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    桐智 2025/04/15
    高三の智将と大一の桐秋で智将のお誕生日に付き合い始める桐智。

    #桐智

    誕生日も記念日もロマンチストも悪くない四月十五日の午前〇時。十八歳の誕生日。日付のうえで十八歳になったからといって、身長が突然一八〇センチになるわけでもない。当面高校生なので主人の好きなエロ動画を大っぴらに見れるわけでもない。特になんの変化もないが、主人が闇雲に増やした友達から、やたら沢山メッセージがくるもんだから、スマホの通知が止まらない。無視する……のは自分が楽しくないことに最近気がついてしまったが、時間が無駄にかかるのも嫌なので、せっせとコピペで返信している。
    「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。」
    山田からは「今日は智将の要くんだね!」と秒で返事があり、藤堂からは「今後ともよろしくお願いしまって、サラリーマンかよ」とツッコミがあった。千早からは「コピペですよね」と指摘があったが、そこに返事はしなかった。葉流火は返信が既読にならない。メッセージ送信後、ちゃんと寝たようだ。
    「誕生日おめでとう」
    「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。」
    永遠に繰り返されるやり取りに飽き始めてきた頃、少々毛色の異なるメッセージが届いた。
    「誕生日おめでとう。ついでに俺と付き合って」
    なんだこれ、と思ったものの、自動で動いていた自分の指は先程と同じ動作を繰り返した。つまり、コピペと送信だ。
    「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。」
    「えっ!今後も付き合ってくれるんや!ほな、月曜の夜空いてる?小手指の練習って夜は八時までやんな?」
    「どなた様ですか」
    「なんで今更その質問なん?さっきの『よろしくお願いします』はなんやったんや」
    「勢いで返事しちゃいましたけど、よく見たら迷惑メールだったかと思って」
    ヤクザに絡まれたら相手をしてはいけない、無視をするのが一番だと分かっているのに、なぜか返事をするのがやめられない。この人に構わず他のメッセージに返事をすればいいのに、無視して次に進もうとすると、放置したはずのメッセージが気になってソワソワとした。クラスメイトのメッセージにはコピペで送信ボタンを押せばいいだけなのに、その単純作業でさえブレる始末。仕方なく、桐島さんに返信を続けた。
    「迷惑メール扱いなら、もっと大量に送るんやけど」
    「それはちょっと」
    「ええ……つれないな……」
    「春になると、おかしな人が増えますよね」
    「俺のメッセージが変態ってこと?」
    「そんなこと言ってませんし、メッセージが変態って日本語としておかしくないですか?」
    「ほな、俺が変態ってこと?」
    「勘弁してください。そんなこと、他校の俺には分かりません」
    「付き合ったら分かるで」
    「遠慮します」
    嫌です、とはっきり回答しない自分に少々苛立ってきた。けれど、なぜか、絶対に拒絶できなかった。
    「したら、付き合ってくれたら、毎日メッセージ送るから。野球豆知識」
    「豆知識はいりませんけど、大学での練習メニューには興味があります」
    「お!じゃあ、毎日の練習内容送るわ」
    「助かります」
    それは、お付き合いではなく、普通に野球部の先輩後輩というのでは、という疑問が浮かんで消えた。
    まあとにかく、毎日、大学での練習内容が送られてくるのだ。しかも、あの桐島さんから。それはなかなか悪くない。
    悪くない?
    悪くない、と思った自分に驚いた。誕生日の深夜、普段連絡をとらない他校の先輩とのメッセージの応酬、非日常の空気にのまれているのかもしれない、と深呼吸をして考え直す。狐目で胡散くさく抜け目のない知的な野球をする歳上の男から毎日練習内容とその日の出来事が送られてくることを想像する。たぶん、関西弁で少し毒のある愉快な文章と共に送られてくるんだろう。
    悪くない。
    どう考えても、悪くない。
    落ち着いて己を見つめれば見つめるほど、内心なにかを期待している自分がいることに気づかざるを得ない。いや、これ以上考えたら駄目だろ。何が駄目かは分からないけど。
    「ほんで要くん、月曜日の夜はええんかな?」
    「分かりましたから、月曜の夜にどこに行けばいいんですか?」
    正体不明の期待感に目を逸らし、思考を停止していたせいか。
    桐島さんからの質問に考える間もなく返信していたが、別に自分が出向かなくても、連絡を待てばいいことに、送信ボタンを押した瞬間、気がついた。
    だから、なんで俺はそんなに前向きなんだ。


