深夜の居酒屋事情「おう、まだやってるだろ」
そんなぞんざいな物言いで暖簾を潜った男の顔を見て留三郎は嫌な顔になった。
よりによって何かとぶつかり合う同輩が閉店間際に来店すればそりゃあ変な顔の一つや二つするだろう。
「てめぇもんじ、なにしに来やがった」
漸く最後の客も捌け、これから店仕舞いをしようという時のこれである。勿論、これで冷やかし等と言おうものならボッコボコに叩きのめすのは太陽が東から昇ることと同レベルの常識なので敢えて口にはしないでおく。
「分かるだろ、酒と飯」
日本酒1合、今季のやつ辛口で…と要望を口にし、此方の返事を聞く前に何故か持参していたスーパーの袋を漁り始めた。取り出したのはなんと青銀の肌艷やかな鯖が2匹。その他にも出来合いの白和えやら金平まででてくる始末。おい、お前ここを何だと思っている。
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