かき氷のシロップって実は味は全部一緒なんですってね しゃくしゃくしゃくしゃく。遠く空に咲く光の花を眺めながら、暁人はスプーンストローで氷の山を崩していた。
「お暁人様は、色気より食い気か。」
「失礼な。花火だって見てるよ。」
そう言いながら暁人は小さなスプーンで氷を掬い、一口、また一口と口へ運んでいく。よくまあ続けて食べられるものだな、と感心していたのも束の間。ぎゅ、と眉が寄り、額に手を当てる姿にKKは小さく吹き出した。
「かき氷食って頭痛ェときは、デコ冷やすと良いらしいぞ。」
「んん~~~。」
KKのアドバイスに従い、暁人は汗をかいたプラスチックの器を額に当てた。少しは頭痛が引いたのか、和らいだ暁人の表情にKKはくつくつと笑いながら肩を揺らす。
「……なんだよ。」
「百面相してんなァって思っただけだよ。」
「悪かったね。」
「誰も悪いなんて言ってねェだろ。」
紫煙を吐き出すKKと、拗ねた口調で口先を尖らせる暁人の顔を、花火の光が明るく照らし上げた。
「みてみて。」
べ、と暁人はKKへ舌を見せつける。変わってる?と無邪気に首を傾げる暁人をKKは見下ろした。タバコを携帯灰皿に押し付け、どれどれと身を屈める。
「ンんっ!?」
暁人の伸ばした舌を、KKはぱくりと口内へ招き入れる。ざり、と舌の表面をすり合わせ、溢れてきた唾液を飲み込み、舌先を吸ってやれば、しかめめっ面で頭痛と戦っていたとは思えないほど蕩けたものに変わっていく。
「……赤ェな。」
「……ちょっと。」
唇が離れた頃には、暁人の顔は茹でダコのように真っ赤に染まっていた。暁人の眉がまた強く寄せられたが、その理由が先程までのものとは異なっていることをKKはよく知っていた。
「おら、溶けるぞ。」
くつくつと笑いながら、KKは暁人の手元を顎でしゃくる。スプーンを咥え、もごもごと不満を示す暁人を隣に、KKはまた一本タバコに火をつけたのだった。