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    sayutaba18

    @sayutaba18
    ライハを愛してる女。

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    sayutaba18

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    ハッピーバレンタインないずレオ

    #いずレオ
    izuLeo

    「セナ! もうすぐバレンタインデーだな~! 今年は何作ってくれるの?」
     貰えることが、さも当然とばかりに数日前にレオが言っていた。満面の笑みで。太陽のようは微笑みで。瀬名に貰えないなんて、万が一にも考えていない能天気さに呆れつつ、材料を買い揃え、何を作ろうかとレシピ本と睨めっこしていた自分は、やっぱりレオのことが好きなのだろうか。
     それはもちろん、好きか嫌いかで言うと好きだ。何を作ってあげたとしても喜ぶだろうその笑顔が見たい。いやいや、あのアホには付き合いきれないんだから。あくまで真にあげるチョコのついでに、余ったから仕方なくあげるんだから。そうだ、これは決して恋なんてものじゃない。
     雑念を振り払うべく、お菓子作りに取りかかる。始めにタルト生地を焼いて、今回はチョコレートクリームと、生クリームにあいつの好きなコーヒーを混ぜ、コーヒークリームを作った。タルトが冷めたらクリームを全体にのせ、いちごを飾りつけ、最後に粉砂糖を振りかければ完成だ。うん。我ながら良い出来栄えである。
    「……ゆうくんじゃなくて、あいつが好きそうなものを作っちゃった……」
     思えば、真はどんなチョコレートが好きなのかは知らない。おそらく、何を作っても苦笑いして受け取ってはくれるのだろうけれど。これはこれで良いのだ。いつも頑張っている真のために、自分が何かしたいだけだから。
     じゃあ、レオは? ねだられたからあげるのだろうか。そんなに自分は甘くないはずだ。もし……チョコをあげなかったとしたら、彼は困ったように、きっと笑う。その顔が容易に想像出来てしまって、それでも文句を言わずに納得するのだろうと思うと胸が苦しくなった。レオのことを悲しませたくない。この気持ちは、なんだろう。
     ため息をついて、ケーキを6つに切り分け、金箔を上に散りばめて、包装をして箱へと入れる。そのまま冷蔵庫に冷やし入れ、明日渡す前にラッピングすれば完璧だ。
     そう、明日はバレンタインデーなのである。



     真には朝一で寮へと押し掛け、手作りのケーキを手渡しした。やはり、苦笑いしながらも『ありがとう、泉さん』と言ってくれたので、自分の気持ちも綻んだ。朝からいい気分だ。ファンより誰より、一番乗りで渡せたことに愉悦感を感じて、自分の部屋へと戻った。
    「あ、セナ~! どこ行ってたんだよ! おはよ~!」
     一歩部屋へと入り、目の前にいるオレンジ色の姿に現実を受け入れられなくて、一旦廊下へ出た。ふぅ、と息を長く吐き出して、もう一度扉を開けると、そこにはやっぱりボサボサのオレンジ頭の男がいた。おまけに我が物顔で瀬名のベッドに腰かけている。
    「どうした、セナ?」
    「どうした、は俺のセリフなんだけどぉ? ここ、あんたの部屋じゃないよねぇ? なんでいるわけぇ?」
    「クロが入れてくれたから!」
    「悪ぃな瀬名、お前を訪ねて月永が来たもんだからよぉ。すぐ戻るんじゃねぇかって話をしたら、待ってるって聞かねぇから」
    「……ごめんねぇ。うちのが迷惑かけてて」
    「いいってことよ」
     部屋にはたまたま紅郎しかいなかったのだが、自分が真の部屋に行っている間にレオが来たのだろう。
    「なぁ! 今どこ行ってきたの? 『ゆうくん』のところ?」
     そして勘が鋭い。動物の勘というやつだろうか。じーっと探るような視線が痛い。
    「だったらなんなの? あんたに関係ないでしょ~」
    「まぁな。セナがどこで誰となにをしてようとおれには関係ないしな」
     ……なにそれ。なにその言い方。癇にさわるし……イライラする。
    「で? 俺になんの用だったわけ?」
    「ン~……もういいや。大した用事じゃなかったし。帰る」
     ぴょん。とベッドから降りたレオは、瀬名を見ることもせず、スタスタと扉を開けて、出ていった。ガチャンと、扉の閉まる無機質な音が部屋へ響き渡る。
    「はぁ~~~!? なんなのあいつ!?」
    「よくわからねぇけどよ。月永……お前に渡すものがあるって言ってたぜ」
    「じゃあ渡せばいいでしょ! 意味がわからない!」
     こっちだってレオに渡すものがあった。朝は寝てるかも知れないから、レオが起きていそうな時間に、部屋にでも持っていってあげようかと思っていたのに。
    「ちょっと出てくる」
    「……月永のところか?」
    「あいつのところなんて行くわけないでしょ!」
     そう言って自分も部屋を出た。レオの部屋ではない。目指すは、このイライラを八つ当たりできるあいつのところだ。



