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    鴨緑

    @gatoyosee

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    鴨緑

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    去年のうぇぶおんりで出したアオ主の読物
    「走馬灯」から次の日の告白の話

    AM11:43 ダアトでの大冒険から次の日の朝の事であった。
    「そうだ、今日はもう学校サボろう。」
     制服に袖を通し、登校の準備が出来てからの言葉だった。
    「少年、学校には行かないのか?」
    「ん、よくよく考えたら昨日しんどい思いしたし…今日一日サボってもバチは当たんないなって。それに…」
     そう言ってアオガミの方をジッと見る。白い装甲に黒と赤のラインをまじまじと眺め、
    「今、すっごいパフェって気分。」
     
     そして今現在、ファミレスのボックス席に横並びで座ってる二人の前にはいちごチョコパフェとクリームソーダが並んでいた。モーニングと呼ぶには少し遅めの、人気が少ない時間帯だった。
    「いっただっきまぁす!」
    「…いただきます。」
     古津の行動を真似るかの様にアオガミも続いて食事の挨拶をする。アオガミにとって神生で初めての食事だった。被造物…神造魔人である彼でも人間と同じ様に生活の営みはできる様に設計されていた。しかし、戦闘用に造られた彼には食事は不要なものであり、マガツヒだけでも活動する事ができた彼には、今の今まで食事の機会が無かったのだ。
     クリームソーダのアイスを一口、その後にソーダを一口、口に含み、
    「これは…アイスとソーダの甘味…炭酸による口内への刺激…」
     味の感想…と言うよりかは味の解説を淡々と述べる。
    「どぉ?美味し?」
    「美味しい…?」
     初めて口にする未知の感覚は果たして美味しい、美味しくないかはこの時のアオガミにはまだ分からなかった。
    「え…っと……じゃあ!好きか嫌いかで言ったら?」
    「それで言うなら……きっと好きなのだろうな」
    「よかった!」
     アオガミは一口、一口を大切にするかの様にクリームソーダを啜る。それを見届けた古津は次は自分の番と言わんばかりにパフェを口いっぱいに頬張った。
    「うっまぁ……あまぁ……」
     自分へのご褒美に愉悦を感じながらカツカツとスプーンを進ませる。
     クリームを掬い、
     口元に、
     口に含み、
     数回の咀嚼、の繰り返し。
     幸せを噛み締める、と言う事はこう言う事なのだ。と言わんばかりに幸せそうな顔でパフェを味わっていく。
     アオガミはその一連の動作をジッと見つめていた。古津は視線に勘付いたのかアオガミの方を向き、少し考える様に目線を外した後、スプーンにクリームとチョコのかかったイチゴを差し出す。
    「よかったらどーぞ。うまいぜ?」
     そう言いつつ、有無を言わさぬと言わんばかりにスプーンをアオガミの口元へ運ぶ。アオガミは素直にそれを口にした。
    「苺の酸味に…チョコとクリームの甘味…。これも私は好きだ。」
    「でっしょ?」
     古津はまるで自分の事のように喜ぶと上機嫌でパフェを食べ進める。アオガミは口に含んだパフェを丁寧に咀嚼し、飲み込んだ。
    「少年、君を見ていて思った事がある。いいだろうか?」
    「ふ?ふぁひ?」
     口いっぱいにパフェを詰め込んでいる所為でなんとも間抜けな返事が返ってきたが、気にせずアオガミは言葉を続けた。
    「君を見ていて…何故だか君から目が離せない。心配…とは違う別の何かだと思う。」
     真面目なアオガミの話にうんうんと相槌を打ちながらも、古津は相変わらずパフェを食べ進めている。
    「この感情はまだ理解できないが……嫌いか好きかで分けるならきっと、好きなのだろう。私は君を見ているのが好きみたいだ。」

