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    sayutaba18

    @sayutaba18
    ライハを愛してる女。

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    sayutaba18

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    いずレオ短文

    #いずレオ
    izuLeo

    両片思い「あ、あのさ、リッツ」
    「ん~? どうしたの~?」
     『セナハウス』なんて珍妙な名がついたこの学院のスタジオで、いつも通りユニットの練習が終わったあとのことだ。こたつでうだうだしていると、それまで鼻歌交じりに一緒に暖まって作曲をしていた『王さま』の手がピタリと止まって、なんだか神妙な顔で話しかけてきた。
    「おれ、セナのこと……す、好きなんだけど……」
    「? うん。知ってるよ~」
    「!? 知ってたのか? おれ言ったっけ?」
    「いや、聞いてはいないけど……『王さま』セッちゃんのこと大好きじゃん」
    「えっ……うん、そう……なんだけど……」
     ぽっ、と『王さま』の頬が赤くなる。可愛いねぇ。なんて言ったらセッちゃんにぶっ飛ばされそうだけど。
    「それで~? セッちゃんに告白するの?」
     今更すぎる告白に、もっと頬を染めてやろうかと思って言葉を続けてみた。
    「しないよ。だってセナ、おれのこと好きじゃないだろうし」
    「はぃ……?」
     ところが、予想とは違う答えが返ってきてその場にひっくり返りそうになった。セッちゃんが、『王さま』を、好きじゃ、ない。頭の中でもう一度『王さま』のセリフをかみ砕いてみたけれど、万が一にもあり得ないことだと思った。どうしてそうなったんだろう? セッちゃん『王さま』のこと大好きじゃん。ずっと待ってたじゃん。昔から今まで好きじゃなかったことないでしょ、絶対。
    「でも、好きになっちゃったんだよ……リッツ、どうしたらいいと思う?」
     どうもしなくていいんじゃない? そのままの『王さま』がセッちゃんは大好きだよ。と言ってあげたい。セッちゃんを今すぐここに連れてきて、ハッピーエンドでこの話を終りにしてあげたいところだ。
    「あ~……う~~ん……これは重症……俺に成す術が思いつかないなんて……参謀として失格だよね。困ったなぁ」
     一生懸命考えるフリをする。セッちゃんはもう帰っちゃったし、ここでセッちゃんは『王さま』のこと大好きだから大丈夫だよと伝えたって、きっと伝わらないか否定されてしまうだろう。実際にセッちゃんが今ここにいたところで、はぁ? こいつのことなんて好きじゃないに決まってるでしょ? とか天邪鬼なこと言いそう。余計に話がややこしくなるからそれは却下したい。
    「つき合いたい! とか、そういうんじゃないんだけど、ただ傍にいるだけでいいっていうか……好き……なんだ」
    「わかる~。俺もま~くんにはそういう気持ちだもん」
    「! やっぱり、リッツはわかってくれると思ったんだ~!」
     前から『王さま』こんなに恋する乙女みたいなこと言う人だったっけ……? 恋が人を変えるってことなのかな。顔を真っ赤にして、俺の手を取る『王さま』は、舞台上でみる『王さま』の姿と全然違って、本当に可愛らしかった。
    「話してくれてありがと~『王さま』。俺も王さまの恋は応援するからね~」
    「ありがとうリッツ! それだけでおれは充分だ~!」
     にぱっと笑った『王さま』は、話をしたらちょっとスッキリしたようで、五線譜に向かってまたペンを走らせ鼻歌を歌いだした。『王さま』の気持ちを聞いてしまった以上、何かしてあげられることはないかなと思考を巡らせながら、『王さま』の鼻歌をBGMに、少しだけ眠ることにした。


    「ねぇ、くまくん。この後ちょっといい?」
    「珍しいね、セッちゃんが俺に話だなんて。どうしたの?」
     あくる日のレッスン後、今度はセッちゃんに話しかけられた。俺は別にいいけど、後ろで『王さま』がすごい顔でこっち見てて怖いんだけど。
    「うん。ちょっと確認しておきたいことがあってさ」
    「なんだなんだ、おれも混ぜろよな~!」
     すかさずにこやかな顔をして『王さま』が割って入ってきた。しかもセッちゃんに抱きついてる。そうだよね。好きな人が他の人と何を話してるかって気になるよね~。
    「あんたに話し掛けてないってば。くまくんと今度トリスタのライブ行くからその打合せ。あんたは行かないでしょ~?」
    「な~んだ。また『ゆうくん』のことか~。ちょっとはおれのことも構ってくれよな~?」
    「いつも構ってあげてるでしょ~。今日のお昼俺のお弁当を食べたのは誰だっけ~?」
    「わはは。おれだ☆」
     手作りのセッちゃんのお弁当を『王さま』が食べているという事実をサラリと知らされる。お互い好きじゃん。嫌いな相手に自分のお弁当渡さないでしょ普通。
    「それじゃ仕方ないな。おれもあいつらのライブ行ってみたいから、今度は誘えよな~!」
    「はいはい。わかったってば」
     しっしっと『王さま』を手で追いやるセッちゃん。去っていく『王さま』の顔は明るいままだったけれど、一瞬だけ鋭い眼光でセッちゃんを見やったのを俺は見逃さなかった。

