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    松宮くん

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    明確な挿入描写がない作品以外左右不定

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    松宮くん

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    ロナドラ/ドラロナ/モブドラ/左右不定

    タイトルから推測できる程度の残酷描写有
    2022-05-25 支部掲載分

    #ロナドラ
    Rona x Dra
    #ドラロナ
    drarona
    #モブドラ
    mobDrama

    ばらばらになる(短編まとめ)吹っ飛んだかきまぜるかきあつめる吹っ飛んだ
    わ。

    状況に不相応な腑抜けた声が出た。ひゅっ、と息が詰まるような恐れをあらわにしてしまえばそれこそ現実として受け入れる事と変わりはないのだと身体が咄嗟に防衛本能を働かせたからかもしれない。一瞬の硬直の後やるべきことをはっきりと思い出す。数えないと。間違いがないように。
    六。十七。二十九。
    遠くの方で、沢山の人の悲鳴が聞こえる。空を切り裂くような音も。でも全部が別の世界の物事に思えて現実感が希薄だった。そのうち何も聞こえなくなって静寂の中、ただ数を数え続ける。そういえばジョンはどこにいったんだろう。ずっと抱きしめていたはずなのにな、おかしいな。
    九十四。
    数えなきゃ、数えなきゃ。足りなくなったら困るから。
    百四十五。
    誰かに肩を揺すられる。待って、邪魔しないでよ。知ってる?吸血鬼は数を数えるのが得意なんだ。でもちょっと今日調子が悪くてさ。間違えたらいけないのに。ひとかけらだって見逃しちゃいけないのに。だってさぁ、真っ赤なんだ。だから溶けてしまってよく見えない。日の光をつつんだ銀を探さなきゃ、空の色を閉じ込めた青を探さなきゃ。遠いところに行ってるかも。ジョンにも探してもらわないと。ほんとにジョン、どこ行っちゃったんだ。一刻を争うんだぞ。ばらばらに砕け散ってしまったものを、元の形に取り戻すには時間がかかる。砕けてこぼれてあふれてしまったものはなかなかどうして簡単には元には戻らない。だからせめて精度を上げるためにもやるべきことはやらなくちゃあいけない。二百三十九。
    遠いところに飛んでいってしまったのかも。ようやく自分が立ちすくんだままであったことを思い出す。探さないと、探さないと。かき集めて、おじいさまに頼めばきっと全ては元通り。でもここから動けば踏んでしまうかも。枯れ木のように軽いわたしの重さでも潰してしまうのはどうも堪えた。どうして誰も用意してくれないんだろう。早く集めてしまわないといけないのに。どくどく、どくどく。心臓の音がうるさい。ええい!集中できないだろう!
    三百七十三。
    見渡せる限りは数え尽くした。間違いない。何回も何回も何回も何回も何回も何回も数え直したから。私のマントで大丈夫かなぁ?やっぱ不安だよね、ゴミ袋。持ってなかったっけ。緊急用に持ち歩いてたはず。
    ヌヌヌヌヌヌ!ヌヌヌヌヌヌ!
    泣き腫らしたような使い魔の呼び声がようやく耳に届く。なんだずっと側にいてくれたんだね、どうして気づかなかったんだろ。薄気味悪い肉の色と砕けた白と辺り一面を染めていく鮮やかな赤に眩暈がする。ジョンの呼び声が呼水となり、ぼやけていた聴覚に一気に音が流れ込む。同時に止まっていた時が動き出すかのように意識が現実へと引き戻される。頰に触れる。粘度のある何かが付着していた。掌に視線を移す。真っ白なはずの手袋は血に染まっていた。頰に残されていたのは数え残しの一欠片。目の前で砕けて、下から上が飛び散ってしまった大切な人の一部。
    三百七十三と一。
    息ができない。泣き叫ぶこともできない。受け入れられない。意味がわからない。血溜まりの中でどこにもいけないまま全身の力が抜けてへたりこむ。このまま死ねば塵と共に混ぜ返されて一つになるのかな、とばかみたいなことを考えながら目を閉じた。
    かきまぜる(モブドラ風味)

