テレビジョン 闇に慣れた瞳を信じ、ぺたぺたとリビングを徘徊する。
少しだけ冷えた床が、連日の猛暑で汗ばんだ身体を冷ます。目的地まで辿り着き、ゆっくりと持ち上げたマグカップに水道水を注ぎ込んだ。
目一杯に張った水が波打ちシンクに落ちていくことも気にせず、大きく喉を鳴らして体内へ流し込んだ。
ふぅ、と息を吐いてコップを置く。再び訪れた静寂に意識が落ち着いていくのを感じる。
「こわい夢、だったのかな……」
俺は、先まで見ていたであろう夢を思い出していた。しかし、どうしても場面的にしか出てこない。
鼓動を速める程の内容も、少し経っただけでここまで忘れてしまうとは。
忘れてしまったのであれば考える必要もあるまい、まして悪い夢だったのなら。
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