    「で、トリスタの次のライブだっけ」
    「そうそう。やっぱり応援に行くんだったら、それなりの備えってものがあるよねぇ」
    「そうだねぇ」
    「それと……」
    「ん~?」
    「『王さま』のことなんだけどさぁ」
    「『王さま』がどうかしたの? 最近レッスンにもちゃんと来てるじゃん」
    「それは当たり前のことでしょ。なんていうか……『王さま』ってみんなに愛してるだとか好きだとか言いまくってるところがあるじゃん」
    「うん」
    「俺には言わないなぁって最近気づいちゃったんだよねぇ。……やっぱり『王さま』は俺のことまだ許せなくて、本当は嫌いだったりすると思う?」
    「えぇ……?」
     何を言い出すやら。『王さま』はセッちゃんのこと見てわかりすぎるくらい好きじゃん。嫌われてると思うってどんな思考回路したらそうなるのかさっぱりわからない。
    「絶対ないでしょ」
    「ほんとに、そう思う? ……俺は『王さま』のこと……まぁ、嫌いじゃないんだけど」
     それはもう好きってことだよね。セッちゃんの嫌いは好きだってことはKnightsのみんなが知ってるよ。
    「むしろ傍にいないと落ち着かないっていうか、なにかやらかしてるんじゃないかって心配になるっていうか」
    「うん」
    「もういなくならないとは思ってるし、放っておけばいいとわかってるのに、気になっちゃうんだよねぇ」
     はぁ、とため息をつくセッちゃん。セッちゃんの正直な気持ちを聞く機会って中々ない。だから、珍しくて返答に困ってしまった。それって好きってことだよね? って聞いたら否定しそうだし。今すぐ『王さま』をここに呼んで今の話を聞かせてあげたい。
    「俺も、ま~くんにはいつも傍にいて欲しいって思ってるよ~」
    「あんたの話は聞いてないってば。……まぁ、そういう関係って中々ないものだから、大事にしてやりなよ」
    「セッちゃんも『王さま』のこと、大事にしてあげてね~」
    「はぁ? 俺はいつでもれおく……『王さま』のこと大事にしてるでしょ~!?」
    「そうだったねぇ。うんうん」
     この前『王さま』の恋の話を聞いたばかりだ。セッちゃんも『王さま』のことは好きなんだろうけど、まだ自覚がないってところかなぁ。あぁ、まどろっこしい。『王さま』が好きだって言えばセッちゃんも自覚が出るだろうし、そういう意味では『王さま』のことを応援したい。
    「ねぇ、ちょっと! くまくん聞いてる?」
    「んん? ごめん、聞いてなかった」
    「まったくもう! だからトリスタのライブグッズのことだけど」
     この二人を二人だけにしておくと、話がややこしくなりがちだし……。かといって恋の話に首を突っ込み過ぎるのも良くないし……なんて考えていたら、横で喋っているセッちゃんの話が全く耳に入っていなかった。
    「そうだねぇ。俺に言えることは、誰かに取られる前に何とかしたほうがいいと思うってことかな~?」
    「はぁ? なにそれ?」
     アドバイスにもならないアドバイス。それをどう受け取るかはセッちゃん次第だ。ちょっと! と声を荒立てるセッちゃんを他所に、よっこらせと立ち上がる。
     やれやれ、出来れば二人には収まるところに落ち着いて欲しいものだし、俺も二人を見てハラハラしたくない。ほんのちょっとだけ手を貸してあげれば、うまくいくはずだ。『王さま』は傍にいるだけでいいだなんて言っているけれど、大事ならちゃんと気持ちを伝えないと。
     結局俺も首を突っ込んじゃうけど、二人のことは好きだからね。応援してるよ。
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    sayutaba18

    DONEクリスマスのいずレオ。今日はクリスマス。骨つきで購入しておいた鶏肉に朝から包丁で切り込みを入れ、皮にフォークを何ヵ所も突き立てて下処理を終えた後、調味液に漬け込んでから仕事へと向かった。
     帰宅後は、ブロッコリーとミニトマトで簡易的なクリスマスツリーに見えるように盛り付けをし、ハムを星形にくりぬいて散りばめた。キャベツ、人参、たまねぎをくたくたになるまで煮たたせたコンソメスープも作ったので、これで今日の野菜摂取量とカロリーも大丈夫だろう。ここでシチュー系をリクエストされていたらカロリーオーバーになるところだった。主食は米かパンか悩んで、折角だからと帰りにパン屋に寄って中が軟らかそうなフランスパンを買った。もちろん既に食べやすい大きさに切り分けてある。オーブンを充分に温め、あとは仕込んでおいた鶏肉を焼けば、ローストチキンの完成だ。
     ……時刻はもうすぐ19時だ。これだけの量を食べるのならば、20時までには食べ終えておきたい。クリスマスだからといって自分を甘やかすほど能天気でもないのだ。ケーキは昨日ユニットでクリスマスパーティーをした時に、わざわざ凛月が焼いてきてくれたものを食べたのだから、本音を言えば今日は軽 2978