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    カピ(あね)が掘った墓穴

    @kapitan_rgg

    Twitter(現X)での妄言妄想の永代供養塔です
    成仏!!

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    趙ハン出会い編。龍7の1年ちょっと前の雰囲気です。
    6の頃のコミジュルや新人儀式は妄想の産物です。CP表記はあるものの描写はありません。むしろギスギスしています。ギスギスのギスです。ギシギシしません。

    #趙ハン

    ちょはん ギスギス出会い編 一人多い。
     この場では初めて会う男が、眼を伏せてコミジュル総帥の後ろに、いつものすまし顔で控えている。これは聞いていないな、と大げさに首を傾げてみた。
    「あれぇ?椅子が一つ足りないんじゃないのぉ?俺の席はどこかなぁ」
     そう挨拶すると、いつものように部屋の奥の窓際に立ち深夜の中華街を眺めていた星野龍平が深いため息をついた。
    「まぁ、お前は良い顔しねぇとは思っていたが。大層なご挨拶じゃあねえか、趙よ」
    「さっすが星野会長!挨拶は大事だよねぇ。ちゃんとしないと」
     星野が眺めているのは線路の向こうの見えない壁。通称「肉の壁」だ。ここは壁の内側ではなく、俺たちが争う理由は無い。平安樓のこの部屋は特別だ場所である。
    「ところで星野会長ぉ、この椅子は今回も俺の席ってことで良いのかなぁ」
     こちらを向いた星野は眉間の皺を一層濃くして「いいから早く座れ」と、この部屋の上座についた。彼から見て左が横浜龍氓総帥の席。そして右側……自分の正面がコミジュル総帥の席だ。あの小さな町の中でもそれなりに付き合いの長いソンヒの顔は、相変わらずできの良いCG並みに整っている。いつもより青白い事を除けば。
     彼女がまとう空気は暗く冷たく、そして張りつめている。この部屋に「4人目」を連れ込む覚悟かどうかは推し量るつもりは無い。姿勢も崩さず凍りついて微動だにしない様子は、後ろに控える男と相まって、なかなか良い構図だ。双方が黒づくめでなければ多くの人が祝福の言葉を投げるだろう。
    「どうしたのソンヒ。コミジュルの女王ついに身を固めるってやつ?」
    「やめねぇか趙。茶化すんじゃあねぇ」
     肩を竦めて今は敵意が無いことを示して席に着いた。いつもなら半眼に斜に構えているソンヒが微動だにしない。挑発に嫌味の一つも返さない。
    「これで全員だ。良いな」
    「すみませ~ん星野会長、コミジュルさんが一人多いで~す」
     真正面にそのまま言葉をぶつけると、ソンヒがキュっと眼を瞑った。彼女の眉間に皴が寄り、口元がピンと真一文字になる。
     一瞬の静寂ののち、ソンヒがすっくと立ち上がった。
    「横浜星龍会会長星野龍平、横浜龍氓総帥趙天佑、今回の招集に応えていただき心より感謝する」
     そして、よく通る声ではっきりと宣誓し深く頭を垂れた。星野はというと、先程の眉間の皴が薄らいでいる。どうやら、この老獪な好々爺の心証は悪くないらしい。
    「まぁ、話の内容は何となく察しはついてんだがなぁ……とりあえず顔上げろやソンヒ。お前らしくねぇぞ」
     許しを得た彼女は、これまた美しく顔を上げる。ソンヒの頬は先程より少し緩んだように見えた。彼女は静かに席に直ると、その後ろに控える男に顎で指示をした。コミジュル総帥ソンヒは、あの「ハン•ジュンギの影武者」をようやく「正式に」ここで紹介する事を決めたのだ。
     そこの黒づくめに銀髪の派手な男の事を、俺も星野会長も把握していない訳がない。異人町の新参者、神室町から流れてきたジングォン派残党、頭目ハン・ジュンギの影武者。素性は既に耳に入っていた。神室町の3K作戦よりも前、東条会と亜細亜街を仕切る香港マフィア、そしてジングォン派の神室町再進出。日本と中国、そして韓国の裏社会同士の諍いの顛末は、肉の壁内にも届いていた。
     あの騒動の半年ほど前からコミジュル荒れていた。ジングォン派に合流を目論む者、コミジュルで静かに生きていたい者との間で小競り合いに近い事が頻発していたし、実際に離反者を出した。それを説得と暗殺で治め、まとめ直し、ジングォン派の旗色が悪いと聞けば「蜘蛛の糸」を買って出た。非常さと慈悲深さは同居できるのだと感心したものである。
     そんな頃にコミジュルのメンバーによって秘密裏に「回収」されたのが、件の影武者だった。本物は広島の尾道で死んだらしい。頭目の顔姿は写真でしか知らないが、目の男とよく似ている。
     利き手で挙手すると二人の視線が向いた。影武者はまだ目を伏せたまま微動だにしない。
    「影武者くんを御紹介いただく前にさ、ソンヒ。聞いてもいい?ひとつだけ」
    「なんだ」
    ソンヒは両腕を胸の前で組んだ。テーブルの上をわずかに左腿が掠る。
    「そいつはウチの馬淵よりも信頼できるってことでいいのかな?」
    「当然だ」
     当然か。横浜龍氓の参謀、馬淵昌は表社会との繋がりが多いため、この部屋への入室を許可されていない。
    「ふーん。高部よりも?」
    「……そうだな」
     横浜星龍会の若頭、高部守もウチの馬淵と同様だ。
     元々、コミジュルが受け持つ「仕事」は内輪で完結するものが殆どだ。贋札の製造に横浜星龍会と横浜龍氓のバランス調整、それとコミジュル内部の治安維持。現状、陽だまりの城や横浜貿易公司のように表立って大きなシノギを持つのは難しい。贋札づくりのシノギが無くなって最もダメージが大きいのはコミジュルである。その、ソンヒがここに連れてきたということは、事前審査は合格していると考えて良いだろう。
    「ならOK。聞きたいことはそんだけ。星野会長は今のうちに聞いておきたいことある?」
    「無ぇな。事前にある程度の話はソンヒから聞いていた。何だ趙、お前毎月顔出してんのに何も聞かされてなかったのか?」
     星野会長は上機嫌に笑った。
     意地の悪い爺さんだな、と俺は肩をすくめて口角を上げた。
    「では、改めて紹介する。こちらはハン・ジュンギ。コミジュル参謀、ハン・ジュンギだ」
     死人の名で呼ばれた男が顔を上げた。黒い両腕を腰のあたりでかしこまると口だけを動かす。
    「この度、コミジュル参謀を賜りました。ハン・ジュンギと申します」
     澱みなく名乗り、一礼する。
