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    没ネタ 添楓
    いただいたお題で書いてたんですが、あまりにも迷走して自分で意味わからないのと解釈不一致でお蔵入りです。

     俺が部屋を割り当てられた時、3枚の額縁に目がいった。少し癖のある形をしていたものの、親が写真家ということもあり、自分のフォルダにはたくさんの写真が保存されいた。他の荷解きも終わっていないのに、直ぐに厳選を始める。
     だいぶ時間を費やして選りすぐった渾身の3枚を額縁へ入れていく。3枚目の額縁を外して、おや?と思った。壁に指先が嵌るくらいの小さな凹みがあったのだ。誘われるように人差し指をちょこと乗せて少しだけ力を込めれば、ガコッという音が鳴り響く。
    「わっ!」
     脊髄反射で引っ込めた指をもう片方の手で包み、警戒心丸出しで件の凹みを覗き込む。しかし注視すべきはそこではなかった。額縁のあった場所が1センチほど奥へ入っていったかと思うと、勝手に横にスライドされる。それはまさに映画で見た隠し扉と言われるもののようで、開いた壁の先には何かを仕舞う為の棚が設置されていた。
    「貴重品とかを補完できる、ってことかな?それにしてもこんなギミックがホテルに設置されてるだなんて...」
     大人になった今でもこういったギミックには心が躍る。わくわくとした気持ちを胸に何を置こうかと考えるも、人に隠したいものがあまり思い浮かばない。昔では現金などを入れておく場所として重宝されていたのだろうが、現代では基本的に電子マネーが普及されている為、隠しておくほどの現金を手元に置いていないのだ。
    「そうだ!」
     それこそ隠すほどのものではないが、未だ他の人に話していない事がある。ほかに入れるものもないので、以前から集めていたソレらを隠し扉の先に並べて眺めてみれば、更に"秘密"というワードが浮かぶような特殊な雰囲気を醸し出す空間となった。
    (あれ、そう言えばこれどうやって閉めるんだろ?)
     棚の中をくまなく探してもそれらしいものは見つからず、取り敢えず開いた時と同様に凹みに指を入れて力を入れてみる。再度、ガコッという音を立てて扉が閉じた。
     閉まった扉の上に額縁を掛けてよくよく眺めても、やはりそこに例の棚があるとは誰も思わないだろう。何だかいけないことをしている気分になって、小さい頃に作った秘密基地を思い出した。そうして冷めやらぬ興奮を抱いたまま続きの荷解きを続けた。

     そんなことがあり、何回も人を招いたこの部屋で未だ誰にも知られていない棚に、新たなコレクションが追加された。そこに並べられている本のタイトルには『細身の筋肉だって魅力的』『面倒を見たくなる男子の攻略法』『友情を超えてその先へ』『友情と同性愛の違い』『包容力のある男性を堕とすには』などが並んでいる。
     俺、浜咲楓の言えていない事、それは同性愛者だということだ。昨今では当たり前となってきた恋愛観だが、昔の同性愛というものはなかなかに壁が厚かったらしい。その名残か、未だ大っぴらげに言えない人も居るそうだが、それでも外を歩けば男同士、女同士のカップルが手をつないだりデートをする姿もちらほらと見かける。世間の同性愛者に対する雰囲気はそんな感じだ。
     そんな俺だけど、過去に同性の恋人がいたことはない。この様に雑誌を購入していて、それを他人に話す機会がなかったことで、いつの間にか秘め事の1つとなっていた。
     元々、恋愛対象が女性だった俺は、海外への旅行先で運命的な出会いを果たすこととなった。薄暗いライトが照らす雰囲気のあるバーで現地の男性に話しかけられたのだが、一夜限りの花を咲かせたいと誘いを申し込まれたのだ。その場では断ったものの男同士で付き合ったり、夜の営みについてだったりを事細かに話された。男性と解散してホテルに戻るやいなや、先ほどの説明をもとに同姓でのお付き合いというものをもっと詳細に調べてみた。元来、気になることは放っておけない性分だったのだ。
     結果、逞しい筋肉や包容力のある男性像であったり、男性に対しての魅力を十二分に記載したネット記事を見てズブズブと沼へ引きずり込まれたのである。そこで初めて自分が包容力や自分を支えてくれるような、しかし少しお世話したい感じがある男性が恋愛対象としての理想像なのだと気付いた。
     そこから自分の理想をもっと勉強し、具体的にイメージさせるために本を購入したわけだ。今時電子書籍というものがありながら紙媒体を選んだのは購入履歴や人に端末を貸した際に本を購入したのがバレないためである。こう考えればもしかしたら内心で他人に隠したい事実となっていたのかもしれない。
     
