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    takami180

    @takami180
    ご覧いただきありがとうございます。
    曦澄のみです。

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    takami180

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    曦澄ワンドロワンライ
    第六回お題「願い事」

    恋人関係曦澄、それぞれの願い事。
    ラスト、下からみんなに見守られてます。

    #曦澄

     ――とうとう姑蘇藍氏の宗主が嫁を取るのだって。
     巷間に噂が行き交うようになったのは数日前のことだった。
     おそらく姑蘇から広がったその噂はあっという間に雲夢にまでやってきた。町の人々はおかしく話し合い、額を突き合わせては相手は誰かと言い合った。
     当然、その噂は雲夢江氏の宗主の耳にも届いた。
     江澄は鼻で笑っただけだった。

     ところが、江澄が噂を耳にしたその数日後、姑蘇からはるばる客がやってきた。
     その客は天子笑の甕を揺らして、「飲もうぜ」と江澄の私室に上がり込んだ。
    「何故、お前が来る。含光君はどうした」
    「藍湛はお留守番。いいから、いいから」
    「天子笑はひと甕だけか。足りぬだろう。次はもっと持ってこい」
    「雲夢の酒が飲みたいんだよ。これはお前の分。俺はいつも飲んでるからな」
     江澄は遠慮せずに天子笑を盃に注いだ。
     魏無羨は相変わらず甕の口から直接酒を飲む。
     しばらくは二人ともが無言であった。落花生の殻がただ積まれていく。
    「なあ、噂なんて気にするなよ」
     だしぬけに魏無羨が言った。
    「気にしていない」
    「嘘だね。じゃあ、なんで、沢蕪君に別れようなんて文を出したんだ」
    「あのひとはそんなことをお前に話したのか」
    「沼地の底に沈んだみたいな顔色の人を放っておけないだろ」
     想像はたやすい。江澄は唇だけで笑った。
     噂はどうであれ、藍曦臣が妻を求めたのは事実である。そのことで藍啓仁と揉めていると、藍家の師弟が金凌にこぼしたのを聞いたのだ。
     情を交わすだけでなく、心まで預けていると思っていたのは自分だけだった。
    「噂ではないからだ」
    「誰かに聞いたのか」
    「そんなところだ。俺は障りにしかならん」
     盃の中で揺れる姑蘇の酒には、実に情けない顔が映った。
     いつかこうなることはわかっていた。わかっていて手を伸ばした。いまさらだと自分をあざわらっても表情は変わらない。
    「そんなことないだろ、ちゃんと話し合ったほうがいい」
    「嫁取りで忙しい相手と話し合いなどできるわけないだろう」
    「だから、嫁取りなんかじゃないんだって」
     魏無羨は苛立ちを隠さずに甕を床にたたきつけるようにして置いた。
    「お前、そうやって思い込んだら頑固なのは昔っからだけど、こんなときくらい素直になれよ。だいたい、どうして別れ話になるんだ。嫁取りの話が出たんなら、ぶん殴るくらいしろよ」
     江澄は天子笑を含んだが、眉を寄せた。うまくない。
    「江澄、なあ」
    「魏無羨」
     さえぎられて、魏無羨は口をつぐんだ。雲夢の酒をあおって、落花生を二つばかり口に放る。
    「俺が願っているのはあの人の幸せなんだ」
    「だからって」
    「あの人が幸せであるなら、俺がいる必要はない」
     今度こそ、魏無羨は返事を失った。江澄はだまったまま、天子笑が空になるまで、ただ酒を飲み続けた。
     途中でこめかみのあたりが痛くなったが、それでも飲むのをやめることはできなかった。
     酔っているだけだ。
     酔っているから目頭が熱いのだ。
     魏無羨は江澄の隣に座って、その頭をなでた。江澄が眠るまで、そうして二人で酒を飲み続けた。


