床に小さな水溜りができる。
     ポップは自分の胸元を鷲掴むようにして握り込んだ。深緑の法衣の下で、淡い緑色の光が灯る。

     「虎穴に入らずんば虎子を得ず、ってか」

     自分と同じく竜の血で蘇生した半魔の男がよく口にするような諺を言ってポップは笑った。脳裏の端で件の半魔の男が物凄く嫌な顔をしていることはスルーしておく。

     「……ポップ?」

     さすがに戸惑った声で呼びかけるマトリフに、ポップは目を開けて、やはり笑って答えた。

     「師匠。ちょっと相談したいことがあるんだ」

     恋愛相談なんだけど。

     洞窟の外で、雨が降り出す、音がした。
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    Replies from the creator

    kisaragi_hotaru

    DONEガンマト前提で破邪の洞窟内でわちゃわちゃしてるポプとラーとヒムちゃんのお話です。ネタバレ捏造妄想満載なのでご容赦くださいm(_ _)m
     ズドォン、と相当な重量音を轟かせて巨大なモンスターが地に沈んだ。
     完全に動かなくなったモンスターの側でたった今決め手の一撃を食らわせた人型の金属生命体が銀色の拳を振り翳して声を上げた。
     「よっしゃあ!!」
     「ナイスだぜヒム!!」
     少し離れたところからポップが嬉々として声をかければヒムが振り返って鼻を指先で擦りながら「へへっ」と笑う。
     「おめえのサポートのおかげだぜ。ありがとよポップ」
     「確かに。あのままではオレもコイツもこのモンスターに手傷を負わされていたところだった」
     ヒムの側で魔槍を携えて軽く息を吐き出しながらそう言ったのはラーハルトだ。その目線は屍と化したモンスターを見下ろしている。
     ここは破邪の洞窟。その最下層近くまでポップたちは来ていた。大魔王との決戦からすでに20年の年月が経っていた。行方知れずになっていた小さな勇者が魔界から地上に帰還してからしばらくは慌ただしい日々を過ごしていたが、今は至って平穏な日常が繰り返される世界となっている。
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