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    risa

    @nowa02mea03

    ジャンルごった煮。今更新があるとすれば東リベ🎍受けです。
    Pixivで投稿していた作品を移し替えました。
    R-18作品はリスト限定公開としています。Twitterでご連絡(リプかDM)頂ければ、18歳以上(高校生不可)であることがプロフ等で確認できましたらリスインします。リストは1つしかありませんので共通となります。

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    risa

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    5/3スパコミ SUPER TOKYO罹破維武2022にて無配したものです。
    マイ武スペースだったんですが、思いついちゃったのでドラ武です。誤字脱字チェック気力なくてしてません。すまそん。あと、無配のページ数じゃないって若干怒られた…
    書いてるうちに長くなっちゃったのよぅ。

    #ドラ武
    drive-driver

    心に残るアレソレをはじめに
    こちらはドラケン君の誕生日小説です。
    マイ武スペースだけど、ドラ君誕生日だから許して。
    前にTwitterで呟いたネタです。三人称での書き方を思い出すために頑張ったつもりですが、一人称とごちゃまぜになっただけで、とっても読みにくいと思います…。精進。
    誰も死んでないみんな仲良し幸せ時空。





    心に残るアレソレを






     なぁ~んか最近の武道、落ち着きがねぇんだよな。

     そんなことを考える龍宮寺は、雑誌を一緒に見るために、ゆるく組んだあぐらの中に抱き込んだ武道の、しっかりとセットされたちょっとダサいリーゼントを眺めやる。
     今日は「ドラケンくんの家行ってもいいですか?」と、可愛くおねだりしてきた武道にうなずく形で、プレイルームを改造した龍宮寺の自室で部屋デート中だ。付き合いはじめても片手で数えるほどしか呼んだことのない自身の部屋でもリラックスして寛ぐ様には、少しの呆れと、他人にもそうなのかという心配半分。しかし、龍宮寺といる事によってここまでリラックスしているのだと考えれば喜びもある。
     最初にここへ連れてきたときは、客と間違えられたりで、アタフタしていたが、そういう店が家ってことには嫌悪感も抱かずにいてくれたのはありがたく、大事にしたいからこそ、この家(店)では手を出してはいない。が、最近は武道の挙動がおかしく、そういう行為もちょっとご無沙汰気味で…、安心しきって体を預け、無防備にも首筋をさらしている武道に、その心情も崩れそうではあるな、と噛みつきたい衝動を理性で抑えつけた。
     先程思ったように、ここ最近の武道は、デートに出かけても上の空、ちょっと小物やら服やら見に行くとやたらとのぞき込んできては、「それ好きなんスか?」とすぐに聞いてくる。今も何か考え込んでいるのか、体育座りした膝上の雑誌は広告ページから一向に進まない。
     なぁにをそんなに考え込んでんだか。いい加減白状させるか? と見られてないことをいいことにしかめっ面で後頭部を睨みつけていれば、「あの! ドラケン君聞いてもいいですか?」といきなりグリンと振り返り、大きな目を不安そうに揺らめかせる。

    「? っ、おぅ。なんだよ」
    「おれ、ずっと悩んでたんっスけど、もうこれ以上一人で悩んでもしょーがないと言いますか…やっぱり、その…、ドラケン君のことでもあるので、直接聞いた方がいいかなって……おもいまして…」

     いきなりの振り返りに表情が追い付かなくて、怒ったような返し方をしてしまい、慌てて取り繕うが、武道は気づいてないのか、それどころじゃないのか、勢い込んで聞いてきた割りにはもそもそと話し始めた。
     どうやらここ最近の挙動不審の原因でもあるようだが、「なんだ、聞き方がめっちゃ不穏じゃねーか?」と元に戻したはずの表情もまた険しくなる。しかし、話している途中からうつむき始めた武道に伝わることもなかった。
     振り替えるだけで、体は横を向いたままだったらから、うつむき始めれば自然と顔も横を向く。ちらちらと伺うように目線はよこすが、いまだ、詳細を話さずに龍宮寺のカーディガンをいじましく掴んだ。

