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    oimo_1025

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    (了尊)雨の日で外に出られない尊。

    #了尊
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    02【晴れるまで待てない】少し前まで燦々と降り注いでいた日射しは、午後に入ると途端に分厚い雲に覆われて、間もなく大粒の雨を落とし始めた。
    「あちゃー……やっぱり降っちゃったか」
    尊は窓の外を見て、うんざりした様子で呟いた。昨日までの予報では一日快晴のはずだったのに、いざ蓋を開けてみればこの有り様だ。
    『尊、今日出掛けるのはやめておいた方がいいんじゃないか?』
    机に置いたままのデュエルディスクから飛び出した不霊夢は窓辺に寄ると、ガラスに張り付く雨粒を指先で拭う動作をした。ガラスの向こうの雨粒には当然触れられないので、なぞるだけだったが。
    「でも、今日は鴻上んとこ行く約束してるんだよね」
    『だが、今調べた気象予報では当分止む気配はないと出ている。豪雨の中外を出歩くのは危険だと思うのだが』
    確かに不霊夢の言うことは正論だった。外は強い雨足に加え、強い風まで吹いているようで、時折がたがたと窓枠を揺らしている。こんな傘も飛ばされそうな中を歩いていけばまず間違いなくずぶ濡れになるだろうし、それ以前にこの天候の中家に向かおうものなら、了見からも咎められるような気がしてならない。
    「行けそうにないって、言うかぁ」
    そう断りを送ったら送ったで、まさか来る気だったのかと呆れられてしまいそうだが。
    そうして通話にしようかメールにしようか迷っていたところ。
    「あ、」
    丁度了見から着信があり、慌てて通話を繋げた。
    「もしもし?」
    『まさかとは思うが、この天候の中こちらへ来ようとしてはいないだろうな?』
    挨拶もそこそこに、今まさに思い悩んでいたことを指摘され、ウッと唸る。電話越しだというのに了見にはお見通しのようで、危惧していた通りの呆れたため息をつく音が聞こえてきた。
    『まったく。油断も隙もないな。不霊夢、貴様も保護者なら、もう少ししっかり手綱を握っておけ』
    『私は最初から止めていたのだが』
    「ちょおーっと待った。誰が、誰の保護者だって?」
    聞き捨てならない発言に口を挟むと、二人ははやれやれと首を振った。その通じ合っている感が癪に障る。
    不霊夢は尊を元に生まれたイグニスであるはずなのに、了見の方がよほど気が合っているように感じるのは何故なのだろうか。
    『尊は一人ではふにゃふにゃしているからな。我々が見ていないと』
    「ふにゃふにゃって…それはあくまで余所行きで、」
    『そうか?この前泊まった翌朝は、寝起きでかなりふにゃふにゃしていた気がするのだが』
    「な……ッ!?」
    先日泊まった際、寝惚けて了見に抱きついていたことを蒸し返されているのだとわかるなり顔がカッと熱くなる。
    「あ、あれは偶々で!ほら、寝起きは頭が働かないから!」
    『君の脳がデュエル中以外でフル稼働しているのは試験前夜くらいだろう』
    『ほう…?勉学は疎かにしないという約束だったはずだが。遊びより勉強会でもした方がいいか』
    不霊夢の余計な一言から飛び火した小言に、尊はうげっと顔をしかめる。
    以前赤点スレスレを取ったことを了見に知られた際は大変だった。あちこち飛び回っているはずの男が二週間も時間を空けてきたかと思えば、その間みっちりと扱かれたのだ。勿論ためにはなったし成績は上がったが、できることならもう二度とごめん蒙りたい。
    「やるから。ちゃんとやるから!」
    あまりにも必死の形相で訴えるので、それが了見のツボにハマったらしく、彼はくつくつと笑い出した。その点に関しては不利を自覚しながらも弄ばれている気がしてむうと頬を膨らませると、了見はひと頻り笑い終えた後、漸く『冗談だ』と告げる。
    『お前がきちんと勉強の時間を設けていると報告は受けているからな』
    「え?」
    報告とは。まさか部屋に盗撮カメラでも仕込んでいるのだろうか。了見ならやりかねないと疑いの目を向けるも、彼からは語気強めに否定された。しかしGPSで居場所は特定できるらしい時点で、胸を張れるものではないと思う尊なのだった。
    「そうなると残りは……」
    鋭くつり上がった尊の眼光が小さなパートナーを捉える。
    『大丈夫だ尊。あくまで君が勉強の時間を作っているかの話しかしていない。だから彼と会う予定が流れて実は結構気落ちしていたことや、たまに寝言で彼の名前を呟いていることまでは報告していないぞ』
    「ぎゃああやめろ何それ寝言とか知らないんですけど!!?!」
    慌てて不霊夢を黙らせようと手を伸ばすが、したところで既に遅く、当の了見は今の話がよほど衝撃的だったのか、ぽかんと口を開けたままフリーズしていた。
    「うわああもうやだ!通話切る!!」
    堪らずテーブルごとひっくり返す勢いで通話を切ろうとするが、『待て』と了見の一言で動きが止まる。
    「なんだよ!」
    忘れてくれるのかと詰め寄れば、彼は咳払いをひとつして。
    『……天候は生憎だが、会えないとは言っていないだろう』
    「へ?それって……」
    『我々にはこれがある。だろう?』
    そう言って掲げた腕には、了見専用にカスタマイズされたデュエルディスク。「あ、そっか」
    現実世界が悪天候でも、LINK VRAINSなら関係ない。
    『時間を置くか?』
    「いい。切ったらすぐ行く!」
    どの道今日は了見と会うのに一日空けている。話している間にもログインする準備を始めている尊の様子に了見は苦笑した。
    『分かった。待っている』
    「うん。いつものところで」
    通話が切れると、途端に忘れかけていた雨の音が戻ってくる。尊は手早く身支度を整えてデュエルディスクを腕に装着すると、ベッドの上に寝転んだ。
    そうしていざログインというところで、不霊夢に声を掛けると、てっきり一緒に来るとばかり思っていたパートナーは首を横に振った。
    『私は遠慮しておこう』
    なんでも、先日録画しておいた映画を観たいのだとか。今回のはアクション物らしいのでまだいいが、はAiたちの影響か突然昼ドラを観始めたりすることもあるので、尊は段々と彼の趣味についていけなくなりつつあった。
    『それに、私がいては逢瀬の邪魔だろう?何、礼は不要だ。私はイグニスの中でも一番の紳士だからな』
    本当に、いくつ爆弾を落とせば気が済むのかこのAIは。尊は真っ赤な顔で「変な気回さなくていいから!」と叫びはしたが、今日のところはその気遣いに甘えさせてもらうことにする。
    「それじゃ、いってきます」
    『ああ。リボルバーにもよろしくと伝えておいてくれ』
    「はいはい。…やっぱ保護者面なんだよなぁ……」
    小さな不満を飲み込みつつ、尊はLINK VRAINSへと旅立って行った。
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