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    ailout2

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    テッドくん+カナさん視点
    交わらない片思い
    カインさんお借りしてます!
    2021/8/7

    #WT

    intersection賑やかな食事時を過ぎ、酒飲みがだらだらと晩酌を続けている夕刻の「溺れる海豚亭」
    隅の席で酒も飲まずに指先でリンクパールを転がしている青年がいた

    「よぉテッド グラスが空だぞ 一杯飲むか〜?」
    「遠慮しとく 俺今忙しいんだ」

    酔っ払いの常連客に声を掛けられたテッドは誰がどう見ても忙しそうには見えず、むしろ暇を持て余しているようにすら見えた

    (前回…ウェドと会ったのいつだっけ…)

    しばらく会っていない
    ウェドと"そういう関係"になってからどれくらいだろう
    ウェドにとって、あってもなくてもいい関係という自覚はある
    だからこそ俺から誘って夜を過ごす
    又は依頼が一緒だった日そのまま、とか
    とにかく月に3回くらいはウェドと体を重ねていた

    それなのに、恐らく丸一月ウェドとシていない
    依頼が一緒になることはあった
    でも報告を済ますとウェドはひらりとすぐに居なくなってしまった

    勿論、俺からも誘った
    だけどなぜか何処となく戸惑いが見えて…
    断られはしなかったにしろ、適当に理由を作ってこちらから取り下げてしまった

    思い当たる節がない訳では無い
    ウェドは男女問わず「割り切った後腐れない関係」を好む

    …そう、バレてしまったのかもしれない
    俺が全然、割り切れてないって事

    いつからだろう
    ウェドの事を目で追うようになったのは
    いつからだろう
    ウェドと目が合うと胸の奥がざわつくようになったのは

    はぁ
    と溜息をもらしてリンクパールをもう一度手に取る
    連絡、してみようかな
    いや、でもこの違和感は恐らく的中している

    こんな事で思い悩むなんて乙女か俺は
    いっそ花占いでもしてみる?

    ウェドに何か求めている訳では無いんだ
    ウェドみたいな色男が俺の事を見てくれるなんて少しも期待してない
    ただ一緒にいる時間が欲しかった
    夜を過ごさなくてもいい
    今ここにウェドが現れて
    「一杯飲むか?」
    って晩酌に付き合ってくれるだけでいい

    会いたいな…

    ぼんやりと本音が口をついて出そうになる
    わかってる、体を重ねる以外の時間を想うこと、これ自体が割り切れてないってことくらい

    もう一度大きくため息をついてテーブルに突っ伏した

    「テッドちゃんなになに〜?元気ないじゃん」

    明るく快活な声と共に向かいの椅子にドカッと座る音がして顔を上げる

    「カイン〜〜…」

    鍛え上げられた肉体に明るい緑色の短髪の男は目が合うとニッと笑った
    ウェドと共通の友人と言えるのはこのカインだけだった
    とはいえ、こんな事を相談できるか?カインの事だ、きっと良かれと思って先走って何か余計なことをするだろう
    カインは真っ直ぐで面倒見はいいが、隠し事はできないタイプだった
    ウェドも俺も、カインのそういう所に信頼を置いているのだけど

    「わかったぜテッド 暇なんだろ!?」

    全然わかってない問いが飛んでくる

    「暇なら俺と遊ぼうぜ〜」

    いやだから暇じゃないって…と言いかけてはたと気が付く
    俺がちゃんと割り切れてるように見えれば問題ないんだ
    俺にとってもウェドとの関係は遊びだって思わせることが出来たら今の関係は保持できるはず

    こんな理由で…と少し良心が痛むものの、カインはウェドとは違うベクトルでセックスというものに対してフランクなタイプで、まるでスポーツのように好みの相手と汗をかくことを楽しむ男だった
    そんな彼だから"一緒に遊ぶ"のは何も今回が初めてではない

    「…カイン そうだね…俺で良かったら今から"遊ぶ"?」

    含みを持たせるようにカインの手にそっと触れて誘いを掛けると先程まで人畜無害そのものという顔をしていた男の目にギラリと熱がこもる

    フェロモンが香り立つというのはこういう事なんだろうか
    思わずゴクリと喉が鳴る

    「マジ? 珍しいなテッドちゃんがヤる気なの」
    「ちょっとね、溜まってるのかも」
    「ヒュー!いいね朝まで付き合ってやるよ」
    「いやそれは遠慮しとく…カイン激しいし…」

    軽口を叩きながら席を立ち宿屋のカウンターへ足を運ぶと間の悪いことにウェドが女性を連れて海豚亭に入ってきた
    バチリと目が合う

    (なんで今なんだよ…!)

