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    添楓
    台詞お題「へぇ、主任ってこーゆーのが好きなんだ」で、書かせていただきました!
    台詞だけで大変興奮した…🤤
    途中迷走してる感あるのはお許しください🙇

    #添楓

    照らされた真実 光源が一瞬で現れてそれぞれの姿を明るみにしていく。それでも皆一点を見つめるばかりで晒された正体を目撃するものはほとんど居ない。例えそこに居るはずの者がいなくても、隣に誰が居ても、隣の者が何をしていても、知る者はごく僅か……。


     日本の夏の風物詩といえば、と問われればかなりの確率で声が上がるだろう『花火』。そんな花火をHAMAツアーズが見逃すわけもなく、夏の集客にはこれ!と企画を持ち出してきた社長の一存でイベント内に組み込まれることが決まったのだ。
    「うわ〜!花火かぁ!楽しみだなー...あ、勿論おもてなし優先だけど!俺たちも一緒に楽しめるといいね!」
     花火と言えば祭り、と言う事でHAMAの有名な神社の縁日に合わせて企画している。今回は地域イベントの提案という形となるため、HAMAツアーズが率先して作業するというよりはサポートに回る形となる。当日も作業はあるが、存在が広く周知されている区長たちは完全に裏方で、当日やることはあまりない。主任やコンダクターはもう少し仕事がありそうだが、それでも常時より時間があるみたいだ。
    「そのためには当日までのサポートをちゃんと滞りなくやってのけないとね」
     既に当日に思いを馳せて目を輝かせる主任を見て社長が俄然やる気を見せたように思える。正直サボれそうな内容でラッキーって感じに思っていたから、俺も少しだけテンションが上がっていた。

    「あ、添くん!」
     会議後にパタパタとこちらへ駆けてくる主任の方を向く。以前までは接し方が分からないと言った雰囲気を纏っていたが、今では懐いた子猫の様だ。子犬にも見えるが、今でも時たまに警戒した眼差しで見てくることもあるから子猫で間違いない。主任がこうなり始めた時のことをふと思い出す。
     幾度かに渡り銭湯に誘い失敗に終わっていたある日、主任と2人きり、且つ共に明日は休みという絶好の機会が訪れた。
    「いい銭湯が見つかったんで今夜一緒に行きません?」
     怪訝そうな表情を隠しもせずこちらを見てくる。誰にでもにこにこと話すくせに俺には何故か警戒心が強い。それでもこちらの表情を崩さずにいれば、考える素振りを見せて首を縦に振って了承してくれた。
     そして銭湯へ行き、人の少ない穴場スポットということもあり、2人でゆったりとした時間を満喫した。普段の俺は練牙さんの近くをキープする必要があるし、主任は朝班だけでなくHAMAツアーズ全体を見なくてはいけないから、話す機会があまりない。そんな俺らの裸の付き合い。最初こそドギマギしていた主任も、次第にリラックスしてきたようで、上機嫌に俺と話しをしている。完全に無防備な状態だ。
    「俺、主任のこともっと知りたいって思ってるんですよねー」
    「え?俺のこと?知っても何もないけどな...」
    「あれ、もしかして警戒してます?雰囲気的にいけると思ったんだけどな~...はは、冗談ですって。本当にただ、そう。ただ俺たちのことを理解しようと走り回る主任のことを、俺が知りたいって思っただけです」
    「そ.........そう、なんだ」
     ある意味では嘘偽りのない俺の言葉を受けて俯いた主任の耳や首筋が赤くなっているのを見逃さなかった。きっとあれは温泉のせいだけではないだろう。まぁ、主任は純粋な人だから、それ以降からは大分心を開いてくれて、ここまでに至ったという訳である。

     話は戻り、目の前でにこにこと笑みを向けてくる主任は此方へ手招きをしている。どうやら耳を貸してほしいみたいだ。少しだけ腰を曲げ、その口元に耳を寄せる。
    「添くん、花火見るとき一緒に見てくれるかな?」
    「え...はい、もちろん。よろこんで」
     想定外の誘いに一瞬素で驚いてしまう。すぐに平静を装ったつもりでいたが、これだけ近ければ隠せないのも当然なわけで、小さくふふと笑われてしまった。少しだけ眉間にしわを寄せた俺を横目に「それじゃあ、仕事しよっか」と溢し逃げていく後ろ姿が自分の知らぬ生命体の様に思えた。

