筋の浮いた首に、指を這わす。柔らかな白い皮膚の下、脈が蠢く感触がする。命が動く感触に陶然としながら、髭切はうっとりと溜め息をつく。
愛しい弟は今、髭切の腕の中にいる。壁にもたれかかる髭切の胸に耳を押し当てるようにして体を預けている状態だ。どうにも弟を抱き締めたくて引き寄せた結果が、これだ。重いであろう、邪魔であろう、そう言って逃げようとする弟を己の腕で力任せに戒めた。
しばらくはこわばったままの体であったが、次第に力が抜けていった。当然だ、膝丸は兄が大好きなのだから。しっかりものの弟でいようとすると同時に、兄に甘えたくて仕方がないことを、髭切はちゃんと知っている。だからこうして抱っこしていれば、少々時間はかかって、身を任せてくれるのだ。
すべらせるようにして、首から背中へとたなごころを移動させる。弟のまがい物の心の臓が、一生懸命働いている。お兄ちゃんに抱き締められているせいで、だいぶ忙しそうだ。それが可愛くて含み笑うと、腕の中の膝丸もくすくすと笑った。随分と力が抜けてきているようだ、喜ばしい。
どうしたのと耳の後ろをくすぐりながら問いかければ、もぞもぞと動いてこちらを上目遣いに見つめてくる。
「兄者の心の臓がな、鼓動がとても早くて、」
俺とお揃いだ。それが嬉しい。頬を赤く染めながら言う様の、なんと愛らしいことか。
だのに、弟はやはり恥ずかしい言わなければ良かったと兄の胸に顔を埋めて隠してしまう。
ああ何とも悩ましい。
このまま可愛い弟を、ぎゅうぎゅう抱き締め続けるか。それとも無理やり上向かせて
額に口づけてやろうか。
ああ、何とも愛しくて悩ましい。
終