    「今後、贋札の材料と製品の窓口は私が担当します」
    「そうゆうことだ。私は組織の立て直し、ハン・ジュンギを実働部隊の指示約に置く」
     それなりの人数の造反者の粛清が続けば組織運営は立ち行かなくなる、と贋札の材料を渡しに行く度に何度も忠告した。上に立つ者として、見ない選択をすることも必要なのだと。町の治安が脅かされることなく組織の利になっているのなら追求する必要はない。たとえ、本国からの材料の数が少しずつ合わなくなっていたとしても。
     新しい参謀は異人三にとって都合が良すぎる。正直、ソンヒが上手くやれなくなると割を食うのは俺たちだ。だが、面白くはない。
    「さて、紹介も済んだな。お前はもういいのか趙?」
     星野会長は楽しそうだ。席を増やさずに人を増やすことに反対する要素は無い。だが、それはそれとして、ハン・ジュンギから我々への証立ては必要だ。このまま「ハイ話はおしまい。これから4人で肉の壁内の平和維持に尽力しましょう」とはできない。
    仕方がないので一応形だけ、目一杯考えたふりをして唸って見せる。ソンヒの視線が痛い。
    「う~ん、そうだね。そういえば星野会長、こうゆう新しい人がコッチ側に来る時って星龍会はどうしてんの?俺さ、あんまりヤクザのことは詳しくないんだよね」
     もちろん、そんな訳はないが。
    「そうだな。俺んところは親子の盃を交わすんだが、ここは星龍会じゃねぇし、そいつはソンヒの参謀だ。そうゆう横浜龍氓はどうなんだ」
     星野会長は上機嫌である。
    「俺んところ?龍氓には別にそんなの何もないなぁ。あえて言うなら……そういえばウチの馬淵は新人くんに龍氓のタトゥー入れさせてるよ。でも、ここは平安樓で慶錦飯店じゃないんだよねぇ」
     どうしよっかソンヒ、と続けて投げると、彼女は天井をみて顔を歪ませた。
    困ったことに、各組織の長同士の実利と義理と同胞の生活のために結んだ暗黙の協定を証明する必要はない。これまで、ここに誰かが辿り着いたことすら無い。言うまでもなく、コミジュルの暗殺部隊が始末しているからだ。そのコミジュル総帥が招いた参謀が、我々に対して完全に無害であることを証立てできる客観的な方法は少ない。
    「俺は別にコミジュル総帥が今ここで交代しても構わないんだけど」
     懐からゆっくりと銃を出し、ソンヒの額に向けた。
    「君はソンヒの席に座る度胸、あるの?今答えてよね。俺、短気だからさ」
     とりあえず一つずつ試してみるか、とセーフティを外した。ソンヒへの忠誠心だけでは証明は難しい。殺気を乗せてトリガーに指を添わせる。
    「お言葉ですが趙総帥。あなたから見て右に5度、上に20度。狙いがずれております」
     澱みなく述べたハン・ジュンギの顔は薄く笑みを浮かべていた。こちらを侮っているでもなく、恐怖の裏返しでもない、ごく自然な喜び。一瞬目が奪われ銃口がソンヒから逸れた。男はまだ笑っていた。
    「ははっ……合格、だねぇ。さすがだよソンヒ」
     一旦銃口を明後日の方向に向けて、トリガーに指がかかっていることに気が付いた。ゆっくり指を戻し、セーフティをかけて懐にしまった。
     何だあれは。
     ソンヒがハン・ジュンギに何か声をかけている。参謀は腰を曲げて耳を傾けているため、その表情は伺えない。良くないものをみてしまった後味の悪さに俺は顔を歪めていた。
    「まぁ、落ち着けや二人とも」
     星野龍平が視線を上座にまとめた。
    「お前らよりも新顔のほうがよっぽど肝が据わっているじゃねえか。そういえば、お前さん、殺しの腕も相当なものだとか」
    「恐縮です」
    「なら話は早ぇな」
     そう言って懐から包みを取り出す。星野会長自ら、机に置かれた薄鼠色の包みを開くと写真が現れた。そして全部で5枚の写真を広げると、ハン・ジュンギを顎で呼ぶ。俺は写真を見た。1枚は、我らが荻久保幹事長と確か専属の運転手だ。残りの4枚は運転手の隠し撮りだった。
     そのうちの一枚、運転手の顔がよく映っているものを星野は傍らに控えたコミジュル参謀の前に差し出した。
    「この男を24時間以内に始末しろ」
    「承りました」
    「良いのぉ?そんな簡単に請け負っちゃって」
     あまりにも返事が良いので、つい突っ込んでしまった。ハン・ジュンギが俺を見て言葉を続ける。
    「本日17時24分、この男は神内スタジアム近くのビジネスホテルにチェックインしております。そして17時56分に外出した後、現在まで宿泊先に戻っておりません」
    「今日はスタジアムで試合は無いね。秘書の同行もなし?」
    「はい。運転手単独です。継続調査の対象となっている人物と身体的特徴が一致します」
     継続調査ね、と言葉を飲む。俺が知らないということは、荻久保幹事長殿の直々のご依頼ということだ。
    「ハン・ジュンギ。お前さんは、こいつに直で会ったことはあるか?」
    「いいえ、星野会長。ありません。部下からの情報とモニター越しのみです」
    「そうか。じゃあ期限はこれより24時間以内。写真と首は高部に渡せ。」
     5枚の写真のうち、差し出された1枚だけをポケットに仕舞い暗殺者は深々と頭を下げた。所作も完璧である。何なら平安樓のスタッフよりも美しく完璧である。
    星野会長も人が悪い。ヤクザだから良いわけがないのだが。銃を出したことに羞恥心が湧いてきた。こんなスマートな方法を持っているなら早く言ってほしい。
    「ではソンヒ、行ってまいります」
    「分かった」
     右腕を胸にソンヒに一礼し、ハン・ジュンギが出口へ向かう。そしてその去り際俺たち三人を一瞥し、
    「それでは、お先に失礼させていただきます。ご依頼の品は必ず星野会長のお手元に。コミジュル参謀ハン・ジュンギがお約束いたします」
    と、深々とお辞儀し出て行った。その顔に表情は無かったが、黒い背中は心なしか浮かれているように見えた。
     カチャリ、と扉が閉まり部屋に静寂が戻る。星野会長は早々に退出し、気疲れで立ち上がれないでいる俺はソンヒに率直に尋ねた。
    「ねぇ、ソンヒ」
    「なんだ」
    「アレ、何?」
    「見ての通り、私の新しい右腕だ」
     ソンヒも脱力し、頭を抱えていた。
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    カピ(あね)が掘った墓穴

