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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    Ⅰの頃の両片思いクロリン/夏の暑さのせい

    「ファーストキスって、本当にレモンの味がするんですか」
    「なんだよ。さっきの鵜呑みにすんな。ゼリカが言ったことだぞ」
     学生会館の階段を降りるリィンは心ここに在らずだった。先ほど生徒会室でアンゼリカから聞かされた話を反芻しているのだろう。
    「クロウ先輩のファーストキスは、どうでしたか」
     降り途中の階段で、足を止めたリィンがこちらを見下ろしていた。踏み込んだ質問だと自覚があるらしい。夏服の半袖から伸びた腕をしきりにさすっている。
    「それについてはコメントを控えさせて貰うぜ」
     汗ばんだ頸を拭う。口のなかで飴玉が転がり、カロ、と軽い音を立てた。爽やかな酸味が広がる。
     お節介なアンゼリカに押し付けられたレモン味の飴だ。素敵に演出してあげるといい、だなんてお節介でポケットにねじ込まれた飴だ。それを素直に口へ放り込んでいるのもどうかしている。
     夏の暑さのせいだ。
     また、飴玉が転がる。
    「なあ、ファーストキスの味。本当に知りたいか」
     クロウの問いかけにリィンは胸元のシャツを握り、戸惑いながらも頷いた。
     降りた階段をふたたび上がる。彼とのあいだにあった段差が埋まった。
     一段下から背伸びして唇を押し付ける。強ばる唇を舌先で割りひらき、レモン味の舌を差し込んだ。逃げそうになる彼の後頭部を手のひらで捉えた。
     自制が効かない。彼の咥内を好き勝手に舐めしゃぶり、滴る甘露を嚥下する。クロウの肩においた、縋ってくる両手に目を細めた。
     最後にクロウの口内にあった飴玉を彼へ押しやり唇を離す。まだ口のなかには飴玉の味が残っている。図らずも、クロウのファーストキスもレモンの味となった。
    「で、感想は」
    「……飴玉、レモン、味の」
     上がった息でこちらを睨む彼は、手の甲で口元を覆っている。
    「な。ちゃんとレモンの味がしただろ」
     なんでもない顔でふたたび階段を降りていく。未来でリィンとは袂を分かつ身で、彼に触れるつもりなんてなかった。
     全て夏の暑さのせいだ。
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