    わかたれた肉体をおもう。
    うえがしたにある、みぎが、うえに。小指がおなかにあって、膝が目の前にある。目、そもそも目はどこにあるんだ。あった、背中にひとつ。
    それから、それから。
    どのくらい分けてもいいのかな?実験とかしたことある?ないよね?僕が初めてかな!と次々と塵を混ぜ返し、もぎ取り、捏ね続けバラバラにしながら私を混ぜ続けている男は無邪気に笑う。
    部位ごとの意識を保持したまま肉体を分割できる薬だなんてどんな特殊性癖向けの道具なんだ全く。身体がボロボロの粘土になってしまったみたいだ。まとまるはずの身体がうまくまとまらない。わずかに粘り気をもった塵の塊を男は引きちぎり、組み合わせ、まとめあげる。もう何が何だかわからない。

    そういえば肝心のケチャップを頼み忘れた、と事務所を出て鼻歌を歌いながら出かけた矢先にガツン。目を覚ました時には何も見えないしそもそも目がどこにあるのかさえわからなかった。部位ごとに覚醒していく意識を自覚してようやく、あぁろくでもないことに巻き込まれたのだと気づいたときにはもう手遅れ。ああなんて不運なのだろう。

    再び肉体をおもう。三十分割以上された肉体を。常ならば死を迎えた時点で肉体の繋がりは途絶え、肉体の位置は定かではなくなる。または分割された個々ごとに意識が存在して、共有されている。しかしながら今のドラルクには己の肉体ごとに確かにここにあるという意識があった。右目が右目であることを主張する。私は小指、膵臓、胃、肋骨。基準はわからないけれど、個々の部位ごとの位置感覚をベースにした意識が保たれたまま死を迎え、塵の身体が己の居場所を主張をして戻れないまま迷子になっている。
    赤子がジグソーパズルをひっくり返したかのように無邪気に、愉快に断された肉体の意識がかき混ぜられる。意識のピースひとつひとつが元の場所に帰ろうともがいていたとしても瞳に足が生えているわけもなく。てんでばらばらな意識は帰る場所を失い続け、わかたれ、まとめられ、その繰り返し。親指が腸の中にある。喉が爪先にある。膝小僧が胸元に。
    きもちわるいきもちわるい。
    後は身体をあべこべにされ続ける不快感がドラルクのもうどこにあるのかわからない意識を犯し続けていた。体を内側から開かれて、啄まれた肉片を別の場所に詰め込んでいくような。
    ぐいっ、と男が散らばった体をかき集める。飛び散った体がまとめられてしまえばもう訳がわからない。足も手も耳も目も口も全てが混ざって一緒になってしまった。もうやめて、と懇願しようにも喉が心臓と一緒にあるからしゃべることなんてできやしない。
    右膝が掬われて、口づけをされる。そこは唇じゃないよ。わかっているのかわかっていないのか。私をかき混ぜ続ける男は宝物に触れるように何度も膝小僧にキスをした。キスをしても私が何も返さないから男は癇癪を起こしてまた私をぶちまけた。全部砂になっているからこの恐怖も意味なんてないのだけれど。
    飛び散る。撒き散らされる。
    私は私に戻ろうとするから、蠢く塵を見て戻るな戻るなと男は叫ぶ。
    泣いているのだろう。私の名前を呼びながら男は私をかき集めて、かき混ぜて、切り分けて、飛び散らせる行為を何度も何度も壊れた玩具のように繰り返している。

    どうしてこんなことになってしまったのだっけ。

    まぁ、でもきっと大丈夫。死に続けていても意識はある。私が私であるならば問題ない。それでも、わたしでよかった、と思うのは果たして傲慢なのだろうか。
    あの海と青空を閉じ込めた瞳がばらばらになる姿を私の右目は想う。そうならなくてよかった。場違いな不安を胸に右目は男に潰されまた砕けて飛び散った。


