ウサギさんの幸せな日々ショーウインドウを眺めていくヒトを見ているのは面白かった。
けれど、その瞬間はついに来た。ちいさなオンナノコの手に抱かれた後、そのコのお母さんに紹介された。
その日の内に眺める場所がショーウインドウではなくダレかのイエになった。
「紅茶をどうぞ。」
目の前に出されたのはニセモノの紅茶の入ったティーカップ。
「あなたはお話ができるの」
「そう、お母さんがうさぎだったから言葉がわからないのね。」
返事ができてもできなくても、きっとオンナノコは私を相手に一人で物語を進めていく。
ただじっと見ていればいいだけ。
オンナノコがいない時は窓から道行くヒトを見ていた。
オンナノコのアソビバは外にもあったかわいい柄のシートを敷いた上でいつもの通りオチャカイが開かれる。
でも、ある日外にいる時間ほんの少しの間オンナノコがいない間に事件は起きた。近くでずっと睨んでいたカラスが片方の目を抉り取ったのだ。
痛い、よりも捨てられるかもしれない悲しさのほうが強かった。
「コラァーーーッ」
その時、オンナノコが大声を上げながら走ってきた。今までに聞いたことのない大声にびっくりしていると、カラスも驚いたように空へと羽ばたいていく。
オンナノコは私をそっと手に取ると、今度はわんわん泣き出しイエへ連れて帰った。
「おかあーさーんカラスがっ!カラスがねっ」
そう言ってお母さんに私ごと抱きつくオンナノコにお母さんはゆっくり話を聞きあちこち私の目玉を探してくれた。
けれど、結局目玉は見つからず不格好に縫い合わされた顔にオンナノコは目を輝かせた。
「〇〇、冒険に行ってきたのねあの、悪いブラック・バードのクロウと闘ったって訊いたわ。もっと詳しく教えてちょうだい。紅茶を飲みながら。」
そんな風に、私はオンナノコの愛情をたくさん受け取りながら暮らしていたの。