    「んで、なに聞きたいんだ?」
    「……その、いま! 欲しい物ってありますか…?」
    「おまえ」
    「え?」

     随分と食い気味に返答を返した龍宮寺は、武道からの不思議そうな顔と疑問に対しては答えずに、これはしょうがないだろう、と考える。掴んだ袖をきゅうっと不安そうに握りしめて、首をかしげながらうるんだ瞳で見つめられれば、最近のご無沙汰加減からついつい本音が飛び出したわけだ。
     今日は随分と忍耐を試されている気がする、と遠い目をしつつ咳払いで場を誤魔化してから問いかける。

    「最近上の空だったりしたんは、俺の欲しいもん探してたから?」

     先程の返事が気になりつつも、コクンと気まずげに頷いた武道は、意を決したようにちゃんと身体を龍宮寺の正面に向けて慣れない正座をして話しはじめた。それを見て龍宮寺も、あぐらなのは変わらないが少し背筋を伸ばして聞く体制を整える。

    「来月、誕生日じゃないっスか。プレゼント何がいいのか分かんなくなっちゃって…」

     そう言われて切れ長の目を驚きで丸くしはしたが、やっと合点がいった。と相好を崩した。
     挙動不審だったのは龍宮寺の好きそうな物や、欲しそうにするのをリサーチしていたためだったらしい。
     まだひと月以上も先の誕生日に何をあげるか悩んで煮詰まったってのが、タケミっちらしいといえばらしい姿だな。と思えば、「せっかくなら喜んでほしいですし…」なんて口をとがらせながらバツが悪そうに言う。

    「んむ! ちょ、くるし…、どうしたんスか、ドラケン君?」

     愛おしさが溢れてきて、これ以上は無理だと思わず腕を取って引き寄せ、ぎゅーと抱きしめれば急な抱擁に驚いた武道がトントンと、胸を叩いてくる。

    「あ~、や、どうもしねぇ」

     この濁し方は特に意味もなかったか、話す気がないかのどっちかだ。と、これまでの経験上で学習している武道は仕方がないと、話の軌道修正に入った。

    「それで、欲しいものありますか?」
    「あ、あ~、んーー、………とくには、……ねぇかな」

     龍宮寺が、あまり物に執着がないのは、この部屋を見れば誰しもが気づくだろう。狭いプレイルームに収納場所がないのも一因かもしれないが、あまりにも物が少なく、コルクボードに貼られたたくさんの写真や筋トレグッズと、バイク雑誌が少しあるだけの部屋。シンプルでかっこいいとも思うが、武道の家のように、部屋に入り切らなくなった思い出の品を、庭の片隅に置いてでも取っておくような執念も感じられない。環境の違いと言われればそれまでかもしれないが、なんとも物悲しい。と考えてしまうのは武道のエゴだろう。
     プレゼントに悩んでいるときも、いっそ消え物のお菓子でもと考えなかったわけではない。でも、ふと、この部屋を思い出して、何か形に残るものを贈りたい。爪痕というと聞こえは悪いが、それを見れば武道の存在を思い出してくれるような物を、と思ってしまえば、それしか考えられなくなり、でも、要らないものを贈るのも龍宮寺のことだから、ぞんざいに扱われることもないとは思うが、忘れ去られるような物では主旨と違ってくる。
     だからこそ、恥を忍んで龍宮寺へ直接聞きに来たのだ。普段受け身ではあるが、武道だって男だ。
     一人で贈り物を選ぶことも出来ないのかと、スマートに誕生日を祝えないのかと情けなくも思うが、本人が欲しいものを贈るのも大事だと思う。それが話し始めるときについモゴモゴとしてしまった理由だ。あと、何が来てもいいようになるべく外出を避けたくてお家デートにもした。物によっては、龍宮寺の誕生日まで苦しいお財布事情になるだろう。龍宮寺が一番リラックスできるのが自室だろうというのは後付だが、ここでなら何か欲しいものが出るかもしれない。と意気込んだのに!
     多分、ん〜、あ~言いながら引き伸ばして考えてくれたと思うけど、最終的に無いだなんて!!