    「リッツ……ごめんなぁ。せっかく一緒に作ってくれたのに、セナに渡せなかった」
    「んん~? まだ朝だよね。まだ渡すチャンスなんていくらでもあるじゃん。どうしたの、月ぴ~?」
     朝に弱い凛月は、未だに布団の中に潜っている。眠い目をこすり、半分くらいしか赤い目を開けずにレオに応えた。レオはベッドの隅に腰かけて、凛月にポツポツと話しかけた。
    「さっきセナに会いに行ったんだけどさ。セナは『ゆうくん』にチョコを渡しに行ってたんだ。おれじゃなくてさ」
    「『ゆうくん』にチョコあげてそうだねぇ、セッちゃん」
    「そのあと……なんかうまくいかなくて、喧嘩みたいになっちゃったから、出てきた。だからもう渡せない」
    「あらら……喧嘩になっちゃったんだ……でもさ、月ぴ~の気持ちはその程度じゃないでしょ。渡してきなよ。もしかしたらセッちゃんだって月ぴ~にも渡そうとしてたかもしれないじゃん」
    「でもさ、あいつの本命はおれじゃないわけじゃん……義理ってわかってるのに、もらうほどおれも馬鹿じゃない。だいたいどんな顔してもらえばいいんだ? うわ~ん、リッツ~~」
    「よしよし、月ぴ~。とりあえず布団にでも入る?」
    「入る……」
     いそいそと、凛月の布団に潜る。暖かい。凛月がぎゅっと抱き締めてくれた。とんだバレンタインデーだ。もういい、瀬名のバカ。アホ。おたんこなす。どうせ真のことが好きなんだろ。バーカバーカ。