     ふーっと息を吐いて開いていた隠し扉を閉めていた時、自室の扉がコンコンとノックされた。
    「はーい!ちょ、ちょっと待ってね!今開けまーす!」
     バタバタと額を戻し、扉へ向かう。ガチャリと音を立て開いた扉の先に居たのは添だった。手には練牙くんに付けてもらっている週報のテープが握られている。
    「どーも。これ、主任に渡して欲しいって言われて持ってきました~。あ、もちろん練牙さんからで」
    「ありがとう!そういえば、練牙くんも可不可も忙しいのかな?体調崩さないといいんだけど...」
    「なんでも今度のツアーのことで少しだけ話したいから来てほしい~ってことで呼ばれたみたいですけど...雰囲気的にそんな大層なことじゃなさそうですし、大丈夫じゃないですかね〜?」
    「そっか…そうだよね。2人とも自分のこと管理できないわけじゃないんだし、うん!添くん、ありがとう!」
     それじゃあと解散の流れになったその時、添が部屋の一点を見つめて、あれ?と声を出す。つられて視線の先を見やると、そこには斜めになっている額縁があった。
    「主任、あれ」
    「あ!えっと…しゃ、写真変えようとしたからその時にちゃんと掛け損ねたのかなぁ?」
     あくせくと両の手を動かして何とか話を終わらせるために扉に手を掛けた。「それじゃあ、また明日!」と言う自分の声と添の呼び止める声が重なって部屋の扉が閉まる。
     一息ついて、取り敢えず斜めに掛かった額縁を元に戻す。綺麗に掛けられた3枚の写真を眺め、何だかいな予感がすると思った。

