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    ながら(半分収納場)

    @magnolia_cage

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    背景に少しだけミュ本丸。

    #つるくり
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    言葉を残す おや旦那がた、何かお求めですかい。いやいや、ひやかしでも結構で。まあ、こいつらは派手なもんでも見目麗しいもんでもないんで、割と素通りされちまう。一見何かわかりゃあしませんしねぇ。
     刀装…なるほど、旦那がたは御刀さまで? 確かに見た目は似ておりますなぁ。使い方もまあ、同じように展開していただければ結構です。ただ、こいつらは武具ではござんせんし、一回こっきり、それだけの代物でございやす。
     へぇ、こいつらは言わば昔話ですなぁ。とある時代のとある場所、そこで起こったことを語ります。ヒトの子の世界にカセットテープやらレコーダーってのがありましたでしょう。もうなくなって久しいようですがね。今の主流は何と言いましたでしょうかねぇ。ヒトの子の流れはほんと速くてかなわねぇや。
     ああ、話がそれちまいましたな。まあ、そういう類のもんだと思っていただければようござんす。我々はヒトに比べりゃ長生きですからねぇ。あれこれ見聞きした古老がごろごろしておれば、中には講談師もかくやと巧みに語る御仁もある。そういう御仁の語りをね、ちょいと詰めたモンがこいつらで。ちなみにこいつは関ヶ原、むこうは阿波沖、そいつは伏見城のようですなぁ。
     旦那がたはどちらの御家の出で? …ははぁ、北の方ですな。なら、南の話がようございましょうなぁ。ああ、これなんかはどうですかね。こいつは田原坂、こっちは島原の話でございます。





    「…どうするんだ、そんなもの」
    「なぁに、件の本丸の報告書と一緒に片しておこうかと思ってな」
    「…物好きな」
    「褒め言葉として受け取っておくぜ」
    「…好きにしろ」
     深いため息。白く凝ったそれが雑踏に薄れて消える。
    「けどまあ、面白い技術だな、これも。ついでに作り方を訊いておけばよかった」
    「訊いてどうする」
    「きみに伝言を残しておけるだろう?」
    「伝言」
    「ああ」
    「文字で十分だ」
    「まあ、手紙というのもいいものだがな。けど、ヒトの子は声から忘れていくというから」
     からからと笑う鶴丸の声。もう一度ため息をこぼし、足を止めた大倶利伽羅が口を開く。
    「鶴丸」
    「どうした、伽羅坊」
    「…言い残したいことがあるなら、直接言いに来い。でなければ、聞かない」
     数歩先で振り向いた鶴丸の表情が、一瞬固まり、そうしてやわくほどける。
    「…ああ、きみもそうしてくれ」
    「ああ、当然だ」
     こちらへと差し出される手のひら。そこに己の手を重ね、肯く。密やかな、しかし確固とした約束。
    「忘れてくれるなよ、きみ」
    「あんたこそ、忘れるなよ」
     
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