「おやすみ、KK」
一人で歩くのにも慣れた。
右手と右頬の傷は消えないけど。
このまま消えないでいてほしい、と願っている。
消えてしまったらあの人のことを忘れてしまいそうだから。
あのとき。消えないで、行かないでと願うことは出来ただろうか。
日に日に薄くなっていく傷跡を鏡で確認する。あの人の声も段々記憶から薄れていく。
この世とあの世の境目はどこにあるんだろう。
手のひらの傷跡。もう一度声を聞かせてくれよ。
────じゃあ喋らせてもらうけどな。
え?KK?
────お前、最近辛気臭いぞ。
あのエンディングだよ?多少辛気臭くもなるよ
────もっとこう…幸せな感じにしててくれないと…オレが成仏できないだろ
…ごめん
────お前が謝ることじゃねぇよ、暁人
…
────ってことだからそっち戻るわ
…は?
────嫌か?
…嫌じゃない
────タバコ用意しといてくれ
…それは嫌
────鳥居の所で待ってろ
…ありがとう
「おかえり、KK」