    「ゔわぁ〜〜…今日もやる事多かったなぁ…え?」
     次の日も多忙を極めて終業。自室の鍵穴に鍵を差し込んだところでふと気づく。空いている。
     閉め忘れたかな?と扉を開けて絶句した。
     何故か部屋にいた添が、例の額縁が外れた壁にある凹みを凝視しているのだ。
    「え、え…添くん!?え!なんで!?鍵は!?」
    「お、しゅにーん。お疲れ様で〜す。鍵開いてましたよー」
     こちらに気付いて能天気にヒラヒラと手を振る添に開いた口が塞がらない。
    「ところでこの凹み何ですかね〜?」
     迷う事なく動いた添の指が凹みを軽く押した。俺の口からは声にならない叫びが発せられた。聞き慣れた音と共に扉が開く。前に躍り出て隠してみたが、身長差でそれも叶わない。棚の中を一通り眺めた添がこちらを向く。
    「へぇ、主任ってこーゆーのが好きなんだ」
    「いや、うん、好きなんだけど…隠そうってわけじゃ、あー、隠したいのかな、うーん」
     予期せぬタイミングでバレてしまったそれに、しどろもどろになりながら言葉を紡ぐも、あまり意味を成していない。相変わらず何を考えているのか分からない表情を浮かべて此方を見てくる。その目を数秒見つめていれば、不思議と気持ちが落ち着いてきた。
    「お察しの通り、恋愛対象が男性なんだけど…。一応同じハウスに住んでる以上、そういう目で見られてるかもってみんなが不安になったり、居心地悪くなっちゃうかな。って無意識に考えてたんだと思う」
    「はは、それ言ったら多方面が傷つくから言わない方がいいですよ~」
    「?」
     話していて自分の気持ちが分かってきた。そうだったんだと納得した反面、添の言葉には理解が追いつかなかった。なぜ多方面が傷付くのか。
    「あ!もしかして、皆んなを信頼してないってことになっちゃうのかな!?」
    「あー、そうなっちゃうんだ…因みに俺も傷つきます」
     そう言ってにじり寄ってくる添に自然と足が後ろへ下がる。
     「この本を見る限り、主任のタイプは面倒見たくなる様な性格だけど包容力があって、細身で筋肉質、ってところですか?おや~?しゅにーん、俺って主任のタイプに当てはまる気がしませんか?」
    「...はっ!た、確かに!」
    「はは、気付いてなかったんだ。どう?俺、結構優良物件じゃない?」
    「いや~、でも添くんは包容力とはちょっと違うような...長期的な包容力がいいな、俺は」
     考える為に逸らしていた目線を上げれば、いつの間にか詰められた距離。目の前にある添の顔。伸ばされた手がこちらに伸びて、動揺して乱れていた髪を撫で付ける。
    「俺は、本気になった相手には一途ですよ?好きな人には構ってほしいし、好きな人は絶対守ります。ね?楓さんの理想のタイプだよね。そうでしょ?」
    「あっ…うん、そう、だね…」
     先程までの軽口を言い合える雰囲気はどこへ行ったのか。眼前に迫った添の瞳が獲物を逃すまいと覗きこんでくる。目がぐるぐると回る感覚に脚がガクガクと震えた。
    (添くんのこと、好きってことなのかな?好き?好みのタイプが被っただけで…?)
    「主任。この本、本当にそれだけで買いました?他のは以前からでしょうけど、コレとコレとコレは最近買ってますよね?」
    『細身の筋肉だって魅力的』『面倒を見たくなる男子の攻略法』『包容力のある男性を堕とすには』の3冊を指さして目を細める。
    (添くんは俺より俺を分かっているのかもしれない…)
     未だ迷いがあった沢山の柵が目の前の男が示す導きに従えば全て取れるのではないかと錯覚する。いつの間にか震えは止まり、目の前の頬に指先を這わす。
    「添くんは全部知ってるの?」
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    Replies from the creator

    salmon__blue

    TRAINING添楓
    台詞お題「へぇ、主任ってこーゆーのが好きなんだ」で、書かせていただきました!
    台詞だけで大変興奮した…🤤
    途中迷走してる感あるのはお許しください🙇
    照らされた真実 光源が一瞬で現れてそれぞれの姿を明るみにしていく。それでも皆一点を見つめるばかりで晒された正体を目撃するものはほとんど居ない。例えそこに居るはずの者がいなくても、隣に誰が居ても、隣の者が何をしていても、知る者はごく僅か……。


     日本の夏の風物詩といえば、と問われればかなりの確率で声が上がるだろう『花火』。そんな花火をHAMAツアーズが見逃すわけもなく、夏の集客にはこれ!と企画を持ち出してきた社長の一存でイベント内に組み込まれることが決まったのだ。
    「うわ〜!花火かぁ!楽しみだなー...あ、勿論おもてなし優先だけど!俺たちも一緒に楽しめるといいね!」
     花火と言えば祭り、と言う事でHAMAの有名な神社の縁日に合わせて企画している。今回は地域イベントの提案という形となるため、HAMAツアーズが率先して作業するというよりはサポートに回る形となる。当日も作業はあるが、存在が広く周知されている区長たちは完全に裏方で、当日やることはあまりない。主任やコンダクターはもう少し仕事がありそうだが、それでも常時より時間があるみたいだ。
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