    テッドは苦虫を噛み潰す
    いや、でもいい、好都合だ
    俺にとってウェドだけじゃないって、ウェドが特別な訳じゃないって思い込ませることが目的なんだから
    …ウェドだって、連絡ひとつ寄越さないくせに、今日はその子なの?
    東方系の女の子なんてリムサではあまり見かけないのに、やっぱりウェドはモテるんだ

    「お?ウェドじゃん おーぃ…
    「待ってカイン!!」
    「お?」
    「は、早く行こうよ!俺我慢できない!」

    ウェドはこちらに気が付いてる
    それだけでいい ここでカインがウェドに声を掛けたらややこしくなりそうだ…

    ぐいっとカインの腕に手を絡め宿屋に入っていく

    〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎

    「ウェド 今の いいの?」

    ふわふわとした髪をひとつに結んで東方の着物を着た華奢な"青年"が問いかける
    その青年の隣に立つ褐色の美丈夫は少し沈黙すると

    「何がだい?」

    と素っ気ない素振りをした

    「全然良くなさそう」
    「君なぁ」
    「だって、今の人探しにここに来たんでしょ」
    「それは…そうだが…連れはカインだった 知ってるやつだよ だから…」
    「…だから?」
    「だから………身に危険はない 安心だろ?」
    「はぁ」

    暖簾に腕押しとはこの事
    少し話を聞き齧っただけの僕から見ても事は明白なのに
    どうやら当人たちにはもう少し時間が必要なようだ

    ウェドは自分の変化に戸惑っている
    先程宿屋に消えていった金髪の青年、テッドさんがウェドに変化を与えてくれた人らしい

    ウェドが珍しく難しい顔をして唸っているから、どうしたのかと聞いてみれば連絡を飛ばすか否かで小一時間迷っていると言う
    最近はずっと"そう"らしい
    何かとテッドさんが気になってしまうらしく

    "テッドは危なっかしいから目が離せない、しかし世話を焼きすぎているかもしれない"

    と、わかりやす過ぎる建前を本人は本気でそう思い込んでテッドさんと少し距離を取ろうとしているらしい

    焦れったいにも程がある
    話を聞くと、もう丸一月まともに顔を合わせていないと言うものだから、思わず連れ出してきてしまった
    顔を見ればきっと気持ちが舵を取ってくれる
    リンクパールよりは良いだろうと思ったのだけどどうやら間が悪かったようだ

    ウェドはまた難しい顔をしている
    恐らく今の気持ちにも建前や言い訳を付けているのだろう

    「…ウェドが悪いんだからね」
    「突然なんだよ カナ」
    「いい?近いうちに絶対あの人に会いに行くように!」
    「…わかった、わかったよ 明日会いに行くよ」


    ─翌日

    「本当に間の悪い人だな君は…」

    帰ってくるなり部屋の隅で頭を抱えているウェド
    どうやら断られたらしい
    ウェドが自分から誰かを情事に誘った事が無いことは僕も知っている
    本当に用事があり断られた様だけど、まさか初めてで挫かれるとは

    「はぁ、やってしまった…」

    リムサ・ロミンサの数多の女性を虜にするウェドがこんなに小さくなっている所は滅多に見られない

    「大体、なんで代わりに別の日の約束取ってこなかったんだい」
    「…頭になかったんだよ」

    これだから相手に困らない男というのは…

    しかし、昨晩テッドさんが他の人と過ごした事はあまり気にしていないらしい
    きっと、少しも妬きもちが無いわけではないと思うけどウェドにとって体を重ねる行為は必ずしも愛情を要するものではない故に鈍感なのだろう

    ファンファン…ファンファン…

    突然聞きなれた音が響いた リンクパールだ
    僕のじゃない
    ウェドがパッと顔を上げるとリンクパールを耳元に近付ける

    「…やぁテッド その、さっきは…」
    『…あの!ウェドあのね…その…俺、明日なら…いつでも空いてる…から…その…!』
    「ああ、俺も空いてる…君に会いに行ってもいいかい?」

    通話先のテッドさんの声が弾んで大きいものだから、会話が聞こえてしまう
    甘酸っぱい会話を盗み聞きしてしまったようで少しバツが悪いが、どうやら上手く行きそうだ

    ウェドは自分には幸せになる権利がないと自ら扉を閉ざしてしまっている
    僕にはそばに居てあげることくらいしか出来ないけれど、
    どうか不器用な彼らの行く末が
    晴れ渡った空のようにどこまでも自由なものでありますようにと願わずにはいられなかった
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