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    wave_sumi

    いろいろなげすてる。最近の推しはなんかそういったかんじ
    性癖が特殊。性転換が性癖

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    wave_sumi

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    3.おはぎをつくる(1/3) あれは、アドバイスだったのだろうか。自室に引き上げたアオイは、昔ながらの石油ストーブに火を灯した。
     耐震消火装置セットのつまみを下げ、調整ツマミをぐるぐる回す。小窓を開けて、点火レバーをぐいと押し込めば、炎がぼわりと燃え広がった。本家から戻る際に冷え切った指先を、炎で温めた。
    「あ」
     ふと思い出し、台所に上がって水を入れたヤカンを持ち出す。熱くなったストーブの上に置いて二十度に満たない水が温まるのをじっと待つ。指先がもう一度、熱くなった。
     かじかむ指先を回復させ、アオイはスマートフォンを手に取った。おはぎ、レシピ。ああそうか。あんこを炊くところからか。
     用意するものは、小豆・グラニュー糖・もち米・塩・水。シンプルなレシピに目を通しながら、手順を組み立てる。
     小豆とグラニュー糖で餡をつくる。もち米でおはぎをつくる。おはぎを餡で包んでできあがり。なるほど。
     内心ふむふむと頷いて、工程を計算した。小豆、ある。もち米、ある。正月前なので、大体の材料は揃っていた。あとは時間だ。もうすぐ土日だ。今が木曜日だから……今夜、小豆を晒しておいて、金曜の夜から作り始めよう。
     そうと決まればアオイの行動は早かった。小豆ともち米と、グラニュー糖をそれぞれ三百グラムづつ。これで二十個分のおはぎができあがるらしい。
     一度試してみるべきだろうか。いや、とりあえず作ってみよう。小豆を水に晒すべきかそうでないかを一晩考えて、二時間煮ればよいという文献を見つけた。

    「ご免下さい」
     いらっしゃい、寒いねえ。何にするんだい。老婆が一人で営んでいる雑貨屋に足を踏み入れ(ここのお婆さんとアオイは、仲が良かった)おはぎを作りたいことを告げる。
    「おやおや、それじゃあ小豆ともち米だねえ。アオイちゃん、北海道のいい小豆も入っているんだよ」
    「いい小豆、それは美味しそうですね……ですが、お供えものなので」
     おや、そうかい。老婆がすこし残念そうな顔をするので、アオイは経緯を説明した。産屋敷の本家に、鳥を祀っている神社があって、そこの神様へおはぎをお供えするのです。
    「風柱様の神社かい」
     老婆の目が、細く開く。その雰囲気に気おされながら、アオイは頷いた。たしか、カゼバシラが鳥になって、ミズバシラが魚になった、はずだ。カゼバシラは、シナズガワさん。脳内で情報を整理しながら、アオイは呼吸を戻した。
    「あの神社なら、この砂糖を使うといい」
    「わかり、ました」
     言われるままに雑貨屋の老婆からおはぎの材料を買い取った。おすすめだからと言って、お代はすこしまけてくれた。わけもわからぬまま、アオイは素材を受け取る。
    「よろしくお伝えください」
     はい。と返したような気もする。そうでない気もする。狐につままれたような気がしつつ、アオイは帰宅して、早速材料を量った。
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