そいつは彼を『霜色』だと信じたくない 全国高校野球選手権神奈川県大会。
開会式直後は相手チームや天才球児・轟大愚の話で持ちきりだったが、一回戦の後は、別の人物の噂が流れた。
「昨日の試合でハマソウの選手がプロみたいな豪速球投げて観客盛り上がったんだってさ」
「プロ並み? そんなヤツ公立にいたら怖えーよ」
横浜霜葩に所属するそいつは、あざみ野との試合でプロ並みの豪速球を見せて観客を騒がせたという。俺たちは同じ時間帯に試合があり、確認のしようがなかったため、どの様な人物なのか知る由もなかった。
一回戦から数日経ち、横浜霜葩との試合。予想以上に強かった。
小柄な正投手は多様な投球で、かなりの強肩の捕手と共にこちらを翻弄した。豪速球で騒がせた投手というのはこいつのことだと思ったが、試合が終盤に差し掛かって来た時、本当の噂の人物が出てきた。
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