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    wave_sumi

    いろいろなげすてる。最近の推しはなんかそういったかんじ
    性癖が特殊。性転換が性癖

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    wave_sumi

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    3.見知らぬ傷だらけの男性について 37.5%「輝利哉様、傷だらけの男性に心当たりは」
    「傷……? 顔に傷があるのであれば、それはきっとサネミだね」
     さねみ。初めて聞いたその名を、アオイは心の中で復唱した。さねみ。
    「そう、シナズガワ・サネミ。昔から産屋敷に仕えていてね、彼は韋駄天のような素早さで、私たちのために駆け回ってくれていたよ。そうか、アオイはサネミに会ったんだね。元気そうだったかい」
     にこり。柔和で穏やかに、全く毒気なく笑った輝利哉に、アオイは安心した。ふえ、とか、ふあ、とか、変な声が漏れていたかもしれない。いけない、高校生なのに。こんなだらしないところを見せてしまっては。でも、止まらない。
    「き、輝利哉さまあ、わたし、怖くて……ッ、っく、あんな、あさ、カナエ様が、おおきな、鶴の翼を引きずって・・・・・・・・・いく所、っ、みて……ッ」
     ぐすぐすとアオイの目から涙がこぼれる。恐怖が堰を切って溢れ出しているのだ。敬愛する本家の長男が、異常者であった落胆。見知らぬ男に脅される絶望。この世の中は、思った以上に女の子が生きづらいものなのかもしれない。
     わ、と膝にすがってきたアオイの頭をやさしく撫でる。近くにあったティッシュを渡して、ぐずぐずと泣き続けるアオイが落ち着くまで、輝利哉はそうしていた。
     泣き声が落ち着いたころ、輝利哉は語り始めた。
    「アオイ、私は今から信じられないことを話すが、そのまま聞いてほしい」
     はい。しゃくりあげた声で、アオイは座をただした。
    「先ずは……そうだね。この屋敷には、神様になる前の怪異がふたり、暮らしているんだ」
    「……怪異?」
     化け物だよ。輝利哉はつづけた。
    「その昔、産屋敷家は鬼……現代の吸血鬼みたいなものと対峙していてね。鬼を滅するために、部隊を組織し、剣の腕が立つ者たちを育てていた。その中でも、とびぬけて腕の立つ隊員を『柱』と名付けていたんだ。鬼を殺すには、自然を応用した剣技を使っていてね。炎・水・風・岩・雷を剣術の基礎としてとり入れていたんだ。ただし、この剣技……彼らは呼吸と呼んでいたのだけれど、これには弱点があった。
     呼吸を使いすぎると、自然と一体になってしまう……元々、そこまで至れる人間がいなかったから、この問題は現代にいたるまで発覚しなかった」
     鬼をたおす。自然と一体になる。SFのような話を、アオイは呑み込めずにいる。のみこめずにいるが、現実として受け取らなくてはならない。素直さがアオイの取り柄だ。情報を吸収して、自分なりに消化していく。
    「怪異になった柱は二人、ギユウとサネミだ。ギユウは水の呼吸から魚に、サネミは風の呼吸から鳥になって、大池と裏山に棲んでいる」
     住んでいる。魚と、鳥の怪異が。この屋敷に。どうして。いや、疑問は捨てよう。まずはここに、怪異がいる。それを呑み込んだ。
    「アオイが見たのは鳥の怪異・サネミだよ。強面だけど、彼はとても優しい」
     穏やかに笑って、輝利哉は続けた。

    「サネミについて知りたければ、【  】を訪ねるといい」
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