「ルイ…?」
帰宅して一階を見て回ったがいない。地下の教会部屋に行くと、酷く顔色の悪いルイがいて、椅子に腰掛けていた。
「ああ、ゼルか。」
この顔色の悪さには大体察しがついている。自分はある程度コントロールできるのだが、殆どのダイナミクスは定期的にプレイを行わないと体調不良や、心身を病むなど、様々な不調が出る。
とりあえず。行為までいかずとも簡易的にプレイをしたほうがいい。
「ルイ、Come。」
優しく声をかけると、彼は少し驚いた顔をしながらもこちらへ歩み寄ってくる。
「Goodboy、ルイ。」
撫でてやると素直ではないが喜んでくれる。自分はこれを見るのが一番好きだった。いつかSubspaceに入れて自分から懇願するまで溶かしてやりたいと思いつつも、ルイが嫌がることはやりたくないので焦らずに。
ルイは過去にSubdropを経験している。それ故に強引にプレイをすれば怯えてまた再発してしまうし、何よりSubspaceへのハードルが更に高くなる。
「突然プレイをして驚いたよな、すまない。」
「…正直驚いた。また何かされるのかと。」
これだから堕としがいがあるなんて思ってしまう。高い壁を超えた先に満たされる支配欲は、きっと脳を震わせるに違いない。
「ルイが嫌なこと、怖がることはしないって、約束しただろ。大丈夫だ。」
ルイがSubspaceに入れるように。そう決めたんだ。他のDomには決して渡さない。自分だけが、ルイを護り、満足させてあげられるDomなんだと心で復唱する。
顔色は元に戻っている。一先ずは大丈夫そうだ。
ある程度欲はコントロールできる。それはわかっているのだが、やはり限度がある。どうしてもルイを優先してしまうので、満たされないことはそこそこある。その結果、半年に一度猛烈な吐き気か、強烈な性欲増加という少々困った症状が出る。
性欲ならまだ良い。一人自慰を繰り返し、密かに解決すれば何とか乗り越えられる。問題は吐気の方だった。
一日中吐きそうで吐けない、地獄のような症状が出る。
その半年に一度が今日来てしまった。
性欲だ。解決しない限り興奮状態が続く。こうなるとGlareも意図せず漏れ出てしまう危険もあって、早々に解決したかった。運がいいことに今日は朝早くからルイが買い出しに行っていて留守だ。とにかく、ルイのいない間に自慰を数回こなすしか─
ああ、しまった。この聞き慣れた足音。帰ってきたのだ。時計を見れば今日は珍しく寝過ごしたらしく、この状況になってしまったのも頷ける。
抑制剤を飲むしかない。慌てて探そうとするも、視点が定まらない。熱で自由が効かないように、足元もふらつき覚束ない。
まずい。これではルイに何をしでかすかわからない。
「ゼル。」
背後からルイの落ち着いた声がする。
「何だ…帰ってきてたのか…すまない、熱が出たから薬を─」
悶え悶えになりながらも何とか嘘で誤魔化そうとしたが、無理だった。それはそうだ。もう長い間共にいる。
「その熱は、満足できていない証だろう。私にできることなら言え、ちゃんと、コマンドで。」
ルイが一瞬視線を移した先には衣服の上からでもわかるぐらいに、立派に脈打つ私のモノがあった。自分でも吐き出す先を求める鼓動を感じる。できることなら。思い切りルイに穿ちたい。
「本当に良いのか…?…怖くないか?」
「いいから。」
「Safewordは?」
「互いの苗字。」
確かめるようにルイに言わせる。私自身にも言い聞かせるために。
「Goodboy、ルイ。ちゃんと覚えているな。」
一息おいて。彼を見つめた。
最初からルイを組み敷くようなことはしない。今までより少し激しいが私への"ご奉仕"をさせようと考えている。それでルイが拒絶しなかったら。もしSubspaceに入ることができたら。ルイのことも満足させてあげたいと強く思った。
「Strip」
Glareで対象が私であることを優しく諭すと、ルイは私の衣服を外していく。シャツがするりと落ちていき、下もまた、抜けていく。彼の吐息が直に感じられて心地良さを感じると共に、彼が怖がっていないか、常に頭の片隅にあった。
「いい子だ、次はKneel。」
丁度私のモノが咥えられるように、無理のない姿勢で座らせる。恥ずかしいことに、私の鈴口からは先走りがとめどなく溢れ出ていた。早く達したいという気持ちを抑えつつも、彼の顔を見る。初めて出会った頃の顔とは大違いだった。
穏やかな顔だ。少し安堵した。
「私のこれをSuck、できるか。」
ルイが股へ顔を埋めると同時に、強烈な快感が脳に走る。舌と唇が吸盤のように吸い付き、穂先から陰囊の上までが狂気的に痺れる。不定期なリズムで襲いかかるそれは、内側に走る子種を加速させた。
「いい…子だ。Rush。」
