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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    5/30新月🌑【偉大な悪魔のその終わり】人の終わりは悪魔の終わり。
    デ4地獄組と赤い月の話を書きました。粛々と為される輪廻の厳かさ。筆舌に尽くし難いあの光景(見てきたかのように言うな)をどうしても一度文字にしておきたかった。それから、偉大な悪魔とその終わりについてを。

    #ディスガイア4
    disgaea4

    偉大な悪魔のその終わり【偉大な悪魔のその終わり】



     死神が鎌を振りかざす。高く掲げられたそれは一切の迷いなく、振り落とされる。腐った牛の皮は鋭利な刃に引き裂かれ、破れ萎んだ風船のようになる。ペンギンさながらのガワだけが地上に取り遺され、裂け目からは魂がゆっくりと起き上がる。魂は朧げな光をたたえ、ゆらり、あの赤い月まで昇っていく。その光景は此処が地獄であることを勘案してなお、ある種の神々しさすら携えている。
     誰も止める者はいない。止められる者はいない。何処からか、赤い月を歌う少女たちの囁くような声だけがこだまし続ける。

     赤い月に導かれ次々に抜け殻になっていくプリニーたち。それをツインテールの少女は頬杖をつき、ぼんやりと見つめている。

    「人間の魂は罪を償って、こうして一度終わりを迎えるのよね」

     厳かな月の夜に彼女の声は妙に響いた。返事をする者はいなかったが代わりに草木が噂話をするよう、生ぬるい風にそよめいた。

    「ヴァルっちたちにもいつか終わりって来るの?」

     ゆっくりと少女の方を振り返るのはヴァルっち……ではなく、その執事である狼男。一度は顔を背けたがそれでも向け続けられる純粋な視線に耐えきれず、諦めるかのよう呆れた声を出した。

    「……悪い物でも拾って食ったか?」
    「失礼ね! 拾い食いなんかしないわよ!」

     フーカはいつもの調子で野球バットを振りかざす。静寂が切り裂かれても儀式が途切れることはない。転生は止まらない。視線の先でまた一匹、プリニーは赤い月へと誘われていく。
     もう! と頬を膨らませると少女は被っていたトレードマークの帽子をぐしゃと鷲掴み外す。そのまま背をそらし夜空を仰いだ。瞳には大きな赤い月が映り込んでいる。

    「ふと思ったのよ。悪魔もいつかは死んじゃうのかな? って」
    「当たり前のことを一々聞くな。悪魔にも寿命はある」
    「別魔界の魔王が饅頭を喉に詰まらせて死んだとかいう話もあったな」
    「あ、そんなしょうもない理由で死ぬんだ」

     餅を詰まらせる人間を彷彿とさせるエピソードはほんの少し、悪魔を身近なものにした。かたく腕組みをして考え込むフーカは眉間に皺を寄せる。

    「なんかさ、ヴァルっちもフェンリっちもいつかは死んじゃうのかなって思ったら変な気持ちになったのよ。全然実感が湧かないっていうか……」

     フーカの膝の上から帽子を奪い取った狼男は彼女の頭にめり込ませるようプリニー帽を被せ、言葉を遮った。

    「小娘……人間風情が悪魔の心配などしている場合か? まずは貴様らの脆弱な命の心配をしたらどうだ」
    「痛い痛い! アタシだって分かってるわよ! おかしなこと言ってるなって!」

     フェンリッヒとフーカがぎゃあぎゃあと言い合うのを横目に吸血鬼は白手袋の手で己の両耳を塞ぐ。そのまま喋り出せば、ヴァルバトーゼの声が彼自身の頭に直接響いた。

    「云千年を生きる悪魔であろうと永遠などない。どんな魂にもいずれ終焉は訪れるものだ。その時が来れば当然、俺も終わりを受け入れるのだろうさ」
    「お言葉ですが、閣下。ノーライフキング、不死の王の名を冠するあなた様に終わりなど……」
    「いいや、お前は良く知っているはずだ」
    「……ヴァル様」

     二人の間に訪れる沈黙の意味の全てを汲み取ることは出来なかったが、それでも伝わるものはあった。血を断ち、魔力を喪えば不死の王と称されたヴァルバトーゼにすら終焉は訪れるのだろう。そして現に終焉の一歩手前をフェンリッヒは目の当たりにしたのだろう。そんな過去がフーカにも察して取れた。

    「だが、到底受け入れられない終わりもある」
    「……お饅頭を食べて喉に詰まらせるとか?」
    「うむ。それは格好がつかん、受け入れられんな」

     フーカの隣にやって来てすとんと腰をおろし吸血鬼は愉しげに笑う。そして、表情を変えて少女に放つ。

    「俺が危惧しているのは寿命などという当然の『終わり』のことではない。命賭して戦った果ての『終わり』でもない」
    「あれ、受け入れられないことって負けることじゃないんだ」
    「敗北を恐れてどうする。正々堂々と勝負して散ったのならそれもまた誉れだ」

