甘やかして「れおくん!? だから変な棒とか石とか拾って来ないでって言ってるでしょ!? ああ、もう、ほんと嫌!」
「そんなこと言うなよな~! セナの鬼! 小言言うのがセナ! って感じだけど、たまにはおれを甘やかしてくれよ~!」
「はぁ? いつも甘やかしてあげてるでしょ? 文句あるの?」
「やだやだ! もっと優しくして!」
「赤ちゃんか!」
ああ言えばこう言う。ほんと駄々っ子の赤ちゃんみたい。尚も、やだやだと言い続け、手足をジタバタさせている。とても十九歳の男の子には見えない。
「わかった。今日だけ、甘やかしてあげる。小言も言わない。あんたのこと全肯定してあげる。それでいいでしょ」
「へ?」
「じゃあこの棒と石は洗ってバルコニーに干しておくからね。後で部屋に片付けておきなよ?」
「うん」
「お昼は何が食べたいの?」
「えっと……手作りのオムライス」
「はい。オムライスね」
きょとんとしているれおくんを無視して、キッチンへと向かう。ちなみに昨日もオムライスを食べた。いつもなら、二日連続なんてありえないと言ってしまうところだけど、なんとか耐えた。
「れおくん。できたからおいで」
「は~い。セナの手作りオムライスはいつも最高だな! 卵がふわふわで霊感が湧いてくる!」
「ゆっくり噛んで食べなよねぇ」
「うん。いただきます!」
食べながら、次の曲構成が浮かんでいるのか、ウキウキとれおくんは鼻歌を奏でている。
「食べ終わったら作曲?」
「ん? そうだな。今の曲を書きとめておかないと!」
「俺にして欲しいことある?」
「えっ、セナにして欲しいこと……? そこにいてくれればそれだけで満足してるぞ?」
「ふぅん。わかった」
お皿を片付けていると、場所を移動して床に突っ伏しながら作曲をしているれおくんが見えた。
「わっ! えっ、なに!?」
「甘やかしてるところ。傍にいて欲しいって言ったでしょ」
「いや、それはそうだけど……」
「不満?」
「不満は……ないです……」
後ろかられおくんをぎゅっと抱きしめて、肩口から顔を覗かせて楽譜を眺める。
「れおくん熱ある? 顔が熱いけど」
「お、おまえのせいだろ!?」
「なんで?」
「はぁ!?」
一際大きな声で、れおくんが言った。れおくんをただ甘やかしているだけなのに、れおくんは俺に人差し指を突きつけて文句を言ってくる。理不尽だよねぇ?
「今日のセナ、キスして! って言ったらしてきそうだからやっぱり甘やかさなくていい! ~~っ!?」
「して欲しいんだったら、するけどぉ?」
「してから言うなよな!?」
「ふふ、して欲しかったらいつでも言いなよねぇ?」
ふに、と再度触れるだけのキスをした。
「もう~! 甘やかすの終わり! 明日はセナのことをおれが甘やかしてあげるからな!」
「楽しみにしてるねぇ?」
れおくんは甘やかしてと言うわりに、お兄ちゃんだから甘やかされてるのに慣れてないらしい。きっと甘やかすほうが得意なのだろう。でも、残念。俺も甘やかすほうが好きだから、これからもたくさん甘やかしてあげるねぇ。