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    kikhimeqmoq

    はらす

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    20240412 桐智
    アラサーくらいの大人の桐智。付き合っていて、同棲している。ピアスのことを書きたかった。

    #桐智

    夜は覚悟しときや「桐島さん、これお願いしたいんですけど」
    差し出されたものを確認したが、おおよそ要から見せられるとは思ってもない代物だった。きみ、これ、どこで買うてきたん? 知っとったんか、存在を。
    「同居人が外出から帰ってくるなり、耳に穴を開けてくれってお願いしてくる人生があるとは思ってへんかったわ」
    「そうですか? 想定が甘くないですか?」
    「てか、これ、耳で合ってるやんな? もしかして、臍に穴を開けろってことやった?」
    「耳専用って書いてあります。ちゃんと見てください」
    「なんで俺が怒られることになってんの?最初に無茶振りされたん俺やのに、上手いこと話にのってることを褒めてくれや」
    「さすがきりしまさんですね」
    「棒読みやねん!」
    ハリセンはないので、手刀でこめかみを撫でる。なんやねん。訳がわからなさすぎる。こいつのやることにはほとんどの場合、意味があって、意図を捉えないまま言いなりになると、後で大変なことになる。
    「器具はちゃんとしたところで買ってきたやつですから、きちんと消毒したら簡単ですよ。自分のピアスも自分でやってたでしょう?」
    「自分と彼氏はちゃうやろ」
    「同じですって」
    ハハッと乾いた笑いを残して要は上着を脱いで鞄を置き、中から消毒のためのアルコールと脱脂綿を取り出した。手早く封を開け、道具を全て確かめる。
    「さ、さっさと済ませましょう」
    「ええけど」
    「嫌なんですか?」
    「嫌とは言いたない」
    どちらかというと、やりたい方だ。恋人の体に公式にマーキングできる機会なんてそうそうない。ちょっと前のめりになりそうな自分もいる。が、それが落とし穴だった時のことを考えると、勇み足は避けたかった。要が本心を簡単に言うとは思えない。知り合って十年を超えたが、初手から本気を口にしたことなんてない。彼氏に向かって裏読みするなんておかしいだろうと言う奴もいるだろうが、要の二手三手先まで準備しているところが好きなのだから仕方ない。
    黙る俺を眺め、不敵な表情を浮かべた要はクス、と小さく笑った。うっさいわ。きみの秘密主義が好きだと思ったばかりやのに、やっぱりちょっとムカつくな。さっさと全部言え。
    「早く理由を言えって思ってます?」
    「あー!つまらんつまらん。なんでそんな、分かってます感だすん?」
    「俺の態度がつまらないなら、理由なんて聞かずにさっさとバチっとやってください。時間の無駄です」
    「それも、つまらんな」
    「面倒くさいな」
    要はわざとらしくため息をついた。ほんまにこいつは小憎らしくて可愛いな。
    「面倒くさいんは要くんやん」
    「お願いを聞いてくれたら教えてもいいですよ」
    「かーっ!なんで俺がやってもらってる感じになっとんねん!まあ!お願いは!聞くけど!なに?早よ開けろってこと?」
    「いや」
    強気で俺を見上げていた要は、急に目を逸らした。なんでそんな急に弱気になんねん。そんなに言いにくいことあるか? 金を貸して欲しいとか、車買ってほしいとか、そういうことか?
    「ファーストピアスが終わったら、次は何が良いか分からないので、桐島さんのやつを分けてほしいんですけど……」
    ああ、なるほど。
    「もしかして、先月引退したから」
    俺とお揃いになろうと思った?
    肝心なところは言葉にせず、無言で要を見つめると、視線を受け止めた要が目を細め、薄く笑った。最小限の動きだったが、瞳は嬉しそうに輝いていた。当たりらしい。
    ほんまに素直じゃないな。かわいいわ。
    「ほな、この辺やな」
    俺と同じ左耳に脱脂綿を当て、消毒する。
    器具を耳に当てると、まさにこれから傷がつく肌がいつもに増して艶々として見えた。野球選手だったくせに、肌はいつも白くきめ細かかった。それを触って楽しめるのは自分だけだという優越感は今までももちろんあったし、今日はそれに加えて、これに跡をつけることができるのも自分だけだという高揚感があった。本当に、興奮する。初めて寝た時以来かもしれない。
    「エロいなっておもってます?」
    なんや、伝わっとんのかい。
    「今ここで押し倒しそうや」
    「一応、怪我人になるんで、直後の激しい運動は避けないといけないんですけど」
    「ほな、夜やな」
    「夜ですねえ」
    そうか、要もやる気なんやんか。嬉しくなって耳に齧りつきそうになったが、消毒薬の匂いで我に返った。あかん、もうやってしまわな。
    「いくで」
    「はい」
    特に抑揚のない平坦な声で要は答えた。緊張を隠しているんだろうか。いや、ここで考えても仕方ない。
    再度こいつの耳に集中し、指先を緊張させ、最後に器具に力を込めると、バチン!と破壊力のある音が響いた。部屋中を震わすデカい破裂音みたいなやつだ。
    でも俺は、その瞬間の要が「あ♡」と色っぽい吐息を漏らしたのも聞き逃さなかった。

