君の上で踊る 粘る水音がアパートの一室に響いている。
敦と太宰は二人で家に帰ってきた後、もつれるようにして布団に転がった。今は、太宰が覆いかぶさるような形でくちづけをかわしている。
「はっ……太宰さんっ」
太宰の手慣れた様子に圧され気味の敦は、思わず制止をかける。太宰の肩を軽く押して、唇が離れた隙にじっと太宰の目を覗き込んだら、その鳶色の瞳には熱に浮かされた自分の顔が映り込んでいた。思わず、顔を逸らしてしまう。
それを見た太宰は、体を起こして敦の腰のあたりに跨る。そうして敦が驚く間もなく、ループタイに手をかけると、挑発的な笑みを浮かべた。
「ストリップをご所望かな?」
ごくり、と敦の喉が鳴る音すら聞こえそうな距離。太宰は満足げに微笑むと、するりとループタイを外して放った。いつもの砂色のコートはすでに脱いでいる。次はベスト。ボタンをひとつひとつ外していく。
その間も太宰の瞳はずっと敦を捉えている。今にも食らいついてきそうなほど物欲しげなのに、じっと堪えている様がいじらしくて、太宰はすっかり気を良くしてしまった。敦の額にくちづけを落とす。ベストを脱いで放ってしまうと、次はシャツのボタンに手をかけた。
上からひとつずつ、ボタンを外していくが、露わになるのは包帯の巻かれた肌。
「君がいつも跡を残すから、この包帯、外すに外せなくなっちゃったね」
太宰はシャツのボタンを外し終わると肩から落とす。わざとそのまま脱がず、敦の腹を服越しに撫でた。
「ねえ。私が欲しい?」
つ、と太宰の指先が敦の腹から股間までをなぞる。そこで初めて気づいて、敦は顔を真っ赤にする。当然のごとく、そこはすでに痛いほどに張りつめていたのだから。
「欲しいのなら、君の好きなようにしてみたまえよ」
言うが早いか、敦は身を起こして太宰の体を押し倒していた。さっきまでとは逆転した体勢。
飢えた獣のような荒い息遣い。夜明け色した瞳が欲情に染まっている。ぐり、と押し付けられる敦の屹立した熱量。それらに太宰は腰のあたりからぞくぞくするほどの快楽が上ってくるのを覚えて、めまいがするほどだった。