    DONEちょはん 初めての年越し(後編)
    仕事は多分さぼりました。
    施設の名前を調べるために7の攻略本を読んでました。つまり年越しイベントのスポンサーは一番HDなのでは。さすが横浜の第4勢力!
    試験が終わったら、前後編ちゃんと整理していい感じに仕上げたい。
    ちょはん 初めての年越し(後編) 神代駅の裏のコンビニで肉まんを2個とビールを二本。袋は別々にしてもらった。
     今年も恒例の年越しの花火と除夜の汽笛があるとかで、浜北公園に向かう人たちの流れに逆らって歩く。馬車街道まで出ると、ギャラクシーランドとREDパークへ向かう人波にあたる。それに紛れて流れの通りに進めば、いつもより明かりが少ないバッティングセンターが見えてきた。
     ギャラクシーランドでカウントダウンイベントがあるらしい。まだ観覧車はいつも通りで、代り映えしない。そうだ今は何時だっただろうと、画面を開くと数字が23時30分に変わった。
     サッカーコート横の自動販売機でたむろする若者たちを横目に、趙のもとへ足を速める。
     施設の明かりが落ちた、バッティングセンターの建物の裏。絶妙にギャラクシーランドもREDパークも見えない趙総帥のお気に入りスポットは静かで穴場だった。ここに監視カメラは無い。
    2190

