ラヴィナス・アディクション依存は毒だと聞きます。
だけれども、幸福と感じるのならば。それは良いことだとは思いませんか。
思い出せない誰かよりも、うんと遥かに。
それらは心を慰めてくれるのです。
たとえ、一時ばかりの快楽であったとしても。
もう誰の薬指にも繋がっていない、愛などとは違って。
「……ご馳走様でした。」
ぱちん、と乾いた音が静かな空間に響いて、そのあとに囁くようなママの声が続く。
「ごちそうさまでした」
ガシャリ、と金属が擦れるような音は、オートミールの両手が鳴らしたものだ。
2人とも、一人前というにはいささか心許ないのではないかと感じてしまうほどの大きさしかないプレートに乗せられていた食事を、綺麗に完食させていた。
そうして2人の視線が、シルルに向けられる。急かすでもなく、迷惑がるでもなく、ただ終了を待つだけの他意などは一切もない視線。
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