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    lunaarc

    @lunaarc

    完成したものとか完成していないものとか(文章のみ)の予定です

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    lunaarc

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    「藍縁奇縁」「藍別離苦のその先で」に関わるSSの2つ目、のつもりで書いたけどあってもなくてもいいような気がしてきた。
    タイトルは2って書いてるけど、手直しするか後日まとめには入れない可能性あり。

    藍にまつわるひとかけら その2「……なあ目玉」
    「ん?なんじゃ?」
    「楽しいか?」
    おんぶ紐で背負った鬼太郎の頭の上から注がれる視線があまりにも熱心なものだから、小鍋の中身の出来上がりを確認しコンロの火を止めた水木はつい尋ねてしまった。
    「楽しいぞ。いくつになっても学びは大事じゃからのう」
    「学びねえ…」
    水木が作っているのは鬼太郎に与える重湯だ。学びが必要なほど複雑な手順などないというのに、と思い、ああと納得する。
    一緒に暮らしているとはいえ赤の他人が作ったものだ。口では学びと言っているが、赤子に害はないか父親として心配しているのだろう。
    もちろん水木もそうならないよう気をつけているが、目玉の心配も尤もなので口を挟まないことにした。
    「ふむ…煮炊いて終わりというわけではないのじゃな」
    「赤ん坊に米粒はまだ早いからな。ざるで漉して、汁だけを与えるんだ。ちゃんと人肌まで冷ましてやらねえと」
    「人肌…」
    肩に軽い感触。それが移動したかと思えば、不意に水木の首にぺたりと何かが触れ。
    「ひっ!?」
    「ううむ……これが人肌か?些か熱い気もするのじゃが…」
    「ば、かお前、いきなり触るな!」
    真面目な口調に勢いを削がれなければそのまま目玉を肩から叩き落とすところだった。
    跳ねる鼓動に深呼吸を繰り返しながら、水木は自己嫌悪に陥る。
    「すまぬ、驚かせてしもうたのう」
    「…いきなりはやめてくれ。手元が狂ったらどうするんだ」
    ──その手があいつのものだったら。
    そう、一瞬でも思ってしまった己の浅ましさを恥じるように、作業を再開した。


    どんなに名残惜しくとも、夢である以上目覚めの時は来てしまう。
    気だるげな身体を白い胸に預けその冷たさに浸りながら、水木はふと呟いた。
    「……もし俺が、このままずっとここにいたいって言ったら」
    お前はどうする?
    そう尋ねる声は、自然と小さくなっていった。
    好いた男と二人きり。夢の中でずっと一緒にいられるなら、どんなに幸福だろう。
    うら若き乙女じゃあるまいしなんて笑い飛ばすには少しだけ、ほんの少しだけ、心が弱っていることは否定できない。
    目玉と鬼太郎と過ごす時間は仕事で疲れ時にささくれ立った心を癒してくれるには十分のはずで、それでも寂しいと思ってしまうのはただの自分勝手な我儘だ。
    記憶が戻ったと正直に話せば。心の奥に閉じ込めている想いを曝け出してしまえば。
    水木が身体を預けている白い胸がなくとも、満たされる毎日を送っていたのかもしれない。
    けれど、それは絶対にありえないし、あってはならない。
    胸を掻きむしりたくなるほどの寂寞にこの先ずっと苦しむのだとしても、この事実も想いも表に出してはならないのだから。
    「…冗談だ、気にするな」
    見上げると、案の定男は困ったような表情でこちらを見つめていた。
    そりゃあそうだ。男に笑いかけながら、口には出さず自嘲する。
    夢だというのに、男は水木の言動に時に現実味を帯びた反応をする。どうせならとことん都合のいいように動いてくれればいいものをなんて考えてしまうのと同時に、本物のあいつならきっとこうするなんて確信もあった。
    忘れるなということなのだろう。
    この景色も、このぬくもりも、現実では叶いもしないまやかしなのだと。
    「ゲゲ郎…」
    目が覚める前にもう一度と、男の頬に手を当てて口づけをねだる。
    応えてくれる仕草に安堵しながら、心の中で水木は思った。

    この男は優しい。
    優しいからこそ、残酷だ。
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    lunaarc

    DONE「藍縁奇縁」「藍別離苦のその先で」に関わるSSをいくつか書こうと考えてて、そのうちの一つができた(あとで修正するかもしれない)のでいったんここに載せます
    以前ポイピクに載せた父と母の会話から、目玉の父が頼った医者との会話

    父水だけど水は不在
    何でも許せる方向け

    他の話も書けたらまとめて支部かXfolioに載せたい
    藍にまつわるひとかけら その1小さな体を打つ雨粒の痛みも、徐々に近づく雷鳴の大音声も、意識することなくただただ前へ進み続けた。
    そうして見上げた先の光景を、己は生涯忘れることはないだろう。



    瞼を開けると、男は真白い場所にいた。
    霧に囲まれているのかと思ったが、湿度を帯びた空気も草木のにおいも、生き物の息遣いも、何も感じない。無機質ともとれる白だけがどこを見渡しても広がっている。
    そもそも男は、友の下宿先でつい先程眠りについたばかりのはずだ。
    とすると、ここは。
    「夢の中か…?」
    思わず呟いて、気づく。発せられた男の声は近頃だいぶ聞きなれてきた子供のような甲高さではなく、低く落ち着いたそれだった。
    ある時を境に失った、男の本来の声だ。
    見下ろす目に映る体もそうだ。持ち上げた両の掌も、肉体を包む次縹の着流しも、足にぴたりと収まる下駄も。懐かしいとすら思える感覚に、男は小さく苦笑した。
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    lunaarc

    MOURNINGバレンタインで失恋して部屋を出たら晴信さんに会って、察せられて泣いちゃったところを追いかけてきた(タケルに言われて)伊織が目撃する伊ぐだ♀
    …のつもりで書いてたんだけどたぶん最後まで書ききれないと思うのでここまで。

    伊織いないけど伊ぐだ。晴信とぐだ子は×じゃなくて+(兄妹みたいな感じ)
    サムレムはコラボしか知らない+第一部と1.5部ちょっとしかやってない知識量のマスターです
    どうやって部屋に戻ったんだろう。腕いっぱいに抱えた仏像を棚に並べて、立香はしばし立ち尽くす。
    わかってはいた。一緒に駆け抜けた偽の盈月の儀の最中、ことあるごとに、傍で見てきた。
    片方が記憶を失っていても、あの二人の絆は強固なものであると。その間にぽっと出のマスターが割り込むなんてもっての外だと。わかっていても。
    「……はぁ…」
    それでもやっぱり、寂しい。
    そのやりとりを微笑ましいと思っていたのは確かだ。戦闘時には抜身の刃の化身のような鋭さを持つ青年の雰囲気が、彼の相棒が一緒だと柔らかく変化していく。それを見ているだけで十分だと、最初はそう思っていた。
    ただのマスターとサーヴァント。その垣根を超えるような接触をしてきた者は他にもいた。けれど立香はそれでもマスターでいられた。一人の人間としてではなく、サーヴァント全員のマスターとして。そうあることが自分の存在価値なのだと割り切っていたからだ。
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