    **
     誘ってしまった。衝動的と計画的な相反する自分が綺麗に混ざりあって自然と行動に移していた。
     何故か、なんて自分の中ではもう整理がついていて、真っ直ぐに自分を知りたいと言ってくれた添くんに心が揺さぶられたんだ。可不可や雪にぃ、あく太くんや他の区長達も比較的自分にストレートな意見や言葉を言ってくれるけど、添くんにはそのイメージが1番似合わない人だと思っていたから、だからきっと。そう、俺はギャップに弱いんだと思う。温泉に誘ってくれた時も実は大分動揺していた。まさかこの歳になって恋愛が成立し難い人間に好意を向けることになろうとは誰が思ったか。
    「この思いをどうするにも、先ずは俺も添くんのことを知る必要があるよね...ううん、俺のこの気持ちを再認識する必要がある、よね」
     多少、彼を巻き込むことになっても、間違った感情で周りを振り回さない為にと、俺は小さく頷き、覚悟を示すように拳へ力を入れた。

    **
     例の企画準備で走り回り、いよいよ本番も来週と迫った今日は束の間の休息日だ。実は今日も主任に誘われていて、俺は出掛ける支度をしている。ここまでくれば大体察するしかない。
     主任が自分へ恋愛的な好意を抱いているということに。自惚れでない証拠に、他人と俺とで態度が違うのだ。あの人は人当たりの良い雰囲気を出してはいるくせに、あまり積極的に他人を誘うことがない。話の流れでそうなる所は幾度か見掛けたことがある。しかし、事前にきっかけがない状態での誘いは見たことがなかった。
     そんな彼が休みや休憩の時間を使って誘ってくることが多くなった。他の人の前では見ない主任の姿は俺の心を浮かれさせるには十分だ。あんなに遊び人だと言われ、多方面の女から憎まれてる俺が、こんな初恋らしい感情を抱えるだなんてとため息が漏れた。

     リビングへ迎えば、主任が髪の毛を仕切りに手で梳かしながら周囲を見渡している。そんな彼の背後へ近づき声をかける。
    「主任、準備できました?」
    「わっ!...ふふ、ごめん。びっくりしちゃった」
    「えー?そんなに?」
    「うん、今日楽しみにしてたから...ちょっと心ここにあらずだったみたい」
     警戒心はどこへ行ったのか、ここ数日でアピール力が増している主任は確実にこちらへ気があるような発言をする。それでも頬は染まっているし照れている感じには見えない。そうなると、ただ思っていることを言っているだけなのかもしれない。これが狙ってのことでないのであれば、他の人間にも言うのだろうか。自分の中で膨れ上がる感情を払拭するように軽く主任の頭を撫でた。
    「それじゃ行きましょーか」
    「だね!今日はアクセサリー、だよね?」
    「ですね…そういえば、この前いいお店見つけたんで案内しま〜す」
     先陣を切って歩き出した主任の右手を添える程度に触れ、誘導してリードを奪取する。決してどちらからも握らない手にもどかしさを感じるが、自分から動くつもりはなかった。あまりにも似合わない恋の駆け引きが独り歩きして、まるで異世界の御伽噺を見ているみたいだ。未だこの状況を客観的に眺めている自分の冷たい内の部分が頭を出す。ふと主任を見やれば、頬を染めながら綺麗に笑っている。合わせられていない歩幅に懸命に着いてくる姿を見て一気に心が熱を持った。冷たい心など、主任を前にすれば瞬殺だったようで、"恋は盲目"という言葉が脳裏に浮かぶ。


    「ねぇ添くん、このピアスシンプルだけどいい形してるよね!」
    「どれどれ~?……んー、そうですね...俺はこっちのがいいと思いますけど」

     来店したアクセサリーショップでそれぞれ物色した際に主任が持ってきたピアスを覗き見る。そこには輪っかのピアスがあった。今付けている物も輪っかではあるが、これはナット型のものである。正直とても似合うと思ったが、以前七基に薦めた店にも同じものがあり、「これ、主任に合いそう...」と呟いているところを目撃したからだ。これを買って付けた日には「俺が言ってたやつ付けてる...俺と嗜好一緒かも……何かプレゼント、してみたり…」とか言いだしそうだ。駄目だ。駄目に決まってる。他の男がプレゼントした物を付けてる好きな人を見たいなんて誰が思うんだよ。
    「添くんどう?これ、似合うかな?」
    「いいんじゃないですか。似合ってますよ」
    「えへへ、じゃあ買っちゃおっかな~」
     そんな阿保みたいな考えが巡っている俺を差し置いて、主任は自分が薦めたピアスを耳に当てて聞いてくる。俺の回答に満足したのか、軽い足取りでレジへ向かっていった。

