6番目が本命「もしかしてセックス以外の恋人らしい事してないの!?」
マスターの指摘にビーマは無言でうなだれた。
マイルームでふたりきりだとはいえ、これほどあけすけな事を言ってもマスターは許される。
何故ならドゥリーヨダナとビーマが付き合う時カルデア中を巻き込んだ大騒ぎになったからだ。その時死ぬほど苦労したマスターにはふたりの恋路を知る権利があった。
ビーマはぽつりぽつりと告白する。
彼らが付き合う事になってから、もう1ヶ月。ふたりで夜を過ごす事はあってもそれ以外の触れ合いは、全く無い。と。
「仕方ないなー」
さらさらとマスターが紙に1〜6までの番号を振る。
「これにビーマさんがドゥリーヨダナさんと『恋人として』やりたいことを6個書いて。そしてドゥリーヨダナさんにサイコロを振らせればいいよ」
サイコロが出した数字の『恋人らしい事』をすればいいと提案するマスターにビーマは眉を寄せた。
「あいつはイカサマするだろ?」
「イカサマさせるの。選ばせてあげれば乗ってくれるでしょ?」
それならば勝てる勝負が大好きなドゥリーヨダナにこちらの要求を飲ませる事が出来る。
サーヴァント使いの上手いマスターはそう言ってビーマをマイルームから追い出した。
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「で、その紙がこれか?」
寝室でビーマから番号を振られた紙を受け取ったドゥリーヨダナはつまらなさそうに紙を振った。
「おまえはわし様にそんな振る舞いを求めておらんだろう」
「……読んでくれ」
押し殺したビーマの声にドゥリーヨダナは眉を寄せて無遠慮にその内容を読み上げる。
「1・手を繋ぐこと。──子供の真似事でもしろというのか」
幼気な要求に呆れてドゥリーヨダナは先を読み進める。
「2・デートにいくこと。──まあ恋人の定番ではあるな」
次の項目を読んだドゥリーヨダナの片眉が跳ねる。
「3・キスをすること。──しているではないか?」
「分かってんだろ。ああいうのじゃねぇ」
ああいうキスを思い返してしまったドゥリーヨダナが口を閉ざす。何かを払うかのように軽く頭を振ってドゥリーヨダナは先を続けた。
「4・一緒に食事をすること──おまえが作るのではなく、か?」
「俺が作った料理をおまえだけが食べるのではなく、俺と一緒に食べて欲しい」
ビーマの真っ直ぐな視線にドゥリーヨダナは口の端を上げた。
「わし様はまた毒を盛るかもしれんぞ?」
「今はしねぇだろ」
断言されてドゥリーヨダナは拗ねたように鼻を鳴らした。
「5・ハグをすること。……おまえは本当にこれがしたいのか?」
戸惑った声にビーマは無言で強く頷いた。ドゥリーヨダナが手に持っている紙が小さく震える。
「…っ! 6・好きだと言ってくれ」
紙がくしゃりと握りつぶされた。俯いたドゥリーヨダナの表情はビーマには見えないが、肩が細かく震えているのは分かる。
ビーマはその肩に手を置いた。
「決めるのはサイコロだ。……お前じゃない」
見え透いた逃げ道に背中を押されて、ドゥリーヨダナの手に望んだ出目が出せるイカサマサイコロが現れた。