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    sena

    絵心が壊滅的なのでスクショくらいしかない。小説しか書けないよ!
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    アイコンはいらすと.や様よりお借りしました

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    sena

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    支部の下書きサルベージ、第三弾。
    未完成を加筆修正したので、最初と最後で少し雰囲気が違うかも。最終決戦後の柱(さねみん・ぎゆゆさん・音兄貴)と千くんの交流のワンシーンです。音兄貴は今回は不在。原作軸なので、兄上はいません。が、登場してます。捏造しかない。さねみん視点で、口調はずっと迷子です。とりあえず語尾に『ェ』か『ァ』を付けとけばさねみんになると思ってる人が書きました。寛大な心でお願いします!!

    #杏千
    apricotChien

    黎明の先に※最終決戦後の千くん、不死川さん、冨岡さん(+宇髄さん)


    三月に一度の恒例行事。
    生き残った者たちで集まり、互いの近況と昔話をつまみに酒を呑む。かつての同僚二人と、同僚の弟と。奇妙な四角関係は意外と続くもので、気付けば季節は二巡目に差し掛かっていた。

    「おーい、邪魔すんぜェ」

    だだっ広い屋敷の玄関先、昔ながらの扉に向かって声を掛ける。
    もうかれこれ五度目の会合になるが、いつだってこの屋敷が集合場所になっていた。別に他所でも構いやしないが、目の届かないところで弟を連れ出すと煩そうなやつがいるので、毎回満場一致でここになるのだ。脳裏に浮かんだ快活な笑顔に『お前だよ、お前』と突っ込みを入れ、目の前の扉が開くのを待つ。が、いつまで経っても扉は開かない。時間は間違えてねェ筈…と、もう一度声を掛けようとしたその時。音もなく扉が開かれ、続けて現れた男に俺は顔を引き攣らせた。

    「――不死川、久しぶりだな」
    「…何でオメェが出てくんだ」
    「?煉獄弟は今手が離せない。料理中だ」
    「あっそ…」

    俺を出迎えたのは旧友の弟ではなく、いけ好かない元同僚だった。
    もはや条件反射で悪態をつけば、元同僚…冨岡は額面通り受け取っては馬鹿正直に説明してくる。続けて「鮭大根も作ってくれた」と穏やかに笑った冨岡に、嫌味を言う気力も無くなって、そのまま家に上がり込む。野郎と並んで歩く気はないので、冨岡を置いて足早に廊下を進んでいく。後ろでは冨岡が「不死川は足が速い」なんて頓珍漢なことを言うので、余計に脱力してしまった。

    (…相変わらず、気に食わねェ)

    頭がイテェ。冨岡と話すといつもこうだ。一言二言話しただけなのに、凄まじく体力を削られる。話が通じねェし、絶望的に気が合わない。たまたま鬼殺隊で一緒になっただけで、たまたま同時期に柱になっただけ。鬼がいなけりゃ、話すこともなかっただろうな。そんなことを考えながら、勝手知ったる煉獄家の廊下を歩いていく。

    …出来ることなら冨岡でなく、いつものように煉獄の弟に迎えてほしかった。
    成長期真っ只中なのか、会う度に身長が伸びる様を見守るのは楽しい。幼かった顔立ちは季節を巡るにつれて大人びて、少しずつ少年を脱しようとしている。そんな弟分の成長が楽しみだと思う反面、本来ならばこれは煉獄が見るべき一面だったとも思う。まるで若竹のように成長する弟を傍で見守り、いずれやって来る巣立ちの日を待つ。明日も知れない日々の中、その日を夢見ていただろうに。

    だからこそ、煉獄の代わりに弟の成長を見守ってやりたいと思う。困っていれば手を貸してやって、自分の思う道を進ませてやる。あいつが出来なかったことを、今度は俺が引き継いでやりたいと思う。あと何度会えるか分からないが、あと季節が二巡するくらいまでは見守ってやれる筈だ。そっから後は宇髄に任せるしかねェな、なんて笑ったところでふと気付く。そういや、宇髄はどうした。

    「…宇髄、今日来ねぇのか」
    「あぁ、奥方が産気づいたらしい」
    「へェ。二人目か」

    そういや、前回そんなことを言っていたような気がする。
    鬼殺隊で唯一の妻子持ちの男は、美人の嫁さんを三人ももらっていた。最初は何だコイツと思ったものだが、四人、いやチビを入れて五人で仲睦まじく過ごす様を見ていると、案外いいものだなんて思う。今後は更に家族が増えるなんて、いい事尽くしじゃねェか。長生きするだろう友人を思い、知らずの内に口の端は緩んでいた。