意識が飛びそうになる。容赦なく襲いかかり加速するうねりは、腰を自然と浮かせてしまう。先端に早くも熱が集まり弾けそうになっていく。
獲物を絡め取る触手のように、滑らかに、力強く上下する快感。それと同時に自分の発したコマンドでルイが忠実に動いてくれていること。今までもコマンドを用いてプレイをすることはあったが、性的なものは一切なかった。それが今眼前にある。その事実に歓喜と快感が湧き上がった。ふと下を見れば、ルイの欲望もゆっくりと反り立つ様子が見える。自分よりも大きく、長いソレに、早く触れてやりたいと脳内麻薬が降り注ぐ。
上り詰める快楽がMore、と欲望を加速させる。加速する鼓動と淫らな水音、お互いの荒い息遣いだけが室内に鳴り響いていた。
「う……ぁ………ルイ……」
我慢できずに喘ぎを漏らすと、吸い付きが増した。頭の中が快感で掻き乱され、意識が度々飛びそうになる。普段上になる側の自分が下になっているこの感覚は、久しく味わっていなかった。余裕の無さから喘ぎが抑えきれなくなっていく。
瞬間、視点が天井を向いた。何が起こったか彼を見ると、後孔に違和感と重圧感に似た快感が襲いかかる。尻尾が更に逆立つのを感じていると、快感は二重に変化していく。彼の長い指が内部を巧みに広げていくと、的確に、執拗に、一点を責め立てる。
だらしない悲鳴のような喘ぎ声は、抑えが効かずだだ漏れになっていた。声を上げる度に彼は器用に、咥えながら蕾の内部まで蕩けさせていく。
為されるがまま、まるで雌のように堕ちていく。
「っ─」
瞬間息を呑んだ。出口を求め一点に集まっている白濁が、一気に解き放たれる感覚と、脳内が感電するかのような、痺れてやみつきになる感覚。絶頂を迎えた腰は情けなく震えていた。限界を迎え開放された精は脈打ちながらルイの口内へと注がれる。
「…すまない、口に出してしまった…美味しくはない、嫌だったら吐き出すといい。…よく頑張った。」
撫でてやるとルイは微笑んだ。いつもよりその微笑みが惚けているのを感じ、待ち侘びたかのような、心の奥底が疼くのを感じる。
収まることのない熱気は、私もルイも同じだ。
お互い見つめ合う。軽い口づけが三度繰り返されて、今度は舌が絡み合う。互いの味を噛みしめるかのように中を舐め合うと、名残惜しそうに離れる。潤んだ瞳は見つめ合って、混ざり合おうとする。
「Strip。」
彼の殻はどんどん外れて、顕になった彼の肌と反り立つ陰部が熱を加速させる。
再び舌を絡め合う。深い口吻は思考を停止させてしまうようで。自然とお互いに抱き寄せる。鼓動が重なって、吐息は熱を増した。
珍しく彼が上から覆い被さるような形になっていた。我慢ならないと主張するかのように、彼のモノは堂々と自分のモノに重なる。自分の性器は同族ではかなり大きい方だという自負はあったが、やはり2mを超える種族には勝てない。巨躯に似合う長さと大きさに犯される快感を想像していまい、後孔が締まった。
「ほら、入れてごらん。」
ご奉仕という名の前戯で解された秘部は、ゆっくりとルイの肉棒を受け入れる。迫り上がってくる違和感と押し広げられる快感に、口角が自然と上がった。
早くも擦り始めた彼の顔が段々と蕩け始める。それに合わせて腸壁を締めてやるとルイから喘ぎが漏れた。
「Goodboy、ルイ。我慢できないならRush、動いても良いぞ?」
その瞬間、彼は堕ちた。吐息は荒く余裕という文字はない。じっと私を見つめて、ただひたすらに快感を求め、前後していた。どうやら快感と自分しか認識できていない様子だ。
Subspaceに入ったらしい。あのルイが、遂に本当に心を許した証だ。ああ。どれほど待ち侘びただろう。もっと気持ちよくさせてやりたい。もっと庇護してやりたい。
「おっと、Don't cum。ギリギリまでもっとその顔を見せてくれ。」
覆いかぶさるその顔が、余裕の無さを増していく。
「駄目…っ…だ………早く…」
己の支配欲に溢れんばかりの愛の蜜が注がれ溢れる。目の前で必死に動く彼が愛おしい。
ぶつかり弾ける肌と肌には汗が浮かぶ。お互いの吐息が混じり合い、一種の媚薬のように腰を加速させた。ルイの先端から溢れる汁は、潤滑剤となって快感を増幅する。受け入れる自分も的確に前立腺を責められ、再び陰部が吐き出しを求め脈打った。
「Cum。」
そう言うと抑えられていた勢いの良い雄叫びが響く。同時に温かな精が中に満たされていく感覚。自分も我慢できずに二度目を吐き出していた。お互いに一瞬呆然としていたが、顔を見つめれば満足そうに微笑む。激しさという主食で満たされた後のデザートのように、軽い口吻を何度か交わした。
事後、ルイを撫でながら寄り添う。どこか眠そうにしている彼がこちらを見てふやけた顔で笑った。そんな情けない顔、いつぶりだろうか。
窓から差し込む太陽が、まるで昼寝を誘うように優しく照らしていた。