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    suck629it

    @suck629it

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    suck629it

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    1ヶ月以上寝かせてしまった。導入部分。

    花吐き道初めて花を吐いたのは望月の夜。独り月見酒をしていた。りりぃんと鈴虫が柔らかに鳴く中、紅い芒が揺れる。南の空にきんいろ。北の空には青。眩い。ぐらりと揺れた。
    まだ舐める程度、酔うはずもない量で急に込み上げたものを抑えきれず、その場に吐き戻す。ばらばらと闇色の花弁が床に散った。勿論、花なぞ食べた記憶もない。身体には呪いを受けた痕跡もなく、ただ茫然とそれを見下ろす。
    ひとつ、摘み上げて検分する。黒い花弁は魔力で出来ていた。己と同じ魔力を包むそれは、体内の魔力が花弁の貌をとって文字通り吐き出されたようだった。理由はそれ以上分からない。

    その夜から度々、花を吐き出すようになった。幸いにも夜独りで過ごす時間にだけこの症状を呈するため、誰にも気づかれることはなかったが、その頻度も、量も、夜を重ねるごとに増えてゆく。その度に体力だけでなく魔力を取り上げられるのは毒に侵されたような心地がする。
    「ッ、ぇ、」
    はらはらとまた二つ三つ。四つ五つ。一晩中嘔気が止まらず、床一面を真っ黒な花弁に染め上げて夜明けを迎えた。白み始めた空、元より睡眠時間は短い方だが魔力をこれ程に吐き出していれば底をつく。明星の輝きが此方を見ていた。
    「ふッぅ、ぐ」
    動ける間に調べもしたがこのような奇病の記述は見当たらなかった。呪いでもなく、病でもないとなれば一体何が起きている。このまま花に埋もれて死んでいくのだろうか。不意に過った考えが現実味を帯びるほどに呼吸は荒く、朝焼けは静かで、東風は冷たかった。
    ぐるりと視界が回転する。暗くなる視界が闇に染まり切る直前、真っ黒な花弁の先にあの青く白く光る星が見えた気がした。
    ああ、手を伸ばしても届かない。
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    nicola731

    DOODLEhttps://twitter.com/nicola731/status/1374684085319168000?s=21
    晴道ハッピーゆるゆる結婚生活だよ。ホントだよ。
    ふと、書き付けを捲る道満の指が止まる。自分が書き留めたはずの術式がまるで目新しく見えた。自分の屋敷から運ばせた書物の内に紛れていた一片の書き付けを、道満は思い出すことができない。なぜ自分が書き留め、なぜこのように術を構築したのか。道満は考え込んでしまう。
     晴明の屋敷の奥、その御帳に囲われている道満は外へ出ることもできないため、自邸から自身の蔵書を運ばせた。一度死んでしまい、晴明の手によって人形の体に魂を移し替えられてしまった道満にはできることが少なかった。与えられる衣服が小袖のみなので人前に出ることもできない。仕方なく畳の上に座って自分を囲む書を読むか、不本意ながら夜伽の真似をするか、まことに不本意ながら子の世話をするぐらいしかない。
    「ンン、ンンンンン? なぜこのように……いや、効果的ではあるが、こちらではむしろ、ンンン、検証済であるか…………」
     紙片を前に悩む道満の背に勢いの付いた何かがぶつかる。道満が振り返ると七歳ぐらいに見える、夜の海に幾つもの白波が立っているような、白髪の混じる黒髪の子供がいた。
    「おや吾子、腹でも空いたか?」
    「かかちゃまー縺ェ縺ォ繧偵@縺ヲ繧九」
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