    「ヴァルバトーゼ閣下ー! 本当にお世話になりましたーッス!」

     話の途中、張り裂けそうな声でこちらへと感謝を叫ぶプリニーがいる。ヴァルバトーゼは右手を上げ、小さく振った。もう戻ってくるなよ、フーカにしか届かない声量でそう呟いて手を下ろす。

    「悪魔にとって本当の『終わり』は人間が畏れを忘れたその時にこそ訪れるのだろう。意外にもそれは……悪魔の寿命よりも早くやってくるかもしれん」
    「どういうこと?」
    「人間の進化。それは事実、めざましいものだ。だが、全ては解明できる、全ては意のままに操ることができる……そんな思い込み、万能感に飲まれれば、人は畏れを忘れていく。同時に敬いさえも失くすだろう。いずれ悪魔も天使も忘れ去られてしまう」

     フェンリッヒは険しい顔で、それでも二人のそばを離れない。首を傾げるフーカの反応を気にせず、吸血鬼は続けた。

    「畏れエネルギーも敬いエネルギーも生成されることがなくなれば俺たちは魔力の根源を絶たれ、立ち行かなくなる。忘れ去られるどころか、その存在はいずれ消滅する。悪魔や天使、或いは神ですら……それを信じる人間がいてようやく成り立つのかもしれんな」
    「天使や神はともかく、少なくとも悪魔は人間如きに振り回される存在ではありません」

     苦言を呈するフェンリッヒに吸血鬼はクックと声を出して笑う。現にこうして振り回されておるではないか、そう指摘すれば狼男は恨めしそうな視線を元人間の少女に向けた。

    「まあ、そんなこともあるかもしれぬ、と言うもしもの話だ。俺がいる時代には有り得んさ。人間が幾百回の生まれ変わりの中で畏れを忘れようとも……幾千回、畏れを思い出させてやるまでのこと。出来の悪い魂には再教育だ」

     立ち上がり、白手袋を嵌め直す彼の横顔は実に晴れやかなものだった。月の光をものともしない、閃光を放つかのような眩さ。その光に見惚れていると、間の抜けた声が吸血鬼の口から発される。

    「して、小娘。何故そのようなことを聞いた?」
    「……ホント、なんでかしらね」

     なんとなく、聞いてみたくなったの。そう呟いて少女は宙に手を伸ばす。見上げた先で形を取らない魂は弾け消え、夜の空に溶けて行く。
     人間の魂の輪廻のため、教育を施す悪魔たち。この世界を断罪者ネモによる破滅から救った英雄たち。……偉大な悪魔のその終わりが、少女にはやはり信じられなかった。地獄に教育係がいなければ人の転生にはもっともっと時間がかかるのだろう。人が罪を償うのには。

     彼等がいなければ、アタシは今この時を受け入れることが出来ていただろうか。

     らしくもない感傷に浸りかけた時、苛立ちを帯びた声が耳をつんざき、我に帰る。

    「うるさいぞ、お前たち!」

     一人前に死神の仕事をこなすようになったエミーゼルがいよいよ我慢の限界とばかり声を上げた。人間を戒め、その魂に教育を施し、赤い月まで運ぶのは悪魔の役割だ。だのに、悪魔の魂はその人間にこそ翻弄されるというのか。
     畏れを忘れた時、人類は誰しもネモのようになってしまうのかもしれない。その時偉大な悪魔がいないとなれば──人は、今度こそ人自身を滅ぼすだろう。

    「恐ろしくなったか?」

     悪魔に人の心など読めるはずもない。けれど訊ねるヴァルバトーゼの柔らかい声色はまるで少女の心を見透かしたようだった。慣れ親しんだ悪魔からの問いはちっとも恐ろしくなどなかった。
     けれど、悪魔たちの終わり。その可能性が途端に現実味を帯びて頭にまとわりつき、フーカはそっと首を縦に振った。

    「……ほんの少しだけ」
    「良い心掛けじゃないか」
    「クク、これならしばらくは悪魔も終わるまい。安心して罪を犯すが良い、人間」

     一同の笑い声にもう一度、今度は呆れた声でエミーゼルが文句を垂れる。ようやく口をつぐんだ悪魔たち。その輪郭を赤い月が等しく照らしている。
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    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897

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    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

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    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321

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    DOODLE【10/4】ヴァルバトーゼ閣下🦇お誕生日おめでとうございます!仲間たちが見たのはルージュの魔法か、それとも。
    104【104】



     人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
     一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
     悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。

     それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
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