ゆびわのぼうけん ある朝、のんびりやのにわとりさんは手を洗うためにいつもはそのままにしている大切なゆびわをはずしました。横におこうとしたときに
ころん
あらあら、ゆびわはころがっていきました。
ころころ ころころ
それを見てあわてたにわとりさんは、まてまて。ゆびわ、まてまて。そう言いながらおいかけました。ゆびわは大ぼうけんだといさましく、あっちへころころ。こっちへころころころがっていきます。
にわとりさんは、その大きなからだで小さなゆびわをおいかけます。手をのばしても、ゆびわはころころころがあるばかり。へやを出て、ろうかをころがりまたへやにとびだしていきます。
あぁ、これいじょうはそとに出てしまう。それだけはだめだとあわてるにわとりさん。うびわはうれしそうにころころ、ころころはずむようにころがります。だめだ。にわとりさんがかなしそうに声をあげたしゅんかん、ゆびわは何かにぶつかってころん。床にたおれてしまいました。
どうした
そう声をかけたのは、にわとりさんにゆびわをプレゼントしたひとでした。にわとりさんはあわててたおれたゆびわをひろいます。
ゆびわがころがって、つかまえられなかった。ありがとう。
大切なゆびわをにぎりしめたにわとりさんは、安心したように笑いました。
ゆびわの大ぼうけんをしらないひとは、ふぅんといってにわとりさんのゆびわをつまむと、にわとりさんの指にすっとおちつかせました。
悪くならないから、ずっとつけておけよ
そういって笑うと、にわとりさんを抱きしめてちゅっとキスをしました。にわとりさんは、うん。とうなずいてうれしそうにしています。
ゆびわは少しつまらなそうですが、にわとりさんの指にいるのも好きなのでぼうけんはまたこんどにしようと思いました。
おそと、またね
そうゆびわはとじられるドアの向こうのけしきにはなしかけました。おそとはそれにこたえるように、
さわさわ、さわさわ
おへんじをしてくれました。ゆびわはそれをきいて、まんぞくそうににわとりさんの指におちつきました。
のんびりやのにわとりさんが、いつまたうっかりしてしまうのか。それはまたこんどのおはなし。