麻里に支えられながらも遅れて3人の後を追う暁人は先程KKが立ち止まり何かを聞いてるような素振りを気にしていた
「お兄ちゃん?どうしたの?」
麻里が暁人の異変に気付き声を掛ける
暁人は麻里に視線を向けると意を決したように口を開いた
「KKは何かを思い出そうとしてる。それはもしかしたら僕達の過去かもしれない」
「嬉しくないの?思い出すかもしれないんだよ?」
確かにKKが思い出せば嬉しいだろうが何か、そう何かが思い出そうとするKKに対して暁人の心を止めるのだ。それは何なのか暁人にはまだわからないままだが…
「嬉しいはずなのに嬉しくないんだ。何故か…思いだして欲しくない気がして…本来は覚えてはいけない前世の記憶だからなのかな…」
麻里はその言葉にどう答えようか考えてる内に先に穢れの元へ行った3人に追いついてしまい答えられなくなった。
御神水が湧く場所は暁人が御神水を飲んでから穢れに満ち満ちていたが今はその面影もなく水はキラキラと輝いているのを見て暁人と麻里は穢れが祓われたのだと察した。
「穢れは祓ったが体調はどうだ?」
KKが2人の存在に気づき声を掛けてきたのを暁人は嬉しく思いつつ自らを冒す穢れの存在が薄まったのを感じた。ただ、なにか絡んでる気がしてならない。それを知るには『目』を開けるしか方法はない。
「確かに穢れは祓われたようです。ただ、気になることが…」
正直にそう告げるとKKと絵梨佳は首を傾げた。そして暁人は徐に右目を隠す狐の面を取りその面を麻里に預ける。
初めて面を取りその隠された右目を見たKKと絵梨佳は目を見開く。それもその筈暁人の右目は血を思わせるような赤さを伴った目をしていたからだ。
「その目は…っ」
「静かに…今から気になる事を調べます。」
KKがその目に関して突っ込むも暁人は一瞬KKに目を向けまた正面を見た。そうして見えたものは澱んだ穢れのようなものが暁人に向かい流れているのだ。その先を思い出すと共に暁人は走り出した。
「お兄ちゃん?!」
驚く麻里に声を掛ける事もできず暁人は目に見える澱みのその先を目指した。
その尋常ならぬ行動にKK達も暁人を追いかける
やっと暁人に追いつき息を切らせながら顔を上げると暁人は様々な狐の像や仏像が祀られている場所の真ん中に立っていた
「そんな…こんなになるまで…」
暁人は悲しそうに眉根を下げながら呟いた。暁人の右目に映すものは沢山の狐の像が倒れ仏像の頭が落ちそれはもう悲惨な状態を見せていた。それは穢れから暁人や麻里を守る為に犠牲になった姿で抑えきれなかった無念が穢れとなり暁人に救いを求めていたのだ。
暁人はクルリと振り向きKKに近寄ると口を開いた
「KK、僕に力を貸して欲しい」
それは有無を言わさぬほど真剣な表情だった。
「乗りかかった船だ、最後まで付き合ってやるよ。で、何すりゃぁいいんだ?」
「エーテルを分けて欲しい。」
協力を得てホッとしこの状況を打破できる方法を思いついたが今力が半分以上失われた暁人では何もできない為エーテルを分けてもらえないか伝えた。
「……分かった。」
「右手を出して」
暁人の指示に従い右手を差し出すと暁人は両手で右手を包み額を宛て目を閉じる
「そのままエーテルを送って」
KKからエーテルを分けてもらった瞬間暁人は光の粒子に包まれそれが収まると尻尾は6本まで増えたがやはり一番回復しやすい方法じゃない為か9本も満たさなかったのを暁人は仕方ないかと諦めることにした。
「ありがとう。麻里、後はよろしくね」
「…うん。気を付けてね」
暁人が何をしようとしてるのか察しがついたのか麻里は不安そうに暁人を見つめ頷く。
それを確認すると暁人は再び祀られてる場所の真ん中に向かいその場で蹲ると両手を重ね目を閉じた。
すると空間が歪み暁人の右目が映した世界とKK達が今いる世界が繋がり暁人が見た世界がそのまま映し出された。
「気付いてあげれなくてごめんなさい…僕達を守ってくれて、ありがとう」
その言葉を発した瞬間暁人から眩い光が発せられ地蔵達を包むその眩さにKK達は目を閉じ光が止むまで待つ。光が収まり始めたのと同時にKKと絵梨佳は目を開く。目の前では暁人が仰向けに倒れ麻里は倒れる暁人の上半身を起こさせ抱き締めていた。
地蔵達の浄化に伴い元通りにするために使った力は尋常ではなく暁人の尻尾は一本になっていた。
「この力…九尾の狐ができるもんじゃねぇ…天狐だろ」
麻里はキュッと唇を噛んだ後KKを見て「今はそんな話より兄を本殿に運びます!手伝ってください」と伝えた。