Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 👏 💚 🎉 💯
    POIPOI 70

    summeralley

    ☆quiet follow

    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【荒野】

    荒野は原点!

    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl
    #腐女子向け

    【飯P】覚えているか? 荒野の夕空は、いつも極限まで煮詰まっている。網膜を灼く茜色が、色の少ない大地をひととき溶岩流のように染め上げる。
     砂と石、岩と風しかない、うら寂しく殺風景な荒野。けれどここは、僕にとって特別だった。
     「やっと来たか。十四時と言わなかったか?」
     大小二つ並んだ岩に腰掛けて、ピッコロさんが僕を睨みつける。夕陽を背負っているせいで、その姿の輪郭がくっきりと眩しくて、幻のようだった。
     「すみません、仕事のトラブルで……久し振りに来たくなったんです、ここ。組手するには遅くなっちゃいましたね。待ちぼうけさせて、本当にごめんなさい」
    「まぁいい。瞑想はどこでも同じだ……それよりこの岩、覚えているか? お前がいつも、座って泣いていた」
     僕が近付く前に、ピッコロさんが冗談めかして言った。懐かしい。そう、その岩だ。子供の頃、修業の成果が出ないことに苛立って、投げ出してしまいたくなると、いつもこの岩に座っていた。
     「……泣いてたっていうのは、思い違いじゃないですか?」
    「いや、毎回おれが見に来ると泣き顔で『できません』と」
    「それは言った、気もしますけど……」
     思い返すと恥ずかしくて、つい笑ってしまう。ピッコロさんも、口元だけで笑ってくれた。
     地平線を真っ赤に塗り替えた落陽が、二つの岩と、そこに腰掛けたピッコロさんの影を長く長く伸ばしている。
     「お父さんと三人で修業してた頃も、一度、抜け出しましたよね、僕。あの時もピッコロさん、迎えに来てくれた」
    「お前が逃げ出すなら、この荒野のこの岩だと思ったんだ」
    「覚えてますか? その時に僕『ピッコロさんのこと、好きです』って言ったの」
     荒野の風は、あの頃と変わらず力強かった。砂埃を巻き上げ、冷たい鳴き声を上げる。
     「今思えば、子供の苦し紛れの誤魔化しみたいですよね……ピッコロさんも、軽く流してたし」
     その時だけではない。これまで何度も、今なら言える、という時に思いを伝えたが、いつだって冗談にしかとられず、流されてきた。ところが、当たり前だ、と笑うかと思われたピッコロさんは、意外にも静かに首を振った。
     「……流していない」
    「え?」
    「受け止める準備が、できていなかっただけだ」
     顔を上げると、視線が交わる。からかうでも、茶化すでもない、涼やかな目だった。
     「……でも、尊敬とか、憧れとか、そういう『好き』じゃなかったんだけど」
    「わかっている……今は、どうなんだ?」
     不意を突かれて、つい言葉に詰まる。とはいえ、こんなチャンスに、このタイミングで、逃げるわけにはいかなかった。
     「好きに決まってます」
     言い切ると、ピッコロさんは立ち上がって僕の隣まで歩いてくる。そして、かつて僕が座っていた岩を振り返り、暫し口をつぐんだ。
     「前から思っていたが、言い方が分からなくてな」
     受容なのか、拒絶なのか。何を言われるのか、緊張のあまり喉がからからに渇く。手のひらが汗ばむのに、指先は冷えていく。
     「……口説き方が雑だな、お前は。いつも、勢いばかりだ」
     数秒間、言葉の意味が理解できなかった。そのくらい穏やかで、普段通りの口振りだった。
     「ちょっと……待って、ちゃんといつも、毎回、伝わってたってこと?」
    「また勢いで言っているな、と思っていた」
     ピッコロさんは今度こそ皮肉に笑って、向き合う僕の手を取った。しげしげと眺め、大きくなったな、と呟く。
     「……僕が昨日『荒野の二つ並んだ岩』って誘った時も、僕が泣いてた場所、って覚えてたんですか?」
    「いいや。お前にはじめて雑に口説かれた場所、と覚えていた」
     日が沈み、天頂から降りてくる紺が、夕焼けの橙を塗りつぶしていく。ピッコロさんの手の温度は、あの頃とは少し違う気がした。それはきっと、僕が大人になって、抱えている想いも大きく変わったからだろう。
     「あの、それで、返事は?」
     ピッコロさんは顔を上げて、僕をじっと見た。握っていた手を、なんの未練もないようにぱっと離す。
     「おれがたったいま言ったことを、覚えているか? 雑な口説き方で、いい返事がもらえると思うなよ」
    「じゃあ……雑じゃなければ、いい返事がもらえるんですか?」
     思わず口を尖らせた僕をちらと見遣り、ピッコロさんの指先が僕の頬に触れた。やさしく撫でるような動きに、僕は咄嗟に固まる。ピッコロさんの瞳が、薄暮の中に甘やかに撓み、微笑の形を作る。
     「やってみるんだな」
     今日は帰る、と振り返って、ピッコロさんはたちまち去ってしまう。
     僕は触れられた頬の熱さと、言葉にもたらされた混乱で、並んだ岩にふらふらと座り込んだ。今は泣く気にも、「雑じゃない口説き方」を考える気にも、なる余裕がなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💞☺🙏💜💚💘💞💞💞💞💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
    3016

    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
    3184

    related works

    recommended works

    anna_usagisan

    DONE誘拐事件がなく勉強漬けの日々で医者となったあすくのお話。
    受けに対してちょっと夢見がちな印象を持つ攻めと、運命の再会シチュが好きで、あまりにも見たくて衝動で書きました。
    文章変なところあるかと思いますが、ご容赦ください。
    子あすくは大体小学5、6年生くらいのイメージです!
    完全ifのお話なので宿のお話も終焉陸のお話もないです。
    ifあす日 緑青あすくは幼い頃、妖精さんに恋をした。
     たった二日間だけ遊んでくれた、同い年くらいの男の子。
     太陽のような笑顔、ちょっと音量がデカいけど弾けるような明るい声、たくさんの人に好かれそうな優しい性格。
     出会ったのは、あすくが公園で一人で遊んでいた時だった。
     勉強ばかりで友達がいなかったから、まさか声を掛けられるとは思わなくて、その子が誘ってくれた時はすごく驚いた。
     でも流れるように一緒に遊んでいると時間を忘れてしまうほど楽しくて、あすくはすぐにその子のことが気に入ってしまった。
     帰る時はまたな!と言ってくれたから、次も遊んで、いつか友達になってくれるのではないか、あすくはそう期待していた。

     なのに、男の子はあすくと二日遊んだだけで忽然と姿を消してしまった。
    8370