     翌朝、江澄は痛む頭を押さえつつ、魏無羨を見送りに桟橋まで出ていた。
     白い校服の男は、江澄と同じく額に手を当てる魏無羨をさっと抱き上げた。
    「そういうことは姑蘇に帰ってからやれ」
    「あなたの指図は受けない」
    「だったらとっとと失せろ」
     言われなくとも、と返事があるはずだった。藍忘機と江澄とのいつものやり取りならそうなるはずだった。
     しかし、藍忘機はじっと江澄を見つめて、何故か頭を下げた。
    「兄上を頼む」
    「は?」
     江澄がその言葉を理解するより先に風が舞った。
     ものすごい勢いで上空から降りてきた藍曦臣は、江澄をさらうようにして朔月の上に抱え上げた。
    「藍渙!」
    「少し、時間をいただきます」
     藍曦臣は抗議を聞かず、再び青い空へと戻る。
     江澄はしかたなく藍曦臣の腰に抱き着いた。死にたいわけではない。
    「藍渙、蓮花塢からは出るなよ」
    「わかりました。では、ここで」
    「ここで?」
     藍曦臣は朔月を止めた。止めたところで、空の上である。蓮花塢の上空である。
     藍家宗主ほどの仙師となれば、御剣の術もある程度の時間を保っていられるとはいえ、わざわざこんなところで浮いている必要はない。
     しかし、藍曦臣は「あなたと二人で話がしたい」と下りようとしない。
    「下りたらあなたは逃げるでしょう」
     江澄は視線をそらした。否定できるだけの自信はなかった。
    「先日、いただいた文ですが」
    「そういうことだ。下ろせ」
    「いやです。私は承諾していません」
    「承諾だと? あなたは嫁を取るのだろう」
    「取りません。どうしてそのような話になったのか、私自身、不思議なのです」
     藍曦臣は江澄の頬に手を添えて、無理に視線を合わせた。
     それだけで視界がにじんだ。
     だから、会わずに済ませようとしていたのに。
    「江澄、よく、聞いてください」
    「いやだ」
    「聞いて、お願いだから」
     足元で朔月が震えている。藍曦臣の仙力が揺れているのだ。
    「私が叔父に話したのは、道侶を迎えたいという話です」
    「つまり、妻を迎えるのだろう」
     江澄は全力で藍曦臣の胸を押し返した。落ちた時は落ちた時だ。こんな話は聞きたくない。
    「だから、俺は」
    「あなたと道侶になりたい」
     すべての音が消えた。江澄は足元を見たまま動けなくなった。
    「私の道侶になってください」
     藍曦臣の腕が、やさしく江澄の体を引き寄せる。
     再び腕の中に戻り、江澄は目を瞬いた。風に乗って、しずくがはらはらと舞い落ちる。
    「俺は、あなたが、幸せに、なるならと」
    「私の願いはあなたひとりです。あなたがいてくれるなら他はいらない」
     それで、藍啓仁と折り合いがつけられないのだと藍曦臣は語った。
    「今、叔父上とは話し合っている最中です。私は宗主を後進に譲ります」
    「なにを、言っている」
    「あなた以上に大切なものを持てなくなってしまった。これでは宗主は続けられませんから」
     江澄は呆然として、さわやかに微笑む男を見上げた。
     抹額が、朝の光を浴びて、その白さが際立っている。
     開いた口がふさがらない江澄に、藍曦臣はちょんと口づける。
    「返事を聞かせて、江澄」
     江澄は白い衣に顔を埋めた。
     とんでもないことを言われている。すぐに返事などできるわけがない。
     そのはずなのに。
    「いいだろう」
     口は勝手に動いて、気持ちを音にした。
     藍曦臣の腕に力がこもる。体が痛むくらいに強く。
    「俺の願いは、あなたの幸福だから」
     抹額の端が揺れている。
     蓮花塢の風が通り過ぎていった。
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    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

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    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

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    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337

