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    スクランパーピアスと猗窩煉

    ■現パロ

    #猗窩煉

     目が覚めたら、同居人に牙が生えていた。

    「まだ寝ているのか、カビるぞ。」
     しっかりと習慣付いた腹式呼吸。張りのある芯の通った声。
     おはよう、と寝癖頭に響くには大きすぎるその声にどうにかして重たい目蓋を押し上げる。
     室内に差し込む陽光以上に目がくらむのは、その姿が目を焼くくらいに眩しいからか、陽が天辺へ向かうまで寝過ごしたからか、寝惚けたままでは判断できない。
     直ぐにでも再び癒着しそうな目蓋を引き離すため、目を擦る。
     太陽のように眩しい姿、声量の割りに小振りな口元に、きらりと光る異物があった。

    「なんだそれ。」
    「は?」
    「それ、なに。」
    「水果茶。」

     右手に持った赤色の半透明なプラスチックのコップ。返事の通りパッケージには果茶とロゴタイプで飾られている。胸の位置から顔の高さまで移す手の動きに合わせて、半分ほど飲みすすめている茶が揺れて、底の方に沈んだ黄色い果物が揺れる。
     ベッドに縫い付けられたように起き上がれないまま、その所作を見届ける。
     のらりくらりとわざと明言を避ける態度が気に入らない。
     要領を得ない返事のたびに、きらきらと輝く異物が唇から零れるように覗いて見えて、神経を逆撫でる。

    「差し歯か?」
    「ピアスだ。」

     杏寿郎の重みで、ベッドのスプリングが沈む。
     小振りな唇を歪め、前歯を剥く顔は威嚇のようであり、玩具を自慢する子供のようでもあった。
     無垢な笑顔に似付かわしくない、きらきらと牙のように尖ったシルバーのピアスが光る。

    「お前は本当に、体に穴を開けるのが好きだな。」

     飢えて飛び掛かるにしては緩慢な様子で、毛繕いをするにしては眼光鋭く、牙を覗かせたままの獣が覆い被さる。
     手に持ったプラスチックカップを傾けない理性だけはしっかりと残したまま、御自慢の牙を押し付けられると、芳醇なフルーツの香りとそれの後を追い掛けて爽やかなジャスミンティーの気配がした。


    「落書きが好きな君と、お似合いだと思わないか?」
    「俺が勝手に増やすと、文句を言うくせに。」
    「知らない男の前で裸になるのが気に入らないだけだ。」
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