呪い様様「オラ、言えって暁人」
目の前で、口を必死におさえてぷるぷると首を横に振る相棒兼恋人の頑固さに、オレは苛立ちを隠せず舌打ちをした。
怯えたように肩を震わす姿に泣かせたいわけじゃないと歯噛みするような気分がわき起こるが、こっちももはや意地だった。
事の起こりは単純だ。オレと別行動で祓い仕事に行った暁人が、最後にドジを踏んで呪いにかかったという。
とは言ってもそんなヤバいもんではなく、暁人は自らの足で顔なじみの上尾の宮司の元に解呪を頼みに行ったらしいと凛子から報告を受けた。それはけして問題のある行動ではない。だがわざわざオレではなく上尾のに頼ったことが少しだけ業腹ではあった。
もちろんオレが別口で仕事中だったからというのもわかってはいる。だがつい最近想いが通じ合った相手を、解呪とはいえ他の男に預けたくないというくだらねえ悋気がわくのは止められなかった。
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