    「ないんですかぁ……」
     
     落胆してしょぼくれた顔が、犬にでも見えたのだろう、せっかくビッと決めてきた髪をワシャワシャと崩されて、余計に哀愁を漂わせていた。

     あまりの落胆具合に、可哀想になった龍宮寺は、もう少し考えてみようと、未だワシャワシャと撫でる手を止めずに考え込む。
     好きなやつからの物なら何だって嬉しいとも思うが、武道の普段のセンスを考えれば、聞いてくれたのは良かったのかもしれない…、といささか失礼なことも考える。
     ただ本当に、これといって欲しい物がないのだ。あるとすれば整髪料やら髪ゴムやらの消耗品の予備がねぇな、とかそんな日常品の細々したものだ。服なんかはこの間新調したばかりだし、この部屋にはあまり置くスペースもないから…、や、くれるってんなら置けるようにもするが、さして欲しいわけでもねぇしな。
     じゃあ、他の方面で欲しいもの、と視界に入ったろくに読まれもせずに放置されたバイク雑誌を手に取りパラパラとめくる。
     
     あ~、ゼファーの整備品くらいか? でも、整備品も消耗品だからなぁ、長く使うってんならパーツ系か…、ん~、あえて言うならマフラーか? ってそもそもその辺は高いし、タケミっちには無理だろ。

    「マフラーっスか?」
    「あん? 声出てたか…、いや、あえて言うならだからな? タケミっちには荷が重いと思うぞ」
    「え、そんなに?」

     いつの間にか考えてたことが声に出てたようで、問が返ってきた。どこまで聞いてたのかわからないが、疑問の顔で見つめられる。
     そりゃそうか、いくらなんでも誕生日のプレゼントでマフラーはないよなぁ。
     まぁ、無理をしてほしいわけでもない。この話はしまいにしねぇとな。と改めて武道に目を向ける。

    「ふ、ひでぇ頭。それに、あーいうのはいいやつのほうが長持ちするしな」
    「いいやつ…って、髪がボサボサになったのはドラケン君のせいじゃないッスか! せっかくカッコよく決めてきたのに」
    「ははっ、タケミっちって髪下ろしてるとかぁいいよな」
    「むぅ、それ褒めてないですからね?」

     とんがった唇に、ごめんの意味を込めてキスを仕掛けると、目を見開いて固まった後にふにゃりと溶けて受け入れる。可愛い反応に気を良くした龍宮寺は、チロチロと舌で唇を舐めて口内へも受け入れるように促せば、薄く口を開くので、すかさず舌を突っ込んだ。

    「ん、ふぁ……ぁ、んん、…ッ」

     クチュクチュと音を立てて舌を絡めれば、甘い吐息がこぼれ出る。上顎の裏を攻めれば身体をビクビクと震わせて、トロンと瞳を潤ませるから、これ以上は駄目だ。と名残惜しげに唇を離した。

    「……ぁ」
    「ん、……わり」

     “ここではシない”のが、龍宮寺の決めたこと。しかし、恋人のこんな姿を見せられれば10代の熱はすぐに浮き出てくる。武道も、しないの? というような顔で見てくるものだから、自身で決めたことながら少し揺らぎそうだ。
     武道の口端から垂れた唾液を親指で拭ってやり、これはいい返し方ではないのだろうと思いながらも口を開く。

    「誕生日な、祝ってくれるだけでもありがてぇんだ。プレゼントはお前がこれ贈りたいっての見つけたらで良いんじゃねぇかな。俺は今んとこ欲しいのが見つからねぇし」
    「でもマフラー…」
    「いんだよ。気にすんな。な?」
    「……」

     あぁ、あまり納得はいってないみたいだな。と思いつつも、武道から次の言葉が出ないので、納得はいかなくとも、受け入れたということだろう。まぁ、武道はいくらするのかも分かってなさそうだし、調べてみれば今の自分じゃ無理だって分かってくれるだろう。この話はこれで蹴りがついたと思いベッドから降りる。

    「…ドラケン君?」
    「ちっとトイレ行ってくる。ついでに飲み物も買ってくっからよ。まっててな」

     暗に、お互い昂ぶった熱を治めるために時間をとると伝えて、部屋を出ていった。
     パタンと龍宮寺の大きな背中が扉に吸い込まれて消えていくのを見送って、武道は中でくすぶる熱を外へ出すように大きく息をついた。

