邪魔しないで ソファに座り、テーブルの上に広げたノートに向かいペンを走らせていた。大学生。宿題は尽きない。
突然、「なにやってるんだ。」と現れたKKが、ソファと暁人の間に無理矢理入り込んできた。腰に腕を回され、後ろから抱きしめられる。
「KK?」
背中の温もりに向けて首を巡らせるが、その表情を見ることは叶わない。「気にすんな」というKKの短い返事に、暁人はまたテーブルに視線を向けた。邪魔をしなければよいか、と。周りから見たらおかしな状況も、暁人にとってもはや日常であった。
そうして暫く暁人はKKの存在を気にせずノートに集中していると、すり、と首筋にKKの鼻先が擦り付けられた。KKが呼吸をする度に吐息がうなじをくすぐり、くすぐったさに暁人は身を捩る。
「っ、けぇけ、くすぐったい。」
勉強できない、と言い掛けて暁人は言葉を飲み込んだ。飲み込まざるを得なかった。べろり。
「ひっ!?」
KKの生暖かい舌が、暁人のうなじに押し付けられる。下から上へと柔らかな舌が小麦色の肌を滑っていく。首を前に倒し逃げようとするが、KKも上半身を倒してそれを追いかける。しかもKKの腕がガッチリと暁人の腰を押さえつけているため、身体を離すことも叶わず。暁人は腰に回された手を何度も叩いたが、KKには抵抗とすら取られなかったようで。構わず首筋を舐められ、吸われ、歯を立てられ、耐えようと暁人のペンを握る手に力が入る。満足したKKは顔を上げると「勉強が全然進んでねぇようだが?」などとのたまった。
「っ、こんなことされて、勉強なんか出来るわけないだろ……!」
絞り出された声には色が混じり、潤んだ瞳にはもうノートは映っておらず、触ってもいないそこは布を押し上げ膨れ上がった熱を主張している。今度はKKの手がそこをゆっくりと布の上からなぞり始める。力の入らなくなった手からペンがぽろりと零れ落ちた。
「もうこんなにして、一体なんの勉強をしてたんだか。なぁ?」
面白そうに問いかける声が、耳に直接吹き込まれる。心臓の音がうるさいくらい頭の中で響き渡る。背を逸らしながら首だけ振り返り、KKに口付けを求めれば、すぐに厚い舌が口内へともぐりこんできた。身体を横にし、KKの背中に腕を回しながら、暁人は瞼を閉じた。ペンを握るより、この温もりに包まれたい。早く、苦しいくらいの、焼けるような熱に貫かれたい。思考を埋めるのは数式ではなく、生々しい欲望。うっとりとキスを楽しむ暁人を見ながら、KKはほくそ笑むのだった。