性に触れた選手権最近ルイの匂いが変わった。というのも数日前からいつもの香水に加えた、わずかに甘い香りがする。加えて時々だが顔が少し赤い時がある。暑い日など無い我が国に、それはよく目立ったものだ。
他の給仕達も気づいた様子はなく、これは自分の嗅覚の良さが気づいた異変だと考える。しかし、これといって目立つような変わった行動は…一つ思い当たる。
夜が明ける少し前の時間に、執事たちの住まう屋敷へと戻るルイの姿を一度だけ見たことがある。
その時は髪も乱れ顔が一段と赤かったのを覚えている。
夜通し何かをしていたのは予測がつくが、今の自分には想像ができない。長年共に過ごした腹心なだけに、気になって仕方なかった。
後でまた考えるとしよう。今日は外から"指南役"の先生が来てくれる。将来家督を継ぐにあたり、正しく跡取りを成すための知識を教授してくれるらしい。
"指南役"の先生はかなり露出の多い人だった。こんな寒空のもと、そこまで曝け出しては凍えそうだと、思ったのだが。
先生はとにかく接触が多い。肌を密着させ、寝具まで押し倒されはしたものの、先生が想像した反応を私がしなかったのだろう。先生は困った顔をした。
全くもって理解できなかったが、先生が言葉で解説をし始めた途端、理解してしまった。そう、これは性行為に値するものだと。
今までこういったことに自ら触れたことがない、知識もなかったので自覚すらしていなかった。
何度か部屋に来た給仕が興奮した様子で私を押し倒したり、体の汗を拭き取ると称して服を脱がせることがあったが。
その給仕が後に解雇された理由も今なら理解できる。
そしてルイから別の香りがする原因も、きっと営みに起因するということも。
羞恥で顔が熱くなってしまい、手で塞ぐ。
先生は"勃たせる練習"の為に、好きな女の人の姿を思い浮かべなさい、といったものの。
今まで好きになった女の子なんていなかった。そもそも興味も向かなかった。ただ一人、心が熱を持つ相手は…
いる。
幼い頃からずっと私を見ていてくれた。護りたいと唯一思えた。あの時のキャラメルはいつもよりずっと甘かった。何より、見上げた時の顔がいつも優しかった。
愛したいと想うたびに、鼓動が早くなる。
あの匂いを思い出すたびに、塗り変えてやりたくなる。
わずかに赤らむ頬を、そっと手で包みたくなる。
そんな想いを膨らませていると、下腹部が熱を持ち出す。先生はよくできました、と褒めてくれたけど。こんなこと許されるのだろうか。
私は跡取り、ルイはそれに仕える者だ。
そんなことは百も承知だ。頭では理解しているけれど。
熱を知ってしまった身体は、もう元には戻れなかった。