    「ドラケン君…」

     ちょっぴり寂しそうに名前を呼んで、扉を見つめ続ける。こうなったら帰ってこない。片手で数えるほどしか来ていないが、ここでああいう雰囲気になったあとは必ずこれだ。部屋ではやりたくないんだなぁっと確信してしょぼくれてしまった。
     ともかく、別のことを考えようと切り替える。切り替えても、先程やり取りしたプレゼントの件は解決していないので、頭を抱えそうになった。

    「どーしよぅ……」

     ドラケン君は、マフラーが欲しいんだよね? でも、俺には荷が重いって、マフラーで?
     疑問だらけで頭が混乱しそうだが、幸い当分部屋主は帰ってこないので存分に悩もうと腕を組んで考え込む。

    「これから暑くなるし時期はずれるけど、新しいのが欲しかったのかなぁ、思わず出たって感じだったもんね。んー、いいやつ…、高いってことか…? あ、手編みのやつとかよく言われるよな、恋人からのプレゼント。え、不器用だから無理だろうってこと? えぇ〜、それはそうなんかもだけど、なんか悔しい…挑戦してもないのに…荷が重いって思われてんの?」

     ブツブツと考えが口からまろびでて、傍から見れば怪しい人みたいになってるが、ここは龍宮寺の部屋だし、隣からはあんあん♡と盛り上がってる声しか聞こえないので問題ない。
     問題はないのだが、武道の考えすぎなだけでもあるし、何なら実は認識が噛み合ってもいない問題で勝手に悔しく思い始めた武道は、コレはちゃんと挑戦して格好良いマフラーを送ってやろうと、謎の闘志を燃やし始めた。

    「よし! 明日ヒナに相談して買いに行こう」

     一大決心のように握りこぶしを握ったところで、龍宮寺が戻ってきた。

    「たでーま。ファンタで良かったか?」
    「あ、はい。ありがとうございます」

     冷えたペットボトルを渡されて、受け取る。気まずい空気が流れるが、龍宮寺はベッドに投げ出されたままの雑誌を手にとって。

    「続き見るか?」
    「あ、はい…」

     ペットボトルを渡された時と同じ返しをしてしまい、武道的には更に気まずくなった。しかし龍宮寺はとくに気にもせずに、当初、一緒に読んでいたときの体制を取ると、自身の足をポンと小さく叩いて促される。ちろっと龍宮寺の顔を伺うも通常の顔つきだ。あまり、気にしすぎてもせっかくのデートもまともに出来なくなると、いそいそと定位置に収まった。その後は静かに雑誌を二人で眺めて、ふと、龍宮寺が最近のマイキーの話題を出せば、いつの間にか兄弟の多い佐野家の日常の話で盛り上がり、気まずかった空気は飛散して、その日のデートを楽しく過ごした。


    * * *


    「ヒナぁ〜、ムリだよ……棒がまた動かなくなっちゃった…」

     謎の闘争心から贈るものはマフラーへ勝手に変換されて、勢い込んで橘家へ相談に行けば、日向からは、「ごめんねタケミチくん。ヒナも編み物は自信ないかな…」と、困り顔で謝られたが、ちょうどそこへ橘母が飲み物を置きに来て、私が教えてあげるわ。とありがたいお言葉をもらい、まさかの橘家女性陣を巻き込んで、編み物を教わり始めた。いくつになっても女性というのはこういう話で盛り上がれるのか、その日のうちに、材料を見繕いましょう! と即行動。編み棒や、ドラケン君の、いつもの服装に合いそうな少し濃いピンクのなるべく肌触りの良さそうな毛糸を選んだ。
     日向も橘母も、いつの間にか捕まえた店員さんも、横でこれは洗濯機でも洗えるとか、こっちは初心者には向かないだとか、かしましく話していたが、武道は専門用語っぽいのが出始めたあたりから、聞くのを諦めておまかせすることにした。分からないものは、素直に分かる人に任せるのも大事なことだ。考えることについては、橘弟の直人や稀咲に任したほ方がうまく回るってのと同じ。と、諦め顔で、色はピンクでお願いします…、とだけ伝えて丸投げした。それを聞いた橘母と店員さんは、「ピンク!? ピンクが似合う男なんてイケメンじゃない!」「そうなの! とってもカッコいいんだよ! ね、タケミチ君!!」と大盛りあがりを見せた。
     そうして、橘家へ戻ってからも奮闘は続く。編み始めについて教えてもらったが、上手く出来ず、これでは夜遅くなってしまうと橘母が、編み始めだけやってあげるから、その後は頑張って、と2列目まで編めた縫い棒を渡されて、しっくはっくしながら2週間で何とか三分の一ほど編めたところで、またもギチギチになってしまい編み棒が動かなくなった。
     