    そして十八歳で、俺は初めての彼氏を得た。狐目で胡散くさく抜け目のない知的な野球をする歳上の男だ。
    野球をやっているだけの男二人に「付き合う」もなにもないが、すったもんだの末にキスをして、悪くない、となったのだから、彼氏に間違いないんだろう。











    「これから誕生日がくると、付き合いだした時のことを思い出すことになるんですかね」
    「珍しくロマンチックなこと言うやんか」
    「いや、『これですぐ別れたら、誕生日が来るたびに、付き合ってすぐ別れたことを一緒に思い出すな』って、思ってるんですけど」
    「無駄は嫌いなくせに、無駄に心配性なんはなんでなん?」
    そう言って彼は俺の肩を抱き、こめかみに軽く唇を当てた。
    「『誕生日と一緒に記念日も来るな』って、思えばええやろう?」
    「桐島さんて、記念日とか大切にするタイプなんですね」
    「やかましい」

    「ロマンチストですか?」
    クスクスと小さく笑ってみせたが、桐島さんはニヤリとして切り返してきた。
    「ロマンチストはお互いさまやろ」
    チッ。桐島さんの決めつけを否定できない自分にムカつき、八つ当たりで彼のこめかみを小突くと、キスになって返ってきた。チュッ。
    ああ。悪くないな……ロマンチストも悪くない。



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    kikhimeqmoq

    DONEチヒ隊 2025/01/19 チヒロと巻墨

    61話、カフェでランチを食べた後に京都へ向かうチヒロと巻墨の小話。63話で巻墨の名前が判明して嬉しくて書いた。チヒ隊かどうかは微妙な感じで特に何も起こらない。
    豪快に京都へ「車で行くんですか?電車の方が早くないですか」
    店を出てさっそく駅に向かおうとした千紘を巻墨は引き止め、車で移動すると告げた。
    「車の方が安全だろ。装備もしてあるしな」
    隊長は得意げに説明した。斜めに切り上がった口端が車への自信を表していた。可愛らしいな、と千紘は感じたが黙っていた。それより装備ってなんだ?
    「装備とら?」
    「武器や小道具が車に隠してあるんですよ」
    炭がすかさず説明した。
    「へえ」
    さすが忍びだ、と千紘は感心した。その評価が伝わったのか、隊長は満足げに頷いた。こくり。
    「じゃあ、車を出しますから、ちょっと場所を開けてください」
    炭の依頼に千紘は振り返った。駐車場はどこだろう。きょろきょろと周囲を見渡す千紘の肩を、杢は長い腕で掴んだ。最初は肩を強く掴まれたが、すぐに柔らかく抱きかかえられ、店の脇へそっと移動させられる。杢の腕も身体も熊のように大きく、肩を抱かれただけなのに、千紘は全身を包まれた気持ちになった。なんだか温かい。杢と千紘は、歳はさほど離れていないと聞いた。実際、杢は隊長や炭よりも若者らしい軽い発言が多い。しかし、なんとはなしに信頼したくなる安定感が杢にはあった。身体の大きさだけではない。ほどよい雑さと丁寧さのバランスが好ましあのだと思う。
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    DOODLE桐智。
    大学生で同棲設定。ふんわり設定。
    大阪弁はふんわり。単語が下品です。
    キスの仕方なんて知らない「要クン。一年経ったし、そろそろ白状してもらうで」
     圭と秋斗が二人で暮らすアパートのダイニングキッチン。そのダイニングテーブルで圭と向かい合い、秋斗はにこやかに笑いかけた。
     テーブルには酒を注いだグラスが二つある。グラスを満たしているのは以前知り合いから譲り受けて飲んだところ、圭の反応がよかった桃の果実酒だ。今日のためにわざわざ通販で取り寄せたその酒は、圭が白状しやすいようにとの秋斗なりの気遣いと、尋問するのは多少心が痛むのでその詫びを兼ねたもの。
     とろりとしたクリーム色の酒をグラスに注いだときの圭の目は、少しばかり喜色を帯びていたが、秋斗の言葉で一気に真顔に戻った。口が引き攣らないように努力している様子さえある。圭と大学野球部で共に過ごすようになってから早三年。二人きりのときはこうして表情が表に出るようになった。圭の思考は表情に出ていなくても概ね分かるが、出ている方が秋斗の好みだ。秋斗以外は圭のこんな感情を知らないという軽い優越感が理由の一つ。あともう一つは、本人が秋斗の前だけ表情筋の動きが違うことを理解していないのがオモロ……ではなく、可愛いからだ。
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