    そんな近況報告を交えながら、親子二人では広すぎる屋敷を冨岡と歩いていく。この前偶然村田に会っただの、竈門たちが俺に会いたがっているだのを聞きながら、適当に相槌を打つ。どうでもいいけど、村田って誰だ。脳裏に前髪を真ん中で分けた男が浮かんだが、顔が思い出せないので打ち消した。そして一言二言俺の近況を語り、台所に続く角を曲がろうとしたその時。立派な重箱を二つ抱えた金髪が、パタパタと足音を立てて俺たちの前に現れた。昔一つに括っていた髪は、兄と同じく一房だけ後ろで結われている。金と赤が混じった瞳は大きく見開かれたが、俺たちふたりを見渡すと優しく細まった。兄の面影を残しつつ、また違った成長を遂げる煉獄弟が眩しくて。つい昔のように髪をかき混ぜるように頭を撫でれば、少年から青年に変わりつつある煉獄弟は、照れくさそうに口を開いた。

    「不死川さん、こんにちは。お変わりないようで安心しました」
    「おう。また背ェ伸びたか」
    「あはは…炭治郎さん達にも言われました」

    もう少し、伸びるかなぁ。
    自分の頭を撫でながら少し上を見た弟は、きっと兄を思い浮かべているのだろう。幾分か伸びたとはいえ、煉獄弟の身長は兄には届かない。今くらいが丁度いいんじゃねェの、とは思ったが、嬉しそうに「宇髄さんには伸びしろがある、と言って頂きました」と笑うので、敢えて何も言わなかった。

    「煉獄弟、重箱は俺たちが持とう」
    「ありがとうございます。でも見た目ほど重くは、」
    「いいから、お前は先に行っとけェ。料理が冷めるだろうが」

    恐縮する弟から重箱を奪い取り、二つのうちの一つを冨岡に押し付ける。
    片手では持ちにくいのでは…と心配する弟をよそに、冨岡は慣れた手つきで重箱を抱え直した。真顔のまま「不死川の分も持ってやろうか」と冗談を宣う腐れ縁に蹴りを入れ、大きくなった背をぐいぐいと押してやれば、弟は根負けしたように笑って歩き始めた。そして元来た道を戻り、これまた広い縁側に辿り着く。抱えた重箱を床に降ろし、風呂敷を解こうとした俺たちを止めたのは、煉獄弟の穏やかな微笑みだった。

    「…今日はあの桜の下にしませんか」
    「あの桜って…庭の桜かァ?」
    「はい。偶にはいいかな、って」
    「俺は構わない」

    形のいい指が差した先には、庭の隅に植えられた桜の木があった。どちらかというと紅葉の印象が強いこの屋敷には、一本だけ桜が植えられている。去年はその桜をつまみに縁側で酒を呑んだものだが、今年は桜の下がいいらしい。別に縁側にこだわりがある訳ではないが、どの季節も縁側で飯を食ってきたのに、今年だけどういう風の吹き回しだ。何か含みがありそうな弟に問いかける前に、冨岡が返事をしたので有耶無耶になってしまった。この野郎…鮭大根が冷めるのが嫌なだけだろ。宇髄とは別の次元で自由人な冨岡に悪態をつけば、首を傾げる本人の横で煉獄弟がくすくす笑った。

    「実はもうお酒も用意しているのです」

    俺たちの草履を地面に並べた弟は、微笑みながら桜に近付いていく。よく見れば桜の木の根元には酒と盃が置かれていて、花見酒の準備は万端だった。相変わらず、気の利くことで。準備の良さに舌を巻きながら、浮かれた冨岡と共に庭を歩き出した。庭の隅に一本だけ植えられた桜は、今がちょうど満開のようで、風に揺られて花弁が舞い散っている。あまりに吹きすさぶものだから、一足先に桜まで辿り着いた煉獄弟など、花びらで隠れてしまいがちだ。こんなに花びらが舞ってる中、酒なんて飲めんのかァ?なんて思ったが、折角酒を用意してくれた弟の厚意を無下にも出来ない。ま、記録的寒波の冬に酒を呑んだ去年よりマシか。そう考えなおし、こっちこっち!と笑って手を振る弟に手を振り返した、その時。ひと際強い風が吹き、一瞬目を瞑ってしまう。そして次に目を開いた時、煉獄弟の後ろに見える人影に息を呑んだ。