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    sgm

    DONE現代AU
    ツイスターゲームをしようとする付き合い立て曦澄。
     確かに、藍曦臣があげた項目の中に「これ」はあった。そして自分もしたことがないと確かに頷いた。
     ただ、あまりその時は話を聞けていなかったのだ。仕方がないだろう?
     付き合い始めて一か月と少し。手は握るが、キスは付き合う前に事故でしたきりでそれ以上のことはしていない。そんな状態で、泊まりで家に誘われたのだ。色々と意識がとんでも仕方がないではないか。もしもきちんと理解していれば、あの時断ったはずだ。十日前の自分を殴りたい。
     江澄は目の前に広がる光景に対して、胸中で自分自身に言い訳をする。
     いっそ手の込んだ、藍曦臣によるからかいだと思いたい。
     なんならドッキリと称して隣の部屋から恥知らず共が躍り出てきてもいい。むしろその方が怒りを奴らに向けられる。期待を込めて閉まった扉を睨みつけた。
     だが、藍曦臣が江澄を揶揄することもないし、隣の部屋に人が隠れている気配だってない。いたって本気なのだ、この人は。
     江澄は深いため息とともに額に手を当てる。
     「馬鹿なのか?」と怒鳴ればいいのだろうが、準備をしている藍曦臣があまりにも楽しそうで、金凌の幼い頃を思い出してしまうし、なんなら金凌の愛犬が、 4757

    takami180

    PROGRESSたぶん長編になる曦澄その6
    兄上が目覚める話
     粥をひとさじすくう。
     それを口に運ぶ。
     米の甘味が舌を包む。
     藍曦臣は粥の器をまじまじと見つめた。おいしかった。久しぶりに粥をおいしいと感じた。
     添えられた胡瓜も食べられた。しゃりしゃりとしている。
     包子も口にできた。蓮の実の包子は初めてだった。さすがに量が多くて大変だったが、どうにか食べ切りたいと頑張った。
     食事を終えて、藍曦臣は卓子の上、空の器をながめた。
     たった三日で人はこれほど変わるものなのだろうか。
     首を傾げて、ふと気が付いた。
     そういえば、阿瑶は。
     あれほど、いつも共にあった金光瑶の影がない。目をつむっても、耳を澄ませても、彼の気配は戻ってこない。
     騒々しい町の音だけが藍曦臣を取り巻いている。
    「阿瑶」
     返事はない。当然である。
     藍曦臣は静かに涙を落とした。
     失ったのだ。
     ようやく、彼を。
    「阿瑶……」
     幻影はなく、声も浮かばず、思い出せるのはかつての日々だけである。
     二人で茶を楽しんだ。花を見た。幼かった金宗主をあやしたこともあった。
     そこに江宗主がいることも多かった。
     今やありありと目に浮かぶのは彼の顔だ。
     喜怒哀楽、感情を素直 2851

    sgm

    DONEお野菜AU。
    雲夢はれんこんの国だけど、江澄はお芋を育てる力が強くてそれがコンプレックスでっていう設定。
    お野菜AU:出会い 藍渙が初めてその踊りを見たのは彼が九つの年だ。叔父に連れられ蓮茎の国である雲夢へと訪れた時だった。ちょうど暑くなり始め、雲夢自慢の蓮池に緑の立葉が増え始めた五月の終わり頃だ。蓮茎の植え付けがひと段落し、今年の豊作を願って雲夢の幼い公主と公子が蓮花湖の真ん中に作られた四角い舞台の上で踊る。南瓜の国である姑蘇でも豊作を願うが、舞ではなくて楽であったため、知見を広げるためにも、と藍渙は叔父に連れてこられた。
     舞台の上で軽快な音楽に合わせて自分とさほど年の変わらない江公主と弟と同じ年か一つか二つ下に見える江公子がヒラリヒラリと舞う姿に目を奪われた。特に幼い藍渙の心を奪ったのは公主ではなく公子だった。
     江公主は蓮茎の葉や花を現した衣を着て、江公子は甘藷の葉や花を金糸で刺繍された紫の衣を着ていた。蓮茎の国では代々江家の子は蓮茎を司るが、なぜか江公子は蓮茎を育てる力よりも甘藷を育てる力が強いと聞く。故に、甘藷を模した衣なのだろう。その紫の衣は江公子によく似合っていた。床すれすれの長さで背中で蝶結びにされた黄色い帯は小さく跳ねるのにあわせてふわりふわりと可憐に揺れる。胸元を彩る赤い帯もやはり蝶のようで、甘藷の花の蜜を求めにやってきた蝶にも見えた。紫色をした甘藷の花は実を結ぶことが出来なくなった際に咲くというから、藍渙は実物をまだ見たことないが、きっと公子のように可憐なのだろうと幼心に思った。
    2006