    かきあつめる
     ドラルクが死んでしまった。死んだ、という表現はドラルクの場合正しくないのかもしれない。元に戻らなくなった、と表現した方が正しいのかもしれない。作家様のくせに語彙が貧弱だとバカにする声が聞こえる。もちろん幻聴でありこれは俺の脳内ボイスレコーダーから再生したドラルク煽りボイスVol.36でしかない。悲しきかな、新録ボイスは更新されない。ある日箪笥の角に足をぶつけて、そのまま風に吹かれて飛んでいった。汚ねえそよ風だぜ新横浜の月と空に煌めくお砂様を見上げていたらついぞドラルクは戻ってこなかった。フットサルに行ったジョンもドラルクと一緒に姿をくらました。あっけない別れ。おかしいな、ここは新横浜だぞ。最期の言葉が「ろぎゃっ」だとは思わずしばらくは呆然として日々を過ごした。作り置きの食材は一週間以上前になくなっている。かれこれ一ヶ月近く、ドラルクは戻らない。退治と執筆活動を繰り返しながら一人の日常が何事もなく消費されていく。しかしどうやら、まだ間に合うかもしれないのだ。眉唾な噂話だが吸血鬼の塵を1/5集めると復活できるかもしれない、らしい。善は急げ。せめて「ろぎゃっ」の意味を知らねばならぬ。ロナルドは駆けずり回った。そしてロナルドは途方もなく疲れていた。1/5の具体的なイメージを掴むために吸血鬼たちに尋ねてみれば「4728473837488338粒あったけ?」「粒でいいのか?」「いや463828384838297粒だろ」「間違った数を伝えて混乱させてやる〜」「あれ?3638385848粒くらいじゃなかったっけ?」「ていうかおまえ何したいんだ?」何も参考にならなくて落ち込んだ。殺した後の塵の塊を何度も思い出して1/5のイメージを膨らましていくとまあ、だいたい、多分、新生児くらいの大きさなのだろうと結論づけて赤ちゃん一人分の砂を集めようと決意した。だがしかし、事を起こそうにもただの砂とクソ砂の塵の違いが全くわからない。吸血鬼の習性として塵同士はひかれあうというがそもそも元のドラルクの塵ただの砂の一粒に過ぎず、以上でも以下でもなく区別がつかない。少なくとも新横浜でヤツを殺さなかった場所はないから新横浜中を歩き回っていれば1/5くらい集まるのかもしれないと思い新横浜を歩き回っても変態吸血鬼か下等吸血鬼に出会うだけで塵の在処なんてこれっぽっちもわからなかった。一番ドラルクを殺した場所はどこだろう。そうしてはたと思いつく。そうだ、“ここ”だ!物置に突っ込まれた掃除機を片手に事務所の隅から隅まで、埃を吸い取っていく。
    「おまえにあいたい……」
    事務所のありとあらゆる埃を詰め込んでぱんぱんに膨れた掃除機のパックに向かって叫ぶ。1/5には決して届かない。多く見積もっても1/20程度。それでも望みは捨てたくなかった。縋り付くように名前を叫ぶ、必死にかき集めた塵の塊。だからそう、はやくいつもみたいに復活してみせろ。事務所の扉の側で掃除機を抱きしめる。
    「ただいまー!いやぁお爺様と突然の世界各国クソゲー一ヶ月耐久合宿!流石のドラドラちゃんもへとへとだ!!」「ヌイヌヌー!」背後から呑気な吸血鬼とアルマジロの声。一人と1匹の視線の先にはほこりまみれの掃除機を抱きしめる俺。「え、若造、掃除機さんと恋仲になられて?」「ヌ、ヌェ…?」盛大な勘違いに気づく俺。掃除機を抱える俺をすかさずスマホで激写するクソ砂。全身全霊三週間分の殺意を込めてフルスイング。つまるところ俺は、この三週間、怪奇!恐怖の砂集め退治人と化していたわけだった。怖い、怖すぎる。そして恥ずかしい。げらげらと指を刺してドラルクは笑い死にを繰り返している。もちろんドラルクは死んでなどいなかった。あの日空を舞う塵となったドラルクはこいつの爺さんに回収されそのままクソゲーレース直行だったのだという。「はいお土産」塵から右腕だけが実体化してどこからともなく、一体全体どこの国のメーカーかもわからない5つの顔を持った鮫がデカデカとプリントされているクソ映画のDVDを渡される。何でクソゲー合宿なのにクソ映画なんだよ、このクソまみれクソコンボおじさん。全開だった事務所の窓を閉め切って、抱えていた掃除機のパックをゴミ箱に投げ捨てて少しだけ泣いた。
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