    なんや。隠してたんは緊張ちゃうんか。そっちか!








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    kikhimeqmoq

    DONEチヒ隊 2025/01/19 チヒロと巻墨

    61話、カフェでランチを食べた後に京都へ向かうチヒロと巻墨の小話。63話で巻墨の名前が判明して嬉しくて書いた。チヒ隊かどうかは微妙な感じで特に何も起こらない。
    豪快に京都へ「車で行くんですか?電車の方が早くないですか」
    店を出てさっそく駅に向かおうとした千紘を巻墨は引き止め、車で移動すると告げた。
    「車の方が安全だろ。装備もしてあるしな」
    隊長は得意げに説明した。斜めに切り上がった口端が車への自信を表していた。可愛らしいな、と千紘は感じたが黙っていた。それより装備ってなんだ?
    「装備とら?」
    「武器や小道具が車に隠してあるんですよ」
    炭がすかさず説明した。
    「へえ」
    さすが忍びだ、と千紘は感心した。その評価が伝わったのか、隊長は満足げに頷いた。こくり。
    「じゃあ、車を出しますから、ちょっと場所を開けてください」
    炭の依頼に千紘は振り返った。駐車場はどこだろう。きょろきょろと周囲を見渡す千紘の肩を、杢は長い腕で掴んだ。最初は肩を強く掴まれたが、すぐに柔らかく抱きかかえられ、店の脇へそっと移動させられる。杢の腕も身体も熊のように大きく、肩を抱かれただけなのに、千紘は全身を包まれた気持ちになった。なんだか温かい。杢と千紘は、歳はさほど離れていないと聞いた。実際、杢は隊長や炭よりも若者らしい軽い発言が多い。しかし、なんとはなしに信頼したくなる安定感が杢にはあった。身体の大きさだけではない。ほどよい雑さと丁寧さのバランスが好ましあのだと思う。
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    DOODLE桐智。
    大学生で同棲設定。ふんわり設定。
    大阪弁はふんわり。単語が下品です。
    キスの仕方なんて知らない「要クン。一年経ったし、そろそろ白状してもらうで」
     圭と秋斗が二人で暮らすアパートのダイニングキッチン。そのダイニングテーブルで圭と向かい合い、秋斗はにこやかに笑いかけた。
     テーブルには酒を注いだグラスが二つある。グラスを満たしているのは以前知り合いから譲り受けて飲んだところ、圭の反応がよかった桃の果実酒だ。今日のためにわざわざ通販で取り寄せたその酒は、圭が白状しやすいようにとの秋斗なりの気遣いと、尋問するのは多少心が痛むのでその詫びを兼ねたもの。
     とろりとしたクリーム色の酒をグラスに注いだときの圭の目は、少しばかり喜色を帯びていたが、秋斗の言葉で一気に真顔に戻った。口が引き攣らないように努力している様子さえある。圭と大学野球部で共に過ごすようになってから早三年。二人きりのときはこうして表情が表に出るようになった。圭の思考は表情に出ていなくても概ね分かるが、出ている方が秋斗の好みだ。秋斗以外は圭のこんな感情を知らないという軽い優越感が理由の一つ。あともう一つは、本人が秋斗の前だけ表情筋の動きが違うことを理解していないのがオモロ……ではなく、可愛いからだ。
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