もし久々知の同室が尾浜じゃなかったらもし久々知の同室が尾浜じゃなかったら
ずっと嫌悪感を抱いていた。……訂正、嫌悪感ではないのかもしれない。少なくとも、良い感情ではないことは確かだ。
『お前が俺の同室? よろしくな!』
一年生の始めの頃、それこそ入学当初は気さくに話しかけてくれる良い奴だと思っていた。人に馴染むのが下手な俺をクラスの輪に入れてくれたり、授業の復習を手伝ってくれたり、感謝することも多かった。
違和感を抱き始めたのは、初めてのテストが返却された頃からだったと思う。
「今回のテストで、い組で一番点数が高かったのは久々知だ。皆、久々知を見習うように」
驚きに包まれる教室、疎らに聞こえてくる拍手。遠くから聞こえる「秀才だ」「い組の秀才だ」とささやかな尊敬の色を帯びた声。俺の手の中の答案用紙に書かれた百点の文字は堂々としていて、見ていて爽快な気分だった。努力が実るのは気持ちがいい。
6353