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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か4・風千
    「雲居の空」序章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    ※不定期更新です

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    雲居の空:序章今年も穏やかな春の光が豊葦原を包み込む季節がやってきた。
    たんぽぽの綿毛を飛ばしている千尋を見て、この平和がずっと続くことを風早は願わずにはいられない。
    何度歴史を変えても起こる戦。
    その運命がようやく変わり、今まで見たことない史実が生まれようとしている。
    千尋の何気ない仕草はそんな平和の証のようにも思えた。

    「何、見てるのよ、風早!」
    「いえ、姫があまりにも可愛いもので」
    「もう、そんなことばっかり」

    相変わらず恥ずかしいことをしれっと口にする風早に対し、千尋は姉、一ノ姫の婚姻が近づいていることを思い出す。
    以前から姉が懇意にしている羽張彦は優れた武官として名を馳せており、また家柄も申し分ない。
    愛する人と国を守ることができるということで姉はかつてない美しい表情を見せていた。
    だからこそ思ってしまう。

    「風早と結婚できたらいいのに」

    思わず飛び出してしまう本音。

    「でも、身分違いの恋ですから」

    風早はあっさりとそう笑う。
    確かに自分は王族の姫。それに対して、風早は従者という立場を取っている。それに風早ははっきりとは語らないが、本当はもっと複雑な事情を抱えているらしいが、表向きは身分違いなことには変わりない。

    「でも、魂の高貴さなら、他の誰にも負けないのにな……」

    一緒にいる時間が長いから、風早の魂の気高さや崇高さを当たり前のように受け止めてしまうが、もし魂というものが形を示すことができるのであれば、風早の魂は自分たち王族に劣ることない、むしろ王族にも勝る高貴な色を放つに違いないだろう。
    そんなことを考える千尋に対し、風早は満面の笑みを浮かべる。

    「戦功を立てるしかないでしょうかね」
    「え!?」

    表情とは真逆の穏やかでない言葉が飛び出してきて、千尋は驚きの表情を隠せない。
    戦功…… つまり、争いの中で手柄を立てる。
    争いごとを好まなそうに見える容貌の風早から出た言葉とは思えない。

    「冗談ですよ」

    その言葉を聞いて千尋は安堵の溜め息を吐く。
    確かに風早の武術の腕は立つだろう。
    剣の稽古では将軍である忍人とも引けを取らないと聞いたことがあることもそれを示している。
    ふと千尋は記憶の中にある、この世界ではない世界で過ごしたことがよみがえってきた。
    風早いわく「本当は覚えているはずもない」記憶だそうだし、実際、自分は生まれてからずっとこの豊葦原でしか過ごしていない。だけど、どういうわけか別の世界でまったく異なる服装をし、建物の中で那岐と一緒に勉強していることが記憶に残っているのだ。

    「あの世界はよかったな。身分とかそんなの気にしなくて」

    風早と自分は学校の先生と生徒という立場はあったが、生徒たちはみな千尋の立場に気を遣うことなく気楽に接していた。
    今では残念ながらそれはない。
    采女たちは千尋に対してはよそよそしい態度を取り、また屋敷から一歩外に出れば人々がうやうやしく接してくる。
    そんな千尋に対し、風早は苦笑いを浮かべる。

    「ええ。でも、あのときはあのときで、俺は大変だったんですよ。あなたがあまりにも無垢で純粋でしたから」

    風早の表情からは葛藤が見てとれる。
    それが何から生まれるものかはわからない。
    それを知らないことは幸せなことなのかもしれない。
    だからこそ思わずにはいられない。

    「この豊葦原も王族とか関係なく、恋をし、結婚ができればいいのに」

    叶わない願いだとはわかっている。
    せめて王族にさえ生まれなければ叶えられたこと。
    姉はたまたま相手がよかったから結婚できた。
    でも、やはり願わずにはいられなかった。

    しかし、それから数日もたたないうちに、千尋のささやかな願いは破かれることになったのである。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
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    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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    「雲居の空」第2章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    ついにアシュヴィンとの顔合わせ。
    少なくとも彼は千尋には好意的ではあるが……!?

    ※不定期更新です
    「雲居の空」第2章 常世の国の皇子・アシュヴィン2.常世の国の皇子・アシュヴィン

    「オレが常世の国の皇子・アシュヴィンだ」

    風早に案内され千尋が向かった先は常世の国であった。
    千尋の目の前に現れたのは赤毛の髪に、肌に密着した服とはいえ着ていても一目で筋肉質だとわかる体躯を持つ皇子アシュヴィンだった。
    隣にいる風早とは色合いも雰囲気も真逆なため、千尋は戸惑いを隠しきれない。
    しかし、そんな千尋の様子を気にする様子もなく、アシュヴィンは口を開く。

    「常世の国と豊葦原の和平。悪くないな」

    そう言いながらアシュヴィンは千尋の頭のてっぺんから爪先まで観察するかのように視線を動かし、そして千尋の後ろにいる風早も一瞥する。

    「ふーん、なるほどな……」

    千尋と風早の間を流れている空気感、それに気づいたのだろうか。しかし、アシュヴィンは不快さではなく面白がる様子を見せた。
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