    「ちょっとぉ! くまくんいる!?」
    「ん~……今日は来客が多いなぁ。どうぞ~」
     自分のことを『くまくん』だなんて呼ぶ人は一人しかいないので、半分寝ながら応える。ガチャっと乱暴に扉を開けて、その人物はやってきた。
    「まだ寝てたのぉ……? それよりさぁ。あのアホがさぁ」
    「アホ……月ぴ~?」
    「そう!」
     いきなりマシンガンのように話し始めた瀬名の話を布団に潜ったまま聞きつつ、未だ隣に寝転んでいたレオが身動ぎするので、ぐっと腕で身体を引いて押さえつける。
    「それでさ、何を渡したかったのか知らなかったけどさぁ。出て行ったわけよ。俺も渡すものがあったのにさ、話も聞かずにだよ? ほんっと嫌になっちゃう」
    「セナ、おれに何かくれる気だったのか……?」
    「れ、れおくん!? なんでそんなところにいるわけぇ!?」
     布団からちらりと、レオが顔を出すので、布団をめくって凛月も起き上がった。
    「俺、別に二人の相談所じゃないんだけど~。ほら、二人ともさっさと渡すもの渡して仲直りしなよ~」
    「くまくん、あんたねぇ」
    「なぁ、セナ。おれだっておまえに渡すものがあったんだ……けど、おれは本命になっちゃうし、お前にフラれたくないから渡したくない」
    「意味がわからないけど……あんたが欲しいって言ったから俺は作ってあげたし、俺があんたのこと本命じゃないって言った覚えはないし……ていうかれおくんがお菓子作ったの?」
    「うん……リッツに手伝ってもらって……」
    「ちょうだい」
    「えっ」
    「あんた、頑張って俺のために作ってくれたんでしょ~? 食べるって言ってるの」
    「い、今……?」
    「今じゃなかったらいつくれるわけぇ?」
    「ええと……うん。どうぞ」
    「ありがとう。あんたのもちゃんと用意してるから、あとで持っていくね」
    「あ、ありがとう」
     泣きそうだったレオの顔が、ぱっと明るくなった。瀬名はその場でレオから受け取ったものを開けて、少し歪な形をしたトリュフを口に放り込んで「まぁ、味は悪くないよねぇ。さすがくまくん」と言っていた。
    「そのあとのメロドラマは他所でやってくれる~? あ、俺が出ていけばいいのか。俺もま~くんにチョコ渡しに行かなくっちゃいけないし。あとはお若い二人に任せよう。じゃあね~」
     これ以上聞いていたら、二人の初々しいやり取りにこっちがやきもきしてきてしまう。やれやれ。ということでお邪魔虫はとっとと退散したのであった。



    「でもさ……お前の本命は『ゆうくん』なんだろ……?」
    「ゆうくんは、いつも頑張ってるから、普段からの労いも含めて渡しに行ったけど、俺は、ちゃんとあんたにだって渡すつもりだったしぃ?」
    「それって……」
    「勘違いしないでよね。っていうか、あんたがそういう意味で俺のこと好きだっていうのも初めて知ったから、まだ気持ちの整理が出来なくて……返事はホワイトデーまで待ってくれる?」
    「わ、わかった……その、急にごめんな」
    「いいよ。あんたに振り回されるのは慣れっこだったし」
     レオには申し訳ないが、猶予を一ヶ月も設けてしまった。そういう意味でレオのことを見ていなかったわけではないけれど、これを機会にちゃんと考えてみようと思ったのだ。このレオへの思いが、面倒を見てあげなくてはいけない仕方ないやつ……ではなく、恋だったのだとしたら──。

     ……その時は、あんたが逃げ出したくなるくらい、ちゃんと全部愛してあげるから、もう少しだけ待ってて、ね? れおくん。
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    sayutaba18

    DONEクリスマスのいずレオ。今日はクリスマス。骨つきで購入しておいた鶏肉に朝から包丁で切り込みを入れ、皮にフォークを何ヵ所も突き立てて下処理を終えた後、調味液に漬け込んでから仕事へと向かった。
     帰宅後は、ブロッコリーとミニトマトで簡易的なクリスマスツリーに見えるように盛り付けをし、ハムを星形にくりぬいて散りばめた。キャベツ、人参、たまねぎをくたくたになるまで煮たたせたコンソメスープも作ったので、これで今日の野菜摂取量とカロリーも大丈夫だろう。ここでシチュー系をリクエストされていたらカロリーオーバーになるところだった。主食は米かパンか悩んで、折角だからと帰りにパン屋に寄って中が軟らかそうなフランスパンを買った。もちろん既に食べやすい大きさに切り分けてある。オーブンを充分に温め、あとは仕込んでおいた鶏肉を焼けば、ローストチキンの完成だ。
     ……時刻はもうすぐ19時だ。これだけの量を食べるのならば、20時までには食べ終えておきたい。クリスマスだからといって自分を甘やかすほど能天気でもないのだ。ケーキは昨日ユニットでクリスマスパーティーをした時に、わざわざ凛月が焼いてきてくれたものを食べたのだから、本音を言えば今日は軽 2978