     この瞬間、古津の時が止まった。
     好き。と言う、その言葉は、その言葉だけは、自分から言わなければ聞けないと思っていたからだ。アオガミに恋をしよう。と、決めていた時から、いつかは自分の方から言うはずだったその言葉をまさかアオガミの方から、形はどうであれ言われてしまったのだ。冷静に考えれば決して、アオガミはそう言う意味で言ったとは限らないのにも関わらず、不意打ちの様にかけられたその言葉に手に持っていたスプーンもクリームを乗せたまま止まっていた。
     ずるり、と傾いた手元からスプーンに乗せていたクリームが落ちる。既の所でアオガミの指がそれを受け止めた。
    「少年」
     と一言。そして、そっと、受け止めたクリームを古津の唇に寄せる。古津も呆然としたまま黙ってそれを受け止めた。
     アオガミの指が、唇に触れる。
     思考が段々戻ってきたと同時に古津は訳も分からず顔が熱くなるのを感じた。心臓もいつにもなく、うるさい程に脈打っていた。この時に古津は改めて感じたのだ。自分はアオガミに恋をすると決めた以前に、既にアオガミに惹かれていたと言うことを。嫌でも自覚してしまった。
    「オレ……それを恋だと思ってる。」
     止まった時が戻り、ようやく言葉が出た。ここで腹を括るしかない、一度成らず二度三度、幾度とも死線を超えて来た今、今言わなければきっと後悔すると己を無理矢理鼓舞しながら言葉を続ける。
    「出会ったばっかのアンタの事、いつの間にか好きになってたんだ。……いや、最初はあり得ないって思ったよ?だってアオガミは男だし、オレ普通に女の子好きだし、それ以前にアオガミはジンゾーマジンって人間でもないし、そう言う意味で好きになるって絶対ない!って思ったし、アレ…あれ!吊り橋効果!ってのも考えてみたけどさ!一時の気の迷いかも知んないって……でも…でも…やっぱアオガミのこと考えると無理でやっぱそう言う意味で好きだったんだって今よーやく理解した。本当…ほんっとうに……」
     思いが言葉として洪水の様に流れていく。感情が抑えきれない所為か早口に捲し立てるのをアオガミは黙って真剣に聞いていた。あぁ、そう言うところも好きだと、最早何をしたって惚れてしまう末期の様だ、と笑いそうになるも少し落ち着いて今までの喧騒がピタ…と止まる。
    「アオガミ…どうか…オレに恋を………」
     してくれませんか………?
     最後は掠れて消えそうなほど弱々しい言い方になってしまった。しかし、彼がアオガミに本当に伝えたかった事を口にする事ができたのだ。ここでやっと冷静になり、自分が今何を言ったのかを後悔しかけるのを我慢しながらアオガミの返事を俯きながら待っていた。不思議と自信はあった。が、それでも処刑を待つ罪人の様な気持ちだった。握った拳も手汗で湿っている。顔は以前は俯いたままだが段々と涙目になってきた。
    「少年。今の私には恋と言うものが何なのかを理解できない。しかし、君を守ると誓ってから私の中に今まで無かった何かを君から感じる様になった。」
     
    「もし…これが君の言う恋だと言うのなら…
     少年、君に頼みがある。私に恋を教えて貰えないだろうか?」
     
    「………………!」
     アオガミの言葉に嬉しさの余りに返す言葉が出てこなかった。代わりに激しく頷くと感涙に咽ぶ間も無く、古津は残りのパフェを一気にかき込んだ。上層のクリームを全て平らげ、苺とアイスを勢いよく口に運ぶ。冷たい物を一気に食べた所為で何度も頭痛がするのもお構いなしでスポンジで喉が詰まるのをアオガミがさっきまで飲んでいたソーダを勝手に拝借し、無理矢理流し込む。グラスの底まで来て掬いにくくなった残りのコーンフレークをなんとか食べようとグラスを顔に押し当てた結果、食べ終わった時には古津の顔は見事にクリームだらけだった。
     カラン、と空になったグラスにスプーンを放り投げる。
    「……これから二人で知っていこう!じゃ!とりあえずデート!今からデートしに行こう!」
    「デート?」
     恋人達が楽しく過ごすの!きっと楽しいよ!オレ達もう恋人同士だもん!ヒャァー!と興奮気味で語る古津の話を聞きながらアオガミは丁寧に指で古津の顔についたクリームを拭っていく。その度に触れるアオガミの温度のない指が温かくなるぐらい古津は嬉しさで顔が紅潮していた。
    「そうだ!東京タワー行ってみない?アオガミ、こっちの東京タワー見た事ないっしょ?中に入れんだよ!行こ!ね?!」
    「妙案だ」
     
     会計を済ませた後、ファミレスから出た二人は早速、目的の東京タワーを目指し最寄りの駅まで移動していた。
    「少年、不思議と私も高揚しているのを感じる。きっとこれが、楽しい。って事なのだろうな」
     その言葉にヘヘ、とはにかみ古津はアオガミの腕を組む。この時初めて、アオガミは小さく笑った。
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    「そうだ、今日はもう学校サボろう。」
     制服に袖を通し、登校の準備が出来てからの言葉だった。
    「少年、学校には行かないのか?」
    「ん、よくよく考えたら昨日しんどい思いしたし…今日一日サボってもバチは当たんないなって。それに…」
     そう言ってアオガミの方をジッと見る。白い装甲に黒と赤のラインをまじまじと眺め、
    「今、すっごいパフェって気分。」
     
     そして今現在、ファミレスのボックス席に横並びで座ってる二人の前にはいちごチョコパフェとクリームソーダが並んでいた。モーニングと呼ぶには少し遅めの、人気が少ない時間帯だった。
    「いっただっきまぁす!」
    「…いただきます。」
     古津の行動を真似るかの様にアオガミも続いて食事の挨拶をする。アオガミにとって神生で初めての食事だった。被造物…神造魔人である彼でも人間と同じ様に生活の営みはできる様に設計されていた。しかし、戦闘用に造られた彼には食事は不要なものであり、マガツヒだけでも活動する事ができた彼には、今の今まで食事の機会が無かったのだ。
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