    「はい、これ」
    「え...」
    「俺片方しか開いてないから、良かったら貰ってほしいなって...だめかな?」
    「駄目じゃないです。貰っちゃっていいんですか~?やったー」
     主任の耳にはすでに、俺が選んだピアスが着けられていた。相変わらず輪っかのピアスだが、下の先端に小さな宝石が嵌めこまれている。大小セットで売られていた小さい方を貰い、軟骨のピアスをそれとつけ替える。同じく先端に付けられた宝石がキラリと光った。

     帰路に着いてHAMAハウスに戻るまでの道中、主任は定期的にピアスを触っては、ふふと笑い声を零していた。同じ見た目で輪っか。先端には光る宝石。まるで婚約指輪みたいだな。なんて考えが浮かんで、ははと声が漏れた。


    「今日は今まで準備してきた分をしっかり皆に届けられる1日にしよう」
    「おー!」
     社長の締めくくりの一言でついに始まった例の花火・お祭り企画。計画した通り、メインは地域企業や店舗の方々で、俺たちはそのサポートとなる。定期的に休憩を取り、人手が足りなくなった場所にヘルプとして行く。それの繰り返し。そんな中でも例のごとく主任は目まぐるしく動き回っていて、俺たちは負担にならないようにサポートに入る主任のサポートをする何ていうよくわからない構造で作業を行っていた。
     ひと段落着いたタイミングで主任に近寄り声をかける。
    「そろそろ休んだらどーです?頼まれてる以上に動いてるじゃないですか…元々地域イベントなんですし、主任ばっか頑張ってたら意味ないでしょうよ」
    「そう、だよね...うん、休もうかな。ありがとう、添くん」
    「いーえ、そうだ。さっきあっちでデザート貰ったんで一緒に食べません?」
    「え、いいの!?食べる食べる!...わぁ、嬉しいな~」
     とことこと後ろを着いて来る主任を椅子に座らせ、クリームが盛られたデザートを差し出す。嬉々として受け取ったそれを頬いっぱいに詰め込み満面の笑みを零す主任。熱くなる胸の内を誤魔化すように、主任の左耳に輝くそれをそっと撫でた。その行為をされた当の本人は、数度瞬きをした後に頬を朱色に染めてあれだけ頬張っていたデザートをちまちまと食べ始める。以前から感じていたが、最近2人で居るときに周囲の干渉が無くなったように感じる。2人の作り出す世界に入りづらいのだろうなと今更ながらに思った。
    「みんな、花火やるみたい!こっそり裏口から出て見に行こうか」
     またも主任の一声で控室に居たHAMAツアーズのメンバーは外に出た。花火が上がる時間帯は祭り会場の明かりが消え、あたりが真っ暗となる。持っているスマホなどで足元を照らし移動したところでアナウンスが入った。

    『只今より、花火の打ち上げを開始します。カウントダウンを行いますので、皆さまもご一緒にお願いいたします』
    『...5』
    『...4』
    『...3』
    『...2』
    『...1』
    『...0』

     零のタイミングで夜空にボッという音が響く。天に昇る一筋の光。無音の中パッと咲いた大輪の花。照らし出される俺たち。数泊遅れてやってくる心臓を揺らすまでの爆発音。全神経が持っていかれたみたいに感じる。次第にヒートアップするように大量に上がる花火は職人によって計算されているからか、重なることなく咲き続け、夜空をキャンバスにしてたくさんの作品となり散っていく。
     らしくもなく全ての感覚が奪われている状態で、クイッと袖が引かれる感覚に意識が浮上した。隣には主任。それ以外のみんなは勿論空を見上げている。
    「ねぇ添くん、今ならだれも見てないよ?」
     耳元へ寄せられた口から紡がれた言葉を理解するのに随分と時間を要した気がするが、実際では数秒だったかもしれない。花火を見た時とは違う胸の高鳴りを感じる。
    「はは、それでも周りに人たくさんいますけど?」
    「んー、俺たちを見てる人は少ないだろうから、少し隠せば大丈夫だね」
     普段の主任ならこんな人前で誘惑なんて、と考えたところで「あーもしかして」と小さく呟いた。合点がいったのだ。皆が居るリビングで俺を誘うのも、一緒に行ったアクセサリーショップでピアスがお揃いとなるように仕向けたのも、今ここで俺を誘惑しているのも、彼は人前で愛を育むことを好いている。そしてその瞳には焦ったさを宿している。
    「へぇ、主任ってこーゆーのが好きなんだ」
    「こーゆーのって?」
    「人前でこういうことするの、ってこと」
     主任の腰を抱き、隠すことなく唇にバードキスを送る。ぱちくりと目を瞬かせる主任の手を握ると再度花火を見上げた。主任は何も言わなかった。

