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    akariya0309

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    akariya0309

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    さめふる新刊「いふ」サンプルです。
    法律婚できる世界とそうでない世界でのさめししはどんな感じなんですかね、というお話。二本のうち、ちょっと暗めかも……という、法律婚できないルートを全部公開します。
    「もしもの話はしないから」
    同性での結婚ができない世界線のさめしし。
    臆病なキツネと絶対に別れないが?の曲がらない医者。一五三話前に出力しました。

    さめふる新刊「いふ」サンプルもしもの話はしないから

     カラス銀行から賭場がなくなった後も俺と村雨の関係は続いていて、もう二年以上にはなる。本当は記念日があるが、それは俺と村雨との秘密だ。会う機会が少し減った友人たちには知られているが、それはまあ、置いておくことにする。
     今日はその記念日、というわけでもなんでもないただの日。村雨が勤務先の病院を退勤して俺の家に寄り、泊まるだけの日。晩飯に出したテンダーロインをたいらげた村雨が皿洗いをしている俺を見ながら言った。
    「結婚してほしい」
    泡が流れて、白い皿はすっかり綺麗になった。肉眼では見えないような細かい傷はあるだろうから新品とはいかなくとも、それに近い見た目くらいには。
    「また急だな」
     指輪や花束の一つもない。なんなら婚姻届だってない。最後のは出せないから持っていても意味がない、というのが正しいのだが。
    「急か? 交際を始めてから二年以上経過する平均年齢三十歳程度のカップルとしてはそこまで急な話でもないはずだが」
    「俺が言ってんのはタイミングの話だ。人が家事してる時に言うってのは、あんまりないケースだと思うぜ」
    「……そうなのか。すまない、つい口から出た言葉だったが、押し切ろうという気持ちが働いた」
    「押し切るだあ?」
     というか、つい口から出たってなんだ。こいつもしかして無意識だったのか? それはちょっとかわいいかもしんねえな、先生。
    「なんだよ、そんなに俺と結婚してーって思ったのか?」
     蛇口をとめて手を拭き、足はそのままで村雨と向かい合う。目線がぶつかると食い気味に返答がきた。
    「思った。私は元々、交際を始める前からあなたを好ましく思っていたし、交際を始めてからはより愛おしくなった。そして先程、その愛おしさが限界まで膨れ上がったようだ。もうあなたを繋ぎ止めるには結婚しかないという思考に至り、口から出た」
    「はーん、お熱いな」
    「……あなた、先程からなぜ茶化すんだ?」
     真摯に言葉を紡いでいた村雨は、ついに苛立ちを露わにした。勢いで言ってしまったとはいえ求婚の言葉だ、それをのらりくらりとかわされて真っ直ぐに受け取られないことに腹を立てている。
    「茶化してるつもりは……少しはあったけど。それは悪い。けど村雨、知ってるか?」
    「何をだ」
    「俺達じゃできねーだろ」
     日本では同性同士の婚姻は不可能である。憲法が定めているのは両性、つまり男性と女性の二つの性での婚姻であり、それ以外は想定されていないしこれからも想定しない。それが現状だ。
     何年も裁判をしているが、地方裁判所が違憲だと判断しても最高裁ではまだ結論が出ていないし、内閣では回りくどく拒否されている。同性婚が認められている国で難民認定されたカップルまでいる始末だ。
     それは大袈裟だろうか。価値観は風土に由来するものでもあるため、大袈裟だと思う人間のことも否めない。しかしだ、宗教が関わるわけでもないのに同性カップルというだけで生活が困難であると見られている事実はかなり重い。目を背けてもぴたりと背中に貼り付いている。
