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    takami180

    @takami180
    ご覧いただきありがとうございます。
    曦澄のみです。

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    takami180

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    恋綴3-3(旧続々長編曦澄)
    うーさぎうさぎ(羨哥哥が出ます)

    #曦澄

     藍曦臣の長い指が、江澄の頬をなでる。
     顎をくすぐり、のどぼとけをたどり、鎖骨の間をとおって、袷に指がかかる。
    「やめてくれ!」
     しかし、藍曦臣の手は止まらなかった。
     無常にも袷は開かれ、傷跡があらわになる。
     温氏につけられた傷は凹凸をつくり、肌をゆがめていた。
    「見るな!」
     江澄は両手で胸を隠したが、遅かった。
     藍曦臣の目が見開かれて、柳眉がひそめられる。
     汚らしい、と聞こえた気がした。

     江澄は飛び起きた。
     跳ねのけたらしい掛布が足元で丸まっている。
     ここは宿だ。姑蘇の宿である。
     江澄は清談会に出席するための旅の途中であった。
    (またか)
     長大なため息がもれた。
     同じような夢を見るのは何度目になるだろう。今日はもう雲深不知処に到着するというのに。
     胸に手を当てる。
     傷痕は変わらずにここにある。
     最後に藍曦臣と会った後、江澄はあらゆる傷薬を取り寄せた。古傷を消すような軟膏を求めて、文献をあさった。
     しかしながら、都合のいい薬種は見つからず、今に至る。
    「宗主、お目覚めですか」
     扉の向こう側から師弟の声がした。少々寝坊をしたか。
    「起きた。すぐに行く」
     手早く身なりを整えて階下に下りる。
     向かう先は雲深不知処だが、目的は清談会である。藍宗主の閉関が明けて、一年後の主催である。
     藍曦臣が江澄にかまう余裕はないはずだ。
    (まだ、大丈夫だ)
     かなうならば蔵書閣でも文献を調べたい。藍氏は江澄を下にも置かない待遇で迎えてくれるから、頼めば入らせてもらえるだろう。
     そのために清談会の後にも二日ほど逗留できるように調整してきた。
     宿屋を出れば、雲深不知処の山が見える。
     傷痕のことはさておき、藍曦臣に久しぶりに会えるのは純粋に楽しみだった。


     山門では藍曦臣と藍忘機がそろって客を出迎えていた。
     さすがに魏無羨の姿は見えない。
    「江宗主、お久しぶりですね」
    「藍宗主、お招きいただきありがとうございます」
     二人は拱手して、笑顔を交わした。
     ついで江澄は藍忘機にも頭を下げる。
    「含光君、お久しぶりです」
    「江宗主、ご健勝のようでなによりです」
     江澄は少し驚いた。藍忘機は相変わらずの表情だが、あいさつの言葉があるとは思っていなかった。彼も少し変わった。
    「まずは客坊へ。ご案内いたします」
    「はい、ご案内いたします」
     知っている顔が二人いた。彼らの先導で雲深不知処を歩く。ところが、客坊へと向かう途中で、片方が道を折れた。
    「おい、客坊じゃないのか」
    「申し訳ありません。宗主から頼まれておりまして、江宗主はこちらへ」
     そこで江澄は師弟たちと別れた。
     雲深不知処の内のことだ。危険はない。
     どこへ向かうのかと思えば、ついた場所は沢だった。
    「江澄!」
     うさぎである。うさぎが大量にくつろいでいる。その中央に黒いうさぎがしゃがみこんでいる。手を振って、人の名を呼ぼうとあれはうさぎに違いない。
    「うさぎだな」
    「えー、俺ってそんなにかわいいか」
    「気色悪いことを言うな」
    「江澄がうさぎだって言ったんだろ」
     江澄は現実逃避を諦めて、魏無羨に向き合った。案内役はいつのまにか去っている。
    「久しぶりだな」
    「お前は相変わらずだな」
    「ああ、変わらないよ」
     何も変わらない。今は、変わりようがない。
     雲深不知処に馴染み違和感がない。
     江澄はうさぎを一羽、腕に抱えた。
    「それでなんだ」
    「なに?」
    「用があるんじゃないのか?」
    「ああ、そうそう。聞きたいことがあって」
     うさぎはふわふわしていて手触りがいい。おまけにあたたかい。
    「沢蕪君とどうなったかなって」
     江澄の口元がひきつった。魏無羨はうさぎを二羽も抱いて、江澄を見ている。
    「あれからお前は一度も来ないし、沢蕪君も雲夢へ行ってる様子はないし。忙しいのは知ってるけど、もしかしてうまくいかなかったか? でも、それにしては沢蕪君が落ち込んでないんだよな」
    「うるさい」
    「お、ってことはうまくいったんだな。おめでとう、江澄」
    「なんでそうなる」
     江澄もしゃがみこんで、うさぎをもう一羽抱き込んだ。
     うまくいったが、うまくはいっていない。藍曦臣の気持ちに応えられていない。
    「ふーん、でも、まあ、あの人ならお前をひどい目にはあわせないだろうし、俺はいいと思うんだよな」
     江澄はうさぎの背に顔を埋めた。うさぎは嫌がって、江澄の腕から逃げていく。もう片方も、それを追って地面に降りてしまった。
    「あーあ、やさしくしてやんなきゃ」
     藍曦臣からはやさしくしてもらっている。だけど、江澄はとてもではないがやさしくできている自信はない。
     このままだと藍曦臣もいなくなってしまうだろう。
     江澄は自分のひざに顔を伏せた。
    「おい、そんなに落ち込まなくても」
    「魏無羨、薬を探してるんだ」
     やさしくしてもらった分は返したい。藍曦臣の望みに応えたいとは思っている。
    「薬ってどんな?」
    「古い傷痕を治す」
    「古い傷? って、ああ、そういう」
     江澄は顔が上げられない。
     これは魏無羨が勝手に納得しているだけで、自分は何も理由を言っていない。だから、気にする必要はない。なんのためとか、わかるわけがない。
     江澄が必死で言い訳を並べ立てていると、魏無羨から「悪いけど」という返事があった。
    「心当たりはないな」
    「そうか」
    「なあ、江澄」
     顔を上げると、うさぎを放した手に肩をたたかれた。
    「沢蕪君はやさしいだろう?」
     まるで知っているかのような口ぶりが気に入らない。江澄は鼻で笑った。
    「お前になにがわかる」
    「藍湛の兄さんだってことはわかる」
    「意味がわからん」
    「俺はすっごく大切にされてるからさ」
    「だからなんだ」
    「お前も大切にしてもらうわっ」
     江澄は手を振り払って立ち上がった。魏無羨はうさぎの中でひっくり返っていたが、それに背を向けて客坊へと向かう。
     まったく、余計な世話である。
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    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

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    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
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     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
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    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337

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    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

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