    「タケミチ君、がんばって! もっかいほどいて編みなおそう? 大丈夫、まだ2週間あるもん。できるよ!」

     泣きべそをかく武道に、日向は優しく励ます。
     やっと編めてきたと思えば、今度はなんでか棒を差し込めないほど目、つったっけな? それがつまって、動かなくなった。やっぱり不器用なんかなぁ…。と情けなくなる。

    「毛糸を引っ張っちゃうから目が詰まっちゃうんだって。引っ張らないように気をつけてみて」

     編み目が均一なところまでほどいて、目落ちをしないように、慎重に棒を動かす。そっちにばかり気を取られるから、糸が引っ張られてるのに気づかなかったのだろうと推測して、更に慎重に編む。
     真剣に編み始めた武道を見つめて、日向は微笑んだ。
     よかった。編むのは大変そうだけど、悩んでたことタケミチ君が悲しくなるようなことじゃなくて。駆け込んできた2週間前、ううん、春休み明けから暗く沈んだ表情で学校に来てたから、何があったんだろうって心配してたんだ。
     まさか恋人のプレゼントに悩んでいたとは。と本当に一安心したのだ。あまり見つめても、邪魔になるだろうと、一緒に教わり始めたかぎ編みで、コースターの続きを編みはじめた。まだちょっと不格好だが、綺麗にできたら武道と龍宮寺に渡してあげよう、貰ってくれるといいな。と、密かに渡す日を楽しみにするのだった。

     時は経って、本日5月10日。龍宮寺の誕生日だ。この2週間は本当に大変だった。編み物へ集中するために他がおろそかになり、ついには母親へもバレ。まぁ、恋人へ渡すために頑張っているとわかれば、今度は母親からのスパルタが行われた。息子への教えとあって、本当にスパルタだった。目落としすれば定規で叩かれ、目が詰まれば、力を抜けと同じく定規で叩かれた。これ、未来なら虐待で訴えれるな…。しかしこのスパルタのおかげで間に合ったようなもの。やはり母親へは頭が上がらない。
     武道もジグソーパズルが趣味なだけあり、集中してしまえば、編み続けることも苦ではなかった。すこーし歪ではあるが、初めてにしては上々の出来だと言えよう。

     連休明けのど平日。サボっても良かったのだが、学校は行くものだと龍宮寺から諭され、日中はきちんと学校へ行った。日向からは頑張って!と応援され帰路につく。たくさん協力してもらったので、本当にありがたかった。今度お菓子を持ってお礼に行こう。
     一度家に帰って身綺麗にしてから、大事なプレゼントを紙袋に入れて、龍宮寺との待ち合わせ場所へ。今日はゼファーでタンデムしたいんだって。ケーキも買っていこうかと思ってたんだけど、ドラケン君がしたいことをしようと、それは言い出さなかった。

    「タケミっち!」
    「ドラケン君! ごめんなさい。お待たせしたっすスか?」
    「いんや、俺もさっき着いたとこだ」

     待ち合わせとして指定した店前のガードレールへ腰掛けて待っていれば、通り向こうからふわふわした金髪が見えたから、つい大声で呼びかけた。そうすれば、弾かれたように飛んでやってくる。まるで主人に呼び寄せられた犬のよう…いやいや、うん。ま、どっちでも可愛いからいいか。とどうでもいいことを考えて、ヘルメットを武道へ手渡した。