     花火が終わり、それぞれ片付けに取り掛かる。しっかり仕事をこなく主任の耳は未だ赤みを帯びていた。
     HAMAハウスへ戻ると、そのまま主任の手を引いて部屋へ向かう。入るやいなや、手を強く引き、そのままの勢いで腰を抱く。祭りの時とは違い、今度はフレンチキスを落とす。今までは相手が好む方法を模索してキスをしていたが、今は完全に自分が主任にしたいと思った本能むき出しのキスだ。そんな自分をさらけ出すような欲を受け止め、蕩けきった瞳でこちらを見やる主任にドクドクと全身の血が巡るのを感じる。いつからこんなに本気になっていたのだろうか。なんて今更な疑問を浮かべては、無意味な自問自答を続ける。
     主任を銭湯に誘おうとした時から?懐いてきた主任に絆され始めてから?それとも、会ったその瞬間から?やはりどう足掻いても分からない。分かっていることは、主任を好きになったということだ。そしてそれがいつの間にか当たり前になっていたということも。何度も角度を変えて行われた口付けに遂に腰が砕けた主任を腕に抱く。そのままベッドまで運び、覆い被さった。
    「主任、好きです」
     無意識に言わされた言葉。先に白旗を上げたのは俺だった。額にキスを落とす。未だはふはふと息を整える姿を眺めて愛おしいと思う。どれもこれも知らない感情ばかりだ。それでも、大切にするためにはどうするべきかを俺は知っていた。
    「主任、俺、主任のこと好きになっちゃったみたいなんですよね」
    「うん」
    「好きです、楓さん。俺とお付き合いしてくれませんか?」
    「うん、うん...喜んで。俺も好きだよ、添くん」
     グズグズと腕の中で泣く楓さんは俺の恋人になった。人前であれだけアピールしていた恋人は、きっと自分の獲物を守ろうとする必死の抵抗だったのかもしれない。それをしなければならないのが俺だとも知らずに。あの暗がりに照らされた俺たちを見ていたのはみんな、楓さんを好きな男達だった。賢いようでどこか抜けている楓さんを守れるのは自分だけ、そう。恋人になった自分だけなのだ。本命同士の恋人。離れることも、他人の手に侵されることも許さない。それを妨害できるのも俺だけだ。
    「ずっと大切にします」
     そう誓った俺に楓さんは微笑んで「俺も」と言った。
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    台詞お題「へぇ、主任ってこーゆーのが好きなんだ」で、書かせていただきました!
    台詞だけで大変興奮した…🤤
    途中迷走してる感あるのはお許しください🙇
    照らされた真実 光源が一瞬で現れてそれぞれの姿を明るみにしていく。それでも皆一点を見つめるばかりで晒された正体を目撃するものはほとんど居ない。例えそこに居るはずの者がいなくても、隣に誰が居ても、隣の者が何をしていても、知る者はごく僅か……。


     日本の夏の風物詩といえば、と問われればかなりの確率で声が上がるだろう『花火』。そんな花火をHAMAツアーズが見逃すわけもなく、夏の集客にはこれ!と企画を持ち出してきた社長の一存でイベント内に組み込まれることが決まったのだ。
    「うわ〜!花火かぁ!楽しみだなー...あ、勿論おもてなし優先だけど!俺たちも一緒に楽しめるといいね!」
     花火と言えば祭り、と言う事でHAMAの有名な神社の縁日に合わせて企画している。今回は地域イベントの提案という形となるため、HAMAツアーズが率先して作業するというよりはサポートに回る形となる。当日も作業はあるが、存在が広く周知されている区長たちは完全に裏方で、当日やることはあまりない。主任やコンダクターはもう少し仕事がありそうだが、それでも常時より時間があるみたいだ。
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