    (…煉獄)

    突風で思わず目を閉じた弟を庇うように、よく似た男が自分の羽織でその身を覆っていた。全身はうっすらと透けているのに、その表情だけははっきりと見える。背丈が近付いてきた発展途上の体を見つめ、慈しむように見守るその眼差しは、鬼殺隊では見せたことが無い表情だった。やがて風は落ち着き、目を閉じていた弟はゆっくりと瞼を上げる。その肩にはまだ炎の羽織が覆っているのに、煉獄弟は振り返ることをせず、ただ俺たちに向かって手を振るだけだ。まさか俺だけが見えてんのか?と隣を見たが、かつての同僚も同じく絶句していた。俺たちにだけ見えて、煉獄弟には見えていない。煉獄本人も分かっているのだろう。緩んだ表情を引き締め、いつものように笑って首を振った。気にするな。聞こえる筈のない声が聞こえたようで、つい唇を噛んでしまう。お前が一番悔しいんじゃねェのか。そう言ってやりたくなったが、弟の肩に手を置いた煉獄があまりに優しく微笑むもんだから、ついこんな約束をしてしまった。

    「――心配しなくても、見守っててやるよ」

    俺と冨岡と、ついでに宇髄が。
    勝手に冨岡の名前を出せば、隣でふっと笑った気配がした。コイツ、こんな風に笑うようになったのか。いけ好かないと思っていた元同僚の新たな一面を垣間見て、俺まで笑ってしまった。ずっとは見てやれないが、俺が生きてる間は見守ってやるよ。だから安心しなと手を挙げれば、かつての炎柱は目を伏せて満足そうに微笑んだ。そして再び訪れた春の嵐の後、目を開けた先には煉獄はいなかった。懐かしさと、切なさと、それを超えた感情が胸を駆け巡る。それをぐっと抑え込み、度々訪れた突風に首を傾げる煉獄弟に向かって、俺たちは歩き出した。

    「…今日は、一段と美味い酒が飲めそうだなァ」

    なぁ、煉獄。
    そんな俺の独り言に応えるように、桜の花びらがひらりと舞った。


    おしまい

    黎明の先に
    (若い芽を見守る人たちの話)
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    Replies from the creator

    sena

    DONE呉秋さんの素敵な結婚❤杏千ちゃん絵に悶絶し、意味の分からない話を書いてしまった😄(何故なのか)

    とりあえず勢いで書いたので、支部に上げる頃にはもうちょい加筆修正(+設定)したい。
    何がどうなったか不明ですが、杏千(+愈+珠)という謎メンバーです。多分杏千ちゃんパートより二人のパートの方が長い。正直タイトルは思いつかなかったのですが、愛だけは込めました!
    Look at me!赤と白のタキシードに身を包み、鏡の前に立ってみる。…やっぱり、こっちの方がいいかな。元々宛がわれていた白のネクタイを外し、候補の一つとして用意されていた蝶ネクタイに手を伸ばした。

    「…うん、これにしよう」

    白も悪くないけど、この紅白のタキシードには赤い蝶ネクタイの方が合っている気がする。初めて身に付ける蝶ネクタイに悪戦苦闘しながらも、何とか結び終えたリボンは少し不格好だ。…人のネクタイを結ぶのは得意なんだけどな。若干歪んだリボンを直しながら、毎朝の光景を思い出して、僕は鏡越しに笑ってしまった。

    ――さて、話は数十分前に遡る。
    折角の休日だからとドライブに出掛けた僕たち兄弟は、都心から少し離れたこの場所を訪れていた。広大な土地に慎ましく建てられた建物は、兄曰く『写真館』らしい。そして殆ど説明のないまま車は止められ、僕が状況を飲み込めずにぽかんと呆ける中、兄が笑ってシートベルトを外してくれた。ほら、と優しく手を伸ばされ、掌にそっと手を重ねる。幼い頃から何度も繰り返された、僕たちの儀式みたいなもの。キリッと上がった眉と目尻が少しだけ下がって、重ねた掌を柔く握られる。そしてそのまま立たせてもらい、僕たちは少し離れた場所にある写真館へと歩き出した。
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