    「あ、海外に行くのはナシな。お前みたいに腕があればあればどんなとこでもそこそこやっていけるってわけでもないんで」
     さすがに外貨をメインにするには不安がある。将来的には考えなくもないしなんなら一年ももらえれば支度は整えられる自信があるが、すぐには回答できない。
     海外で結婚するにしろ、カップルの片割れがその国のルーツを持っていればまだしも、日本人同士となると待っているのは煩雑な手続きだ。仮に取得した就労ビザ等が切れるかどうかに焦る日々、法制化されているとこにだって存在するヘイトクライム。言語はわかってもニュアンスが伝わらないもどかしさもあるだろう。シンプルに伝わるのは暴力だけかもしれない。原始的にも程があるのでやりはしないが。
     水も合わないのに制度だけ求めて行ったって、疲弊するたけだ。その間に別れることになったら俺は砕けてしまいそうで、身勝手なのは承知の上で、つまるところ終焉が近づくのが嫌なのだった。
     村雨は自分が望むメシが食えないだけでかなりのストレスを感じそうだし、だったらパートナーシップでも使ってこの国にいるほうがマシだ。自治体ごとに裁量が異なるため場合によっては引っ越す必要もあるが、国内の引っ越しなんて海外移住に比べれば手間にもならない。
     だから、村雨。
    「だからさ村雨、結婚なんて軽々しく口にすんなよ」
     愛に飢えて疲れたくない。やっと掴んだものを、もう現れはしない流れ星みたいな存在を手放したくない。
    「いや、将来的には結婚するぞ獅子神」
    「あ? 寝てたのかよテメェはよ」
    「否定形から入ったのだから聞いていたことくらいわかるだろうマヌケ、あなたこそ枕を濡らしながら眠るのはやめろ」
    「マジレスと比喩を混ぜんな、ややこしいな!」
    「うるさい。言っておくが医療現場も国内と国外では勝手が違う。薬ひとつとっても認可の基準が異なる。あなたのことだからわかっているのに突き放すためにわざと言ったのだろうが、私には効かない。私はあなたと別れないし別れたくないので結婚で縛りたいとまで言い出したヤバい人間だぞ。あなたと交際するまでバキバキの童貞でギャンブラー時代は所属班の女性行員からもキモいと言われていた男を舐めるなよ」
     ほぼ一息で言い切った村雨は少し息を乱していた。どうにも力が入りすぎている。ぽろっと口から出てしまった言葉に対して、俺に蹴られまいと必死だ。
    その逆か。村雨の言う通り、膨れ上がった末にこぼれた言葉だから、蹴られまい、なかったことにされまいと必死なのか。あの村雨礼二が。
    「……ヤバい自覚はあったのかよ……」
     思わず本音が漏れ出た。初対面時、目と目が合った瞬間の居心地の悪さを思い出す。真布津が言うように、本当に俺よりも数段レベルが上で、空井戸そのもののような気味の悪さ。だが今となっては都度反芻ができるくらい、俺もヤバい側にいる。
     それはそれとして、そろそろ喉が渇いただろう。それは俺も同じなので、二人分の水を用意し、もしかすると必要になるかもしれないとピッチャーも出す。氷はあまり入れない。
     村雨にコップを差し出すと、小さくお礼を言われた。俺は向かいに腰をかけ、水を二口だけ飲んだ。
     恋人と離れたくないので結婚する、というのはまあまあ危ない思考だ。双方同意の元であるならともかく、今の俺と村雨のように温度差がある場合はまずい。契約によって個人を縛り付けるということなのだから。
     非合法な金で人権を買っていた俺達が今更どうこう言えたものでもないのだが、現在はクリーンであるからしてと村雨のようなくどくどした言い訳が出てしまう。夫婦は似てくるという都市伝説はあるが、あれは付き合って五年に満たないカップルにも適用されるのだろうか。
    「危ない側だという自覚はある。人の感情を計算に入れないシステマチックな私は既に過去のものであるし、銀行が潰れ賭場がなくなったことで、見たくないものも見るようになったからな」