    「今日はどこ行くんスか?」
    「ん〜とくには決めてねーんだよな、荷物入れるぞ」
    「あ、これは…」

    珍しく手提げを持って立ってる武道へ、あまり入るスペースはないが紙袋だしと、収納スペースへ入れてやろうと手を伸ばす。しかし、何だか歯切れが悪く、何だ? と問えば、ここへきて手作りのものを渡すのに緊張している武道は、目線をあっちへウロウロ、そっちへウロウロと動かしたあと、少し頬を染めて口を開いた。

    「あの! 誕生日おめでとうございます!! これ、欲しいっていってたやつ…」
    「あ?」

     胸へと押し付けられた紙袋を反射的に受け取り、最初の誕生日という言葉に、あぁ、今日だったか。とすっかり忘れていた。しかし、その後に続いた、欲しいと言ったやつとは? 

    「あんがと。俺なんか欲しいとかって言ったっけか?」
    「ええ? 忘れちゃったの!? もぅ…マフラー欲しいって言ってたじゃないスか」

     はて、マフラー? と思いながら紙袋をガサガサと言わせながら中身を取り出すと、濃いめのピンク一色の首に巻くマフラーが出てきた。
     これから暑くなるのにマフラー?? と余計に不思議に思う。

    「俺、そんなこと言ったか?」
    「言いました! だから俺頑張ったんすよ!」
    「お、おぅ。そうか、あんが、と、な…? あ、」

     思い出した。確かにひと月以上前に、武道から誕生日に何が欲しいのか聞かれたのだ。その時に、バイクのマフラーを別のに変えてぇなと考えて、つい口からマフラーが欲しいとこぼれ出たのだ。
     そう、あの時の会話に違和感はなかったと思う。なのに二人の認識は一切交わらなかったのだ。マフラー(排気口)とマフラー(首に巻く物)。それに気づいてしまえば、龍宮寺はまるで風船が割れるように笑いだしてしまった。

    「な、何もそんな笑うことないじゃん! そりゃはじめて編んだから不格好だけど…」
    「や、ちげーんだよ…ブフッ、オレの言ったマフラーってバイクの方で…ふッ、…ッ、くくッ」
    「え、バイクにもマフラーっているんすか!?」
    「ブハッ!! んでそうなんだよ! あははっ!」

     武道からの頓珍漢な追撃に、更に笑いが止まらなくなって、腹を抱え込んだ。
     いまだ笑い続ける龍宮寺に、武道はどうしてしまったのかと、少し心配になる。そんなにおかしいことをしただろうか。と不安になって眉をたれ下げて、考えてみるも分からない。
     武道からしたら分からないことだらけなのだろうが、龍宮寺にはすべての符号が一致してしまったがために、武道の誤解とその後の頓珍漢な“バイクにもマフラー”で息の根を止められそうになった。
     あぶねぇ。やっぱタケミっちっておもしれぇよな。

    「ええぇ? もぅ、何がそんなにおかしいの?」
    「っ、ふぅ。俺が言ってたの、これ。この部分な」

     どうにか笑いを抑えて、傍らに路駐した龍宮寺の愛機の後側、排気ガスを排出する部分を指差す。

    「…排気口?」
    「そ、専門用語でマフラーっての」

     そう伝えれば、目をまん丸に見開いて、パカリと口を開けて驚いてみせるから、また、声を出して笑ってしまった龍宮寺だった。

     目尻に涙が浮かぶほど笑い倒したあとに、愛しげな目を隠しもせずに、

    「でも、あんがとな。冬になったら大事につけるわ。で、取り敢えず今日の予定変更していいか?」
    「へ?」
    「お前とすっげぇ、イチャイチャしたい。だめか?」
    「ッ! そ、それって…」

