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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    両片想いクロリン/創から数年後/好きだけど言えなくて

    「なあ、リィン。好きだ」
     射抜くような目だった。不意打ちの告白に硬直する。飲みかけのグラスを包む手を、上から覆ったクロウの手が熱い。
     クロウとふたり、リィンの自室で酒瓶を空けていただけだった。旅に出たクロウから知らない地方の話を聞き、リィンは今世話をしている生徒の話をする。彼の持ち込んだ酒瓶がなくなれば終わり。今日もそうなるはずだった。
    「――すまない」
     腹の底から沸き上がった歓喜を飲み込んだ。嘘を吐いた手前、彼の真摯な目は見返せない。
    「それがお前の答えか」
    「ああ」
     覆っていた彼の手が離れていく。リィンより少し高い体温がなくなったそこが寂しい。追いかけそうになった手でグラスを強く掴んだ。
     分かったと一言残した彼はリィンの前から去っていった。
    「クロウはもう、会いに来ないかも知れないな」
     微苦笑がこぼれる。振っておきながら勝手な言い草だ。今の心地よい距離に甘え、二の足を踏んでしまったのだ。
     彼のグラスにはまだ酒が残っていた。
     それからひとり、残った酒をひたすら煽った。
    「おそようだな、リィン。珍しく酒が残ってる顔してるぞ」
     物音に目を覚ますと、相変わらずの事後ノックをしたクロウがそこに立っていた。瞬きをしても彼の姿は消えない。
     昨夜、ひとりになってから飲みに飲んだリィンは、いつの間にかベッドで寝てしまったようだった。
     起き上がった身体は重く、頭を動かすだけで頭痛を覚えた。こぼれたため息が酒気を帯びていて眉間にしわが寄る。
    「ク……、ロウ? なんで。だって、昨日」
    「あのなあ。俺がいつ、ハイ、諦めましたなんて言ったんだよ。お前が好きだ。そこは変わらないからな。ほれ、とりあえず粥でも食べとけ」
     クロウの持ってきた白粥が差し出される。おずおず手を伸ばし、ひと口食べた。ほどよい塩気が酒焼けした喉にはありがたい。
    「昨日は不意打ちで悪かったが、いい機会だ。俺も覚悟決めたんだ。お前もそろそろ覚悟決めやがれ」
     するりと頬を撫でるクロウの手にぐ、と喉の詰まらせるのだった。
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