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    wave_sumi

    いろいろなげすてる。最近の推しはなんかそういったかんじ
    性癖が特殊。性転換が性癖

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    wave_sumi

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    人魚への質問:3.人魚と次兄の関係 50%(2/3)「僕と彼女の関係ですか。見てのとおりですよ」
     それがわからないから聞いているのだ。アオイは重い息を吐いた。茶碗の中に残った抹茶は、何も動いていない。ああもう。どーしてですか。この兄さんはああいえばこう言う。暖簾に腕押し・糠に釘。聞きたいことのかけらもくれないから、こちらの想像で補うしかない。
    「冨岡、さま……で、よろしいでしょうか」
     アオイがあきれたように人魚の名を呼ぶ。少し、きょとんとした人魚の表情が崩れた。くすりと笑ったように見える。たわんだ毛先から、水分が体にぽたりと流れている。
     ――目に毒だ。
     ついているものは同じなのに、何だろう。見てはいけないものを見ているような、そんな気になってしまう。
    「構わない」
     人魚から、承諾を得た。ふ、と息を吐いて、疑問を一気にぶつける。
    「見ての通り、では一向にわかりません。しのぶ兄さまはもっと私に説明をすべきです。まずは冨岡様。あなたはこの屋敷の怪異だと伺っています。それは間違いありませんね?
     ――では、しのぶ兄さま。兄さまは、怪異の冨岡様とどういったご関係ですか。別家とはいえ、私も産屋敷に連なる身分です。知る権利はあると思いますが」
     ざざっと早口でまくしたてる。疑問を全てたたき出して。アオイは息を吐いた。
     綺麗な秋空の乾燥した空気が流れていく。すっきりとした晴れ。何の疑問も抱くことなく快晴である。天気とは裏腹に、アオイの心は疑問だらけだ。紅葉はとうに過ぎ去り、周囲の木々からは葉が落ちこぼれて、シンプルな枝の形が見えている。
    「そうだな、私から」
     ぽたぽたと水をたらしながら、人魚が説明を買って出た。それを、しのぶが制す。
    「いえ、僕が説明します。冨岡さんの説明は……その、誤解を生むので」
     しのぶが二人の間に座り、アオイの前から茶碗を引く。お待ちください。亭主の言葉をそっくりなぞって、一度水屋へ引き上げる。
     人魚とアオイの不思議な二人が縁に残った。アオイは人魚をじっと見つめ、人魚は中空をぼうっと見ている。どこを見ているのかわからない人魚を、アオイはまじまじと観察した。怪異、言ってしまえば怪異だが、輝利哉さまの話を整理するに、元は人間だったらしい。
     人間であった頃も、相当な美人だっただろう。無機質な美人に、化け物の要素が加わることで、ミステリアスな魅力を醸し出している。自然に対する畏怖のような、信仰のようなものを抱きかけてすらいる。
     すい、と。アオイの前にコーヒーが出される。人魚のほうにも茶碗が一つ。ぬるま湯が入っているようだ。しのぶは自らのマグカップを持ち、アオイの隣に坐した。
    「何から説明しましょうね……輝利哉様から聞いた通り、冨岡さんは元人間の人魚です。特殊な呼吸を使いすぎて、この姿になりました。産屋敷にはもうお一方、不死川さんという鶴の亜人がいます。冨岡さんとは同僚だったようです」
     そこまで説明して、しのぶは自らのコーヒーを啜った。アオイも、それを真似て一口いただく。とけこんだ和三盆の甘みが、舌に広がっていった。
    「僕は幼いころこの池に落ちて、死にかけました。そこを救ってくださったのが冨岡さんです。それ以来、ちょくちょくここで会うようになりまして、お話などをして今に至ります」
    「死にかけた、んですか?」
    「ええ。うっかり落ちて、うっかり溺れたそうです」
     にこ、と笑ってしのぶは言った。アオイは情報を処理しきれずにいる。いや、そもそもしのぶが溺れたなど初耳だ。大池の茶室を気に入っているという理由は、この人魚に会うためだったのか。そして、しのぶが人魚を見つめる視線が、なんだか熱を帯びているような気がする。人間味のない次兄が、まさかこんなところで人間性を発揮するとは。
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