    「……歳相応だな」
     それよりも、金を億単位で動かせなくなったことで見ざるをえなくなった、という方が正しいかもしれない。違法手術をしていたあの家や土地を維持するのには若手医師の給料ではまるで足りない。賭場にいたころの良くない金を切り崩しながら、今までは余裕を持ってやっていた手続きに苛ついている可能性もある。
     実はかつての雑用係たちに経理関係の手伝いをさせているため、そんな話はすぐ耳に入るのだ。二人は就職しているが、就職先を経由する形で経理だのなんだのをしてもらっている。
     もう一緒に住めばよくないですか? と、疲れた顔をした二人から言われたのは一年目の年度末だった。
     一緒に住んで、村雨がストレスを溜めることがなければそうしたい。だが俺は自宅に手術台を置きたくないし、今までは恐らく銀行経由で処分させていたであろう注射器などの廃棄物に対して頭を悩ませたくもない。村雨個人に借金がある人間についても、銀行がつぶれた際にしぶしぶ精算――つまり大方を手放す――したようだが、未だに「どこからか」腹を開かれるバイトを望む奴がいるようで、ストレスのパラメーターによっては受け入れているらしい。
     現代日本においてジャック・ザ・リッパーとして挙げられるなら間違いなくコイツだな、とずっと前から思っている。違法手術は、一応合意のもとで行われている。故にバレなきゃいい話だが、他行の賭場に移ることもしなかった俺達は後ろ暗くも心強いバックを持たない。時雨と山吹のコンビが健在であったなら、該当する課にタレコミされていただろう。刑事課だかなんだかはよく知らないが。
    「あなたこそ、ヤバい男を恋人にした時に覚悟しなかったのか?」
    「覚悟しなかったわけではねえけど、ベストを尽くして囲い込むタイプだとも思ってなかったんだよ……」
     村雨は、基本的に他人に興味がない。だいたいマヌケか、マシなマヌケ、度し難い人外の三つに区分しており、兄嫁や姪甥のことを他人と言うくらいデリカシーもない。
     同じ親から生まれた兄貴の子供なのだから、血縁的には他人ではない。だが、意識としては他人らしい。生まれた時や七五三なんかのイベント時にはなんだかんだ祝い金を包むなどしているのでちゃんと親戚付き合いをしているのだと思っていたが、「そうするもの」という価値観に従ってやっているらしかった。とはいえ本当に興味がなければ七五三まで祝いはしないような気がする。やったこともなければ祝われたこともないので世間一般の基準はわからないが、フォトスタジオ定番のプランにあることを考えればそれが「普通」なのだとわかる。村雨も義理でやっているとは言うが、病気で搬送されたとなれば小言を言うくらいには心配している兄の子供だからできているのだと思う。あくまで俺は、の話だ。
     実際、村雨の思考回路は未だよくわからない点が多い。いつかのクイズ大会ではバレンタイン時期に学校で何を見てきたんだってくらいの珍回答をぶちかましたし。そういえばその珍回答は、クッキーはチョコをくれた相手に、薔薇百本はその母親にという話だった。外堀を埋める思考パターンは変わっていないのか。
     村雨が愛を育みたい相手は、今現在は俺に当てはまる。つまりはベストを尽くすに値する相手だと思われている。親の居場所がわかれば囲い込みに行くのだろうか。俺が籍を抜いていることは話してあるので、慮れるという自負があるのであればやらないでほしい。
     俺との未来について考えてくれるというのは、正直に言ってとても嬉しいのだ。けれど、プロポーズを断りながら嬉しくなっている自分のことは恥ずかしい。
    「だいたい、すぐに法律婚ができる社会になったとして、あなたは結婚が嫌というわけではないんだろう?」
    「……場合によるよ」
