その絵は、あまりに美しくて、美しいが故に脆く見えた。
まるで弱さを掻き消すみたいだった。
階段の踊り場には絵を掛けていることが多い。
それは卒業生の作品だったり、現在在籍している生徒の作品だったり様々で、定期的に違う絵に掛け替えられたりもする。
そこを通る一瞬、ちらりとその絵たちを見やるのが、私は大好きだった。
だからびっくりしたのだ。
最近掛け替えられたのであろう、その絵はキャンバスの大きさを感じさせないほどに壮大で美しくて、圧倒的な強さを感じた。
「何してるの?早く行かなきゃ遅れるよ」
友人の声に、現実に引き戻され、そして自分が絵のすぐ側まで来ていることに気がついた。
そうだ、早く教室移動しないと、さっき授業が少し長引いたのもあって時間がないんだ。
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