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    猗窩煉ワンドロ
    ■現パロ
    ■美味しい銘菓を食べるふたり

    #猗窩煉

    第27回「六花」「贈り物」「無理矢理」 小さな缶を挟んで、少しの問答を繰り返す二人。

    「すこしだけ」
    「断る」
    「試しに、」
    「断ると言っている」
    「ちょっとだけなら」
    「くどいぞ、杏寿郎」

     なんど推しても響かない猗窩座の態度に、杏寿郎の声が徐々に大きく主張を強めていく。声量だけで靡いているようでは、煉獄杏寿郎との暮らしを続けていくのは困難だろう、食い下がる杏寿郎に対して一切主張を変えるつもりのない猗窩座はこれ以上は話しを聞かないと言いたげに手の平を向けて言葉を遮る。

    「君、俺には無理やりにでも勧めてくる癖に、自分は断固拒否だなんて勝手な奴だな」
    「無理に勧めたことなんてない」
    「ある」
    「覚えがないな」

     「六花のしずく」と印字された缶のパッケージには、ぬくもりが伝わるような花々の絵があしらわれている。からからと、飴のような甘味を口の中で転がす杏寿郎は武骨な指先でその缶の表面を撫でる。未だに、拒まれ続けていることが腑に落ちないようで、その表情は不満気で、とても甘味を頬張るときのものとして相応しくない。

    「独り占めしてしまうのは勿体ないくらいうまいんだ」
    「そう思える奴だけが楽しむべきだろう」
    「そういうものか」
    「そういうものだ」
    「じゃあ、独り占めにしてしまうからな」

     儚く崩れてしまいそうな菓子を持ち上げる手、血の巡りがよく薄紅色に彩られた桜貝の爪、そして丁寧に手入れされ切り揃えられた爪先。
     薄い黄色に彩られた、すり硝子のような美しい一粒が杏寿郎の口元へ運ばれていく。銘菓をよそに、その所作ひとつひとつ、呼吸までも見逃すまいと視線を注ぐ瞳も、美しい琥珀色をしていた。
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