     ボンッと音でも出るんじゃないかと瞬間的に顔を赤くした武道は、龍宮寺の言わんとしている事に思いつく。いわば恋人同士のふれあいをしたいということ。確かにここ数ヶ月マフラーを編むために作業時間を費やすあまり、龍宮寺との接触も自ずと減っていた。そう思ってしまえば、武道だって触れてほしいし、触れたい。プレゼントの勘違いはあったが、喜んでももらえている。ならせっかくの誕生日だしと考え、でも、恥ずかしいと上目遣いに龍宮寺を見やる。嬉しそうに、大事にマフラーの入った紙袋を小さな収納スベースヘしまっているのを見てしまえば、小さく、本当に小さく、やっと龍宮寺へ届くほどの声量で、今日泊まるって言ってきました。とこぼした。
     龍宮寺からすれば、数ヶ月おあずけされた状態で。ぶっちゃければ、今日のツーリングはオマケで、イチャイチャするのが目的だった。少し走らせた後に、夜景のキレイなとこで口説いてあわよくば…と、計画していたが、すっ飛ばすことにした。だって、認識は間違っていたが、わざわざ手編みのマフラーを編んでみせたのだ。そんな可愛いことをされて、しかも、泊まりの許可も取っている。そんなお膳立てまでされて我慢出来るほどできた男ではない。むしろそんなことができるやつは、ただの不能だろう。誕生日というなら、独占したって何も問題ない。此処から先は恋人同士の時間だ。
     それにしたって、今年の誕生日は忘れることはないだろう。きっとこのマフラーもどんなにボロボロになろうが捨てられない。冬が来るまで見えるところに飾っとこう。と考えながら、バイクへまだがりエンジンをかけ、いまだ頬を赤くしている武道の手を取って誘導する。しっかりと腹に腕が回ったのを確認して、夜の顔を見せ始めた街を掛けていった。
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    risa

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    マイ武スペースだったんですが、思いついちゃったのでドラ武です。誤字脱字チェック気力なくてしてません。すまそん。あと、無配のページ数じゃないって若干怒られた…
    書いてるうちに長くなっちゃったのよぅ。
    心に残るアレソレをはじめに
    こちらはドラケン君の誕生日小説です。
    マイ武スペースだけど、ドラ君誕生日だから許して。
    前にTwitterで呟いたネタです。三人称での書き方を思い出すために頑張ったつもりですが、一人称とごちゃまぜになっただけで、とっても読みにくいと思います…。精進。
    誰も死んでないみんな仲良し幸せ時空。





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     なぁ~んか最近の武道、落ち着きがねぇんだよな。

     そんなことを考える龍宮寺は、雑誌を一緒に見るために、ゆるく組んだあぐらの中に抱き込んだ武道の、しっかりとセットされたちょっとダサいリーゼントを眺めやる。
     今日は「ドラケンくんの家行ってもいいですか?」と、可愛くおねだりしてきた武道にうなずく形で、プレイルームを改造した龍宮寺の自室で部屋デート中だ。付き合いはじめても片手で数えるほどしか呼んだことのない自身の部屋でもリラックスして寛ぐ様には、少しの呆れと、他人にもそうなのかという心配半分。しかし、龍宮寺といる事によってここまでリラックスしているのだと考えれば喜びもある。
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    risa

    DONE2022年2月20日のTOKYO罹破維武3で無配した小話の全文です。
    バレンタインの話。マイ武です。
    これのアンサー(ホワイトデー)の話は、R18なので、限定公開してます。
    タイトル「チョコ≒」
    甘くとかして※誰も死んでない、ヒナちゃんとは円満お別れの謎時空。
     色々捏造。ちょっとだけドラエマ。


    *   *   *

    「ねぇ、今日なんの日か知ってる?」

     そう声をかけた先、見上げたタケミっちは不思議そうな顔をしてた。




     今日は朝からずっとソワソワしっぱなしで、エマには呆れられて、真一郎には苦笑された。一番ムカついたのは下の兄、イザナに鼻で笑われたことだ。もちろん喧嘩になって、エマにお玉投げられた。丁度イザナとの真ん中らへんに飛んできたから二人して避けたら、止めに入った真一郎にスコーンッ! って当たってんの。マジどんくせー。

     なんでそんなにソワソワしてるかって、んなの決まってんじゃん。今日はバレンタイン!
     学校なんて行ったら面倒なことになんの分かってっし、前はタケミっちがいなかったから、「まぁ、いいか。真一郎が悔しがるだけだし」って思ってた。けどさ、せっかく恋人ができたなら一緒にいたいし、用意もしてくれてるだろうから、他の人からもらうのもちょっとな…、って。だから学校は自主きゅーこう。
    4023

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