    カピ(あね)が掘った墓穴

    MOURNING趙ハンです。クリスマスの話が間に合わなかったのでクリスマス1週間前の話のSSを上げます。当日何があったのかは補完願います。
    ちょはん 12月18日、深夜 入り口のシャッターを下ろして、外に出ると吐く息が白くなった。うみねこ座のレイトショーも終わって、通りは見慣れた輩が行き来している。彼らはすれ違う都度頭を下げてくるので、右手を半分あげてやりすごす。
     12月は忙しい。神室町に殴り込みに行ったのは昨年の今頃だっただろうか。昨年も忙しかったが、今年はかなり種類の違う忙しさである。
     異人町のために方々を走り回った2019年とは打って変わって、店と自宅の往復で一日を終える日が続いている。これまで『横浜流氓御用達のちょっと怪しげでスリルのある路地裏の店』から、『うみねこ座近くの知る人ぞ知る町中華』にイメージチェンジを行った効果が出てきたようで、一般のお客が増えたのだ。春日や足立のおかげで口コミで評判が広がって、流氓の若い奴らに「佑天飯店でもめごとを起こしたら……」と釘を刺したことも良かったようだ。もちろん今も流氓の若手に料理を振舞っているので、『ちょっと怪しげでスリルのある路地裏の店』という事実は変わらないのだが。
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