    「では質問を変えよう。互いに真経津に右手をブチ抜かれ鼓膜をブチ破られてクラブで出会い、その他真経津に負けたマヌケ共と家で集まる、私とあなたでコンビを組みタッグマッチをするなどの経験は同じとする。私に兄がおり、兄には妻と二人の子供がいることもあなたは知っている。あなたは私に兄の写真を見せられているし、友人としてだがビデオ通話もしたな。その上で法律婚のできる社会であったなら、私との結婚は嫌か?」
    「嫌では……ない、けど」
    「けど? 受け入れられるかが怖いのか」
     核心だった。簡単すぎて心を読もうとする必要もない。友人に、そして村雨の家族に受け入れてもらえるのかがわからない。それが嫌だ。
     俺は相変わらず臆病なのだ。爪弾きにされることには慣れていたはずなのに、今はそれがとてつもなく怖い。俺達が穏やかに寄り添い笑って過ごすことだけを望んでも、それはおかしいと信じる人間だっている。かつての自分はそうだった。男に生まれたからには、女と結婚し子供をつくるのが普通なのだと信じていた。身体を鍛えた理由に異性の目を気にしなかった面がないとは言えない。整っているらしかった顔と合わせることで、とてもわかりやすく他者を惹きつけることに役立った。
    「……そりゃ怖いだろ。さっきも言ったけどよ、」
    「だが考えはした」
    「……」
    「あなたのことだ。そうでなければ、自慢したい話題でもないのにベラベラと喋るわけがない」
     反論しようとした俺の声を遮り、村雨がまたも俺の中身を言い当てる。決めつけてんじゃねえ、と言いたいところだがその通りなので何も言えない。水を飲む。
     考えはした。考えて、悩んだのであれこれ調べた。当たり前だがアナルセックスの安全なやり方を調べた時よりも時間がかかり、消耗もした。何も言わずに消えてしまおうかと思ったことまである。けれどもそういう時に限って村雨はこまめにメッセージをくれるし、家にも来た。お約束みたいにセックスをしたし、それはとても優しくて気持ちよくて多幸感があった。
    「……医者ってめちゃくちゃ縦社会だろ」
    「そうだが」
    「女の医者も半世紀とかの昔に比べりゃ多いけど、大体男女でくっつくし、こどもつくったりするだろ」
    「人に……経済状況や体質という意味で人による」
    「結婚してる奴の方が安心みたいなとことかさ」
    「そんなものを気にするのは化石頭の老人連中か、不躾極まりない一部の患者くらいのものだ。安心しろ」
    「でもよ」
    「獅子神。私はあなたの答えを持っているのだが? 私との結婚を考えたかどうかを」
    「いや流れでわかれよ! 考えて調べまくったからお前のご指摘通りあんだけベラベラ喋れたにきまってんだろーがボケ! じゃなきゃ難民とか知らねえよ善人じゃねえんだぞ!」
    「あなたは私が知る人間の中では限りなく善人と言っていいが」
     村雨は時折、こうやって真顔で俺の善性を認定し、肯定する。奴隷を囲っていたことや、クラブで見せた暴力があるのに本気で言ってくるのだから困る。いつの間にかカラになっていたコップに水を注いでいる顔からは読めるものがない。
    「あー……。叶とか天堂と比べたか?」
    「御手洗暉とも比べた」
     急に出てきた名前に面食らった。真布津と共にカラス銀行を壊滅においやり、行方不明となっている元行員だ。村雨曰く標識男。つまり顔に出やすくわかりやすい「マヌケ」だ。確かに大抵のことに対して察しの悪い男ではあったし、善人かどうかで言われると俺とまあまあ良い勝負なのではないかと思う。真布津のために本気で命を投げ出す上にどれだけ周りを巻き込んでも平気ですというシームレスな狂気だけは真似できないが。
    「御手洗は方向性が違うタイプの災害だろ」
    「だがあなたの方がマシでは? 破滅願望を抱えながらも矛盾する向上心を持ち、あの賭場で成長を続けた。自分の身体を作る努力は惜しむことをせず、トレーニングや食事制限に勤しむストイックさは誰から見ても素晴らしい。自らが買った奴隷を雇用し、資格試験のための金も出した。さらに作る食事がうまい」
    「な……あ……」
    「私と身体の相性もいい」
    「もう善人とかと関係ねえだろ! 相性とかもよ……ワザと言うな、そういうことを」
    「茶化された仕返しだが」
     しれっとぬかす村雨は小憎らしいがどこか可愛らしい。やはり惚れた弱みというのはまだ健在らしく、自分で自分に腹が立つ。
     進んでいるのかいないのか、言葉のラリーはしばらく続き、ピッチャーの中身も空になってしまった。軽く腕を伸ばすとぱき、と音がした。潮時かもしれない。
    「そろそろ疲れてきたな。ってもう一時近いじゃねーかよ、何時間話してたんだ、俺達」
    「三時間ほどだな。あなた本当に強情すぎるぞ」
    「いや、できるんならするっつってんだろうがよ」
    「言ったな?」
    「あ? ……あ。いや、お前そんな。眠い時の言葉なんかで言質とんなよ」
    「五年以内にはあなたと私は結婚している」
    「予言?」
    「そんなものはしない。持てるカードを全て使ってそうしてみせるという意味だ。」
    「政治家になんの⁇」
    「マヌケ。私があなたとの時間を犠牲に矢面に立つとでも思っているのか」
     どうやら違うらしい。だが、ほぼ一般人と言える俺達が投票以外で政治に参加できる事はないだろうに、一体何を言い出すのか。村雨は自分のフィールドであればどこの国のトップでも思い通りに動かすことができそうではあるが、果たして公衆の場でそれができるのだろうか。法律を変えようなんて話、東京ドームにドミノを並べて一回も倒さずに成功させるくらいに途方もなさそうだが。
    「我々は今でこそかよわい一般人だが、故にスネについた傷は完全には消えていない。警察の世話にこそなっていないが、強請られて困る程度には残っている。しかしそれは強請りたい側も同じだ」
     頭に浮かんだのは、拉致監禁殺人未遂の八文字だった。俺が片棒を担がされるところまで見えている。悪友達よりも先に、しかも重い罪で報道される日もそう遠くないのかもしれない。もしそういう方向に行くのであれば俺は殴ってでもこいつを止める義務がある。筋トレは続けて損なことはない。
    「何か勘違いをしているようだが、私は非力なので不得意な分野で賭けはしない。そもそも、先程取らせてもらった言質に対するアクションなので私だけでやることが重要だ」
    「俺は人死にが出ないならなんでもいいけど」
    「私の職業をなんだと思っている」
    「へえ。今度はどんな処方箋を見せてくれるんですかね、お医者様」
    「安心しろ。ゆっくりとした治療なので誰の血も流れないし電流で身体が軋むこともない」
    「はいよ」
    「しかし婚約状態くらいにはなっておかねばと思う。次の休みにはパートナーシップ宣言をしにいくぞ」
    「ん……ん?」
     いよいよ眠気が強くなってきたので、深呼吸をし、辛うじて残っていた水を飲む。瞬きをして、目の前の男を見る。
    「村雨?」
    「しかし婚約状態くらいにはなっておかねばと思う。次の私の非番にはパートナーシップ宣言をしにいくぞ」
    「おい……録音どころかループさせんなボケッ‼」
     深夜の咆哮は、防音工事を追加でした数年前の俺のおかげで近所迷惑になることはなく済んだ。すわ破局か、となるような「お話し合い」をした後にしたはずだが、そこまで気まずいわけでもない。だが、疑いはある。市井の医者がどう頑張っても政治家なんか動かせるわけはないというのに。
     まあせいぜい頑張って、眠たい俺の口から出た言葉を掲げて勝鬨を上げられるといいな、村雨さんよ。
    「言っておくが私はヤバい男なので改めて覚悟しておくように」
    「約束はできねーぞ」
     言いながらも村雨の非番に合わせ、パートナーシップ宣言だけをした俺はまだ知らない。何がどうなってかはわからないが、本当に五年以内